良い改革・悪い改革 リチャード・クー『日本経済生か死かの選択』の読書録

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リチャード・クー『日本経済生か死かの選択』

単行本:328ページ
著者:リチャード・クー
出版社:徳間書店
発売日:2001年(平成13年)10月31日初版発行

目次

まえがき
最大級の経済実験をやっている日本
正しかった政策、間違っていた公約

【第1章】 日本経済が陥っているバランスシート不況
財政再建と不良債権処理は急いではいけない
日本経済を推進させてきた二つの車輪の一つが壊れた
「合成の誤謬」に陥った日本経済
個人消費はこの10年間変わっていない
企業の資金需要がなくなった
企業を問題先送りや怠慢だと非難するのは間違っている
バランスシート不況の行き着く先は大恐慌
日本経済は1930年代のアメリカに酷似

【第2章】 財政の下支えなしにバランスシート不況は克服できない
財政が効いていたからこそゼロ成長を維持できた
140兆円の景気対策が1300兆円のデフレ圧力を止めた
景気対策の成功度は過剰債務の圧縮度で計るべき
カンフル剤という表現は不適切
財政赤字をあとどれくらい続けるべきか
財政の役割を証明した1997年の大失敗
ルーズベルトも1937年に同じ間違い
財政を切ればさらに財政赤字を増やしてしまう
アンドリュー・メロンと竹中平蔵
傷口を広げるだけの構造改革論
構造改革は財政の下支えの代替にはならない
クルーグマン教授も民間資金需要不足に気づいた
将来への不安が不況の原因という竹中氏の主張の問題点
将来への不安を取り除いても景気は回復しない
国債発行30兆円にこだわってはいけない
補正予算は真水で5兆円から10兆円は必要
「補正を打てば、マーケットは大暴落」の嘘
日本は「サド・マゾ経済」を脱却せよ
小渕政権の景気優先で200兆円増えた株式の時価総額

【第3章】 金融政策は今の日本には効かない
日銀が量的緩和をしても景気は良くならない
人類史上最低の金利でも資金需要が出てこない
日銀がインフレになると言っても、人々が信じる理由はない
インフレターゲット達成には銀行の「背任行為」が必要
ミクロの悪を前提とする金融政策は間違い
金融政策をも支えている今の財政政策
マネーサプライの現象は禁物
金融緩和で構造改革を支えるというのは日銀の空手形
日銀の量的緩和で民間がリッチになるわけではない
日銀の国債買い切りオペは国債価格バブルを生むだけ
ケインズも気づかなかったケインズ的世界の原因
なぜ量的緩和の効果は一日で剥落したか
グリーンスパンも見限ったマネタリズム
量的緩和で円安になる理由もない
オニール財務長官の「ドル高政策は維持」の意味
一方的な円安介入は逆効果しかもたらさない

【第4章】 不良債権処理は急いではいけない
不良債権問題を解決しても景気は良くならない
日本のボトルネックは資金需要であり資金供給ではない
1997年の貸し渋りは供給要因だった
バブル期の貸し出しを基準にしてはいけない
日本にはベンチャーキャピタルがない
アメリカでも銀行はベンチャーにお金を貸さない
アメリカのS&Lの処理を日本にあてはめてはいけない
不良債権を売却すれば資産価格はさらに暴落する
1982年の中南米債務危機が今の日本の状況に似ている
「銀行に逃げ出す口実を与えるな」
日本は中南米債務危機への対応にこそ学ぶべき
ボルガー氏も日米の認識ギャップに危機感を抱いている
サマーズ氏も誤りを認めた日米の認識の違い
日本経済の実態を知らない米国当局者
ボルガー氏の指摘に米国当局者も沈黙
米国の対日スタンスが変わるのは時間の問題
ミクロの正義をふりかざすのは危険
不良債権処理を急ぐ政策はハイリスク・ローリターン
前回の資本投入は不良債権処理のためではなく、貸し渋り対策だった
一応成功した貸し渋り対策
余計だったのは返済条件を厳しくしたこと
不良債権処理を優先してはいけない
デット・エクイティ・スワップや債権放棄なら景気にプラス
自分以外は淘汰されてほしい企業経営者
需要不足の経済では、企業の淘汰は経済自体を縮めてしまう

【第5章】 小泉政権は本当の改革を実行できるのか
小泉ブームのイメージと実態を分けるべき
長期低迷の原因説明はいまだ不十分
不況の原因究明なしに最終決定に至った「骨太の方針」
ウソも百回言えば人は信じる?
人もカネも供給側は余っている
「ゼネコン潰し」は完全雇用が大前提
柳沢氏が資本注入はいらないと主張する理由
急ぐ意味のない日本の不良債権問題
邦銀には不良債権になりうる「問題債権」が山積み
失業という最も切実な問題をどう考えるか
財政赤字を拡大した97年の財政再建
債券市場は財政出動の必要を叫んでいる
経済の大実験を成功させるか、大恐慌シナリオかの究極の選択
国債消化の段階論から見ても日本の国債消化状況は安全
国債消化の心配は贅沢な心配
格付け機関は神様ではない
財政赤字は将来世代への所得移転ではない
後世に引き継がれる経済状況こそ重要
納税者より多い国債保有者?
増税よりも歳出カットを選ぶべき
グローバル化時代に実質金利の議論は意味がない
不良債権処理と財政再建は戦後処理であって、構造改革ではない
ペイオフ解禁問題も「戦後処理」の部類
ペイオフは信用力の落ちた日本の金融システムを直撃する
金融パニックに与えられた時間はせいぜい数時間
ペイオフ延期に文句をつけた外国金融当局は一つもなかった
質の改革を進め、量の調整は体力を見て判断すべき

【第6章】 日本経済が本当にチャレンジすべきは何か
日本経済がチャレンジすべきは企業の「借金拒絶症」
アメリカでも起こった「借金拒絶症」
1930年代のアメリカに比べればまだ日本は軽症
企業の借金拒絶症を取り除く必要条件と十分条件
小泉構造改革の本当の出番
個人の消費を増やさなければ日本経済はバランスしない
「貯蓄は美徳」ではなくなった
『おしん』の世界は大恐慌の世界
「消費は美徳、貯蓄は悪徳」キャンペーンをやるべき
人々のマインドと行動を変えるインセンティブ政策も必要
根本は日本人のライフスタイルを変えることにある
休暇問題にもある「合成の誤謬」
平日利用が少ないから日本のリゾートは高コスト
リゾート設備の貧弱さも国内旅行離れの原因
土地の有効利用で住宅の質をあげるべき
良質の住宅を買うことは消費だけでなく貯蓄にもつながる
国民のニーズから逆算して容積率を決めよ
政府は住宅面積倍増、休暇倍増、消費倍増計画を打ち出せ
日本経済を動脈硬化に陥れている「住民エゴ」
この国の民主主義は住民独裁主義になっていないか
本当にゼネコンだけが悪いのか
中国問題は日本経済へのもう一つの脅威
世界自由貿易体制の根幹に関わる中国とインドの登場
中国が魅力的な分、日本にとっては厳しい
中国発のデフレに脅かされる世界
中国は日本の失敗に学んだ
日本の株を10年間支えてきたのは外国人投資家
株の長期保有を前提にした税制改革を
株の買収機構は出口をどうつくるかが重要
銀行株だけを買収機構が買うのは間違い
時価会計のデメリットが見過ごされている
今の日本で時価会計は極めて危険
世界同時不況にブレーキをかけられるのは日本経済だけ
危機感がまったくない日本の政策当局者
海外の論調は変化してきた
ボタンを押し間違えたらとんでもない悪循環が始まる
国内でも海外でも正しい情報発信が必要
小泉首相は本当の改革をやるためにも景気を優先すべき

【第7章】 消費と貯蓄のパラダイムをどう変えるべきか(対談)
日本人の貯蓄率を下げなければ景気は回復しない
バブルが崩壊しなかったら日本経済は健全だったのか
今の日本にアメリカの経済理論は通用しない
マネタリストの理論で日本経済は動かない
日本人の貯蓄好きを根本から変える必要がある
今の金融政策に対する批判には論理のすりかえがある
日本人のパラダイムをどう変えるか
消費は少し増やすだけでいい
消費が3%伸びればデフレギャップは埋まる
短期だけでなく中長期の政策も必要
構造改革は時間をかけてやるべき
構造改革のマイナス面を補うのが消費運動
縮小均衡する人、拡大均衡する人

あとがき

以下読書録作成予定