見落とされた利潤圧縮メカニズム 橋本寿朗『デフレの進行をどう読むか』の読書録

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橋本寿朗『デフレの進行をどう読むか』

単行本:194ページ
著者:橋本寿朗
出版社:岩波書店
発売日:2002年(平成14年)3月14日第1刷発行

学問は問題提起と論争によって進歩する。
橋本氏はその生を閉じるまで問題を提起し、
われわれに論争を挑んだ。
それは同時に私たちの問題でもあった。
それと格闘するかぎり、
橋本氏は死することなく、
私たちの心の中に生き続けている。
伊東光晴

目次

はじめに

捉えきれなかった20世紀末の変化
デフレーションへの転換
利潤圧縮メカニズム

【第Ⅰ部】 価格革命-物価上昇率の逓減からデフレへ

消費者物価の低落
デフレ対策?-インフレ・ターゲティング
日本で現実になったケインズの予言-流動性の罠
流動性の罠と金融恐慌
忘れられたデフレの経験
三重野日銀総裁は語る-インフレ心理という蒔の上にすわっている
見えなかった価格革命
現況は好ましい?-物価安定の達成
物価の安定とは何か
価格革命の展開
世界的な価格革命で先行する日本の物価
物価上昇が常識であった時代
反ケインズ革命
石油飽食の時代-素材・資源価格の低下
標準組立、加工型産業における無制限供給
デジタル革命と輸送革命のインパクト
労働力の価値の上昇-それにも係わらず不利益を被る人々
日本が価格革命の先陣を切る理由
高物価国で物価が下がらない状態だという誤解
価格革命によるダメージ

【第Ⅱ部】 空前の巨額キャピタル・ロスと利潤圧縮メカニズムの展開

一 長期経済停滞
焦点としての利潤圧縮メカニズム
異例に高まる労働分配率

二 バブル経済破綻という激震
光り輝いた日本経済とバブルの発生
バブルの崩壊
皆が売り急げば地価は下がり続ける-合成の誤謬

三 利潤圧縮メカニズムの展開
総資本経常利益率の低落
なぜ総資本回転率は下がったのか
なぞめいた保有土地の増加
不動産業の土地保有
売上高営業利益率の低落、低迷
間接部門の労働コストが利潤を圧縮している
1989-90年の高金利政策の罪科
再び労働分配率の上昇を論じる-利潤圧縮メカニズム
付加価値生産性の伸び悩み
効率重視(?)の企業の価格設定行動
付加価値生産性の低迷から低下へ
資金漸増のメカニズム
変わらない雇用慣行
定期昇給制度の威力
賃金引下げの試み
重要なのは、やはり利潤圧縮メカニズム
展望はみえるか

【第Ⅲ部】 国際分業の進展か、それとも産業の空洞化か

一 サービス業と製造業
産業構造のサービス化
サービス業の低い生産性
比較優位を失う-製造業の縮小
大きな産業間の労働生産性格差
製造業は衰退しているのか

二 高所得国における生産要素市場と物的消費の限界
消費支出のサービス化と産業のサービス化
胃袋の限界と利用できるモノの限度-物的消費の限界

三 製造業は空洞化しているのか
雪印ショック-衰退する日本の製造業
低下する製造業の開業率
繊維・衣料産業の衰退
世界一の高所得・高賃金国
不安にさいなまれる豊かな消費者の行動の縮図-飲食料品工業
金型工業にみる水平貿易化
製造業の機械工業化と機械物価の持続的低下
不振をきわめるエレクトロニクス産業
機械工業の転換-産業の空洞化は起こっている?
比較劣位産業の競争優位-造船工業
熟練と労働システムのtoll-gate的位置
上海のロールキャベツと大連のアジフライ
製造業基地となった中国への進出
製造業と海外生産
海外生産と貿易への影響
WTOに加盟した中国と地球環境対応
一つのセーフティー・ネットとしての戦略家、企業家の輩出

あとがき-橋本寿朗さんの仕事・・・伊東光晴

以下読書録作成予定