この国の金融行政は、かく誤れり! 先送り国家の行く末を問う 木村剛・糸瀬茂『「日本」が破綻するとき』の読書録

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木村剛・糸瀬茂『「日本」が破綻するとき』

単行本:262ページ
著者:木村剛糸瀬茂
出版社:実業之日本社
発売日:2000年(平成12年)10月18日初版第1刷発行

目次

はじめに

【第1章】 国を売り渡した契約書

1.そごう破綻の意味
国有化期間中に借り手の峻別が行われなかったことが問題
あまりにも「ごまかし」が多すぎる
国有化銀行の頭取も経営責任を問われるべき
国民の負担を最少にするという発想がない
2.私的整理のほうが国民負担は少なくて済んだか
私的整理か法的整理かの議論をする前に、前提そのものが崩れている
日本の債権放棄は再建放棄
許しがたい2次ロス議論
金融再生法の趣旨通りにやっていれば瑕疵担保もロスシェアリングも必要なかった
プロ同士の取引で瑕疵はありえない
3.瑕疵担保責任の問題点
瑕疵担保の何が問題なのか
瑕疵担保の行きつくところは外資の安値買い
4.債権放棄のどこが問題なのか
あのまま債権放棄を認めていたら、社会的損失は測り知れないものになっていた
資本主義のルールから逸脱した行為が問われた
国民はやっと目覚めた
ルールを守って頑張っている人間が苦しめられる
5.不明瞭極まりない契約書
デリバティブの損失まで補てんする条項があった
初めに7兆円ありきだったのではないか
そごうの債権放棄計画も最初に数字ありきだった
先送りをやめないと、そごうの教訓は生かされない

【第2章】 金融危機は去ったか

1.もはやハードランディングしかない!
日本の金融危機対策は預金者保護を隠れ蓑にした借り手保護
10年かけて金融危機を解決できないのは『ギネスブック』もの
「景気がよくなったら」のウソ
債権放棄による問題先送りはまだまだ続く
債権放棄で銀行の体力は確実に弱まる
公的資金70兆円では足りない
2.ペイオフ解禁のさらなる延期もあり得る
不良債権81兆円の裏側にあるものは
ついにマグマが流れ出した
銀行が破綻しないような状況になれば、ペイオフを実施する必要はない
もしも悪魔の魂を持っているなら、ペイオフ解禁を宣言した
状況は昨年12月から何も変わっていない
このままでは公的資金70兆円が底をつく
国としての信用がどんどん落ちていく
550兆円の預金を守るために70兆円の税金が使われている
さらなる公的資金枠の追加もあり得る
3.メガバンクは解決策になるか
メガバンクで銀行の収益性は向上するか
分子を拡大できない以上、分母を減らすしかない
「とりあえず一緒になれば何とかなる」という発想そのものが誤り
4.金融危機とは信用危機である
金融とは「信用」である
大蔵省の責任は重い
信用が壊れたとき、インターバンク市場は崩壊した
大蔵省が情報開示をためらった理由は、自らの役割の縮小を恐れたためか
5.金融危機を終わらせるためには
「責任をとりたくない」という心理が先送りを生んだ
申請主義がモラルハザードを助長した
申請主義の矛盾が金融危機を深刻化させていった
退出させるべき金融機関は退出させる
金融危機の対処法は「あいうえお」

【第3章】 ゼロ金利の功罪

1.ゼロ金利解除の意味
お金に価値がないといっているゼロ金利ではマーケットは機能しない
日銀がゼロ金利を解除したのは過去の教訓が残っていたから
2.ゼロ金利でしか生き残れない問題企業のとるべき道は
ゼロ金利でしか生き残れない企業には退場してもらうしかない
ベンチャー企業が育たないのは淘汰されるべき企業が生き残っているから
ゼロ金利がゾンビ企業を生き残らせた
3.量的緩和の行き着く先は悪性インフレ
「お金を空からばらまけ」発言はあまりにも無責任
下から上に向けての調整インフレは、どの国もやっていない
ITバブルは明らかに過剰流動性の現われ
4.危うい均衡の上に成り立っている日本経済
不良債権問題を片づけると過剰流動性の問題が出てくる
過剰流動性は皮肉で極めて深刻な問題
不良債権問題を片付けてお金の回りをよくすればインフレになる
5.日銀の国債引き受けの先にあるものは
歴史的にみれば、中央銀行の役割は金融政策をやることではなかった
長期金利の上昇を抑えるために、国債引き受けの話が必ず出てくる
イリュージョンが崩れたとき、通過は必ず堕落する
2000円札が教えてくれたこと
中央銀行の役目は通貨イリュージョンを維持すること
すでに日銀による実質的な国債の引き受けは始まっている
「インフレは死んだ」とはいえない
日銀が真の独立性を問われるのはこれから

【第4章】 財政赤字の垂れ流しが招く未来

1.小渕内閣の経済政策を総括する
120兆円の経済対策が残したものは
公共事業で景気対策をやっている国はもうない
2.「645兆円の借金は過大ではない」のウソ
財政赤字楽観論者への反論
日本の財政赤字を心配していないのは日本だけ
3.長期金利がジワジワ上昇していく悪夢が現実のものになる
これだけの債務を抱えていて長期金利が上昇しなかった理由とは
誰も長期金利をコントロールできない
長期金利が上がると何が起きるか
住宅ローンを借りている人は早めに固定金利に換えたほうがいい
4.若者が国を捨てるとき
やるべきことは課税最低限の引き下げと外形標準課税
今の政府に歳出カットは期待できない
このままでは若者が真っ先に日本を捨てる
5.経済構造を変えない限り、財政赤字は増え続ける
1兆円で100万人に教育訓練プログラムができる
救うべきは銀行でも企業でもなく人材
「二兎を追う者は一兎も得ず」は正しいか
「アップ・ダウン・エコノミスト」はエコノミストではない
日本を財政破綻から救うカギを握っているのは、一部の心ある大蔵官僚

【第5章】 構造改革を妨げるもの

1.構造改革はなぜ進まないか
痛みを嫌がるから構造改革が先送りされている
ゼロ金利が構造改革を遅らせてきた
ゾンビ企業からお金を回収し、新しい産業に回すことこそが構造改革
2.「お上頼み」は衰退するだけ
「おとぎの国」に流れた巨額マネー
うなぎ昇りで増えている特別信用保証枠
特別信用保証枠で借りたお金は何に使われたか
中小企業イコール弱者という発想をやめよう
3.IT革命が構造改革につながらない理由
情報開示最貧国でのITサミット
ITを使えばパラダイスがくるわけじゃない
問題意識がないままITを導入しても月並みな結果しか出ない
ITはゴールじゃない
4大メガバンクのシステム再構築も「たすきがけ」
4.構造改革をやるしかない
景気ハイジャッカーに乗っ取られてしまった日本
日本経済の底は抜けるか
政治家や官僚にとっては、今が歴史に名を残す千載一遇のチャンス

【第6章】 日本再生のシナリオ

1.不良金融機関を一気呵成に整理する
まず不良債権問題をなくすことから手をつける
瑕疵担保責任条項を使って、どんどんつぶす
国が守ってくれないなら、個人は個人で守るしかない
あまりにも金融の「イロハ」がわからない政治家が多過ぎる
問題を解決した人が出世するような人事システムを
2.大規模な規制緩和と公的部門の縮小を同時に行うべき
公務員の数を半分にして、その代わりに給料を倍にする
本当に手をつけるべきは特殊法人の改革
財投機関債から財投債へという「めくらまし」
学者の責任も大きい
発想を変えれば、雇用を守ることができる
3.ナショナルミニマムとしての公的部門のあり方は
郵便局は自ら民営化に向かう
ライフライン・バイキングとしての郵貯のあり方は
誰がすべての人に金融サービスを提供するのか
公と民間の線引きが必要
4.成功者が報われるシステムを構築せよ
租税特別措置法は整理すべき
サラリーマンもすべて確定申告にしたほうがいい
雇用を倍増した企業には厚生年金を払い戻す
上から降ってくるのではなく、民間から政策が出てこなければいけない
金融NPOが社会を変える
出る杭を伸ばす教育を
「もののふ」や「ますらお」がいなくなった
会社人間ではなく、自立した個人となれ

おわりに

以下読書録作成予定