厚生労働省が作り上げた年金ジグゾーパズルの謎を解き明かす 開田卓二『2015年の年金破綻回避』の読書録

厚生年金・国民年金増額対策室年金読書録(年金、年金生活、社会保障関連の本) > 開田卓二『2015年の年金破綻回避』の読書録

厚生年金・国民年金増額対策室

開田卓二『2015年の年金破綻回避』

単行本:165ページ
著者:開田卓二
出版社:文芸社
発売日:2005年(平成17年)1月15日初版第1刷発行

今ならまだ間に合う!
こんな日本に誰がした-
そんな責を追及するより
今、知るべきこと、すべきこと。

年金制度が破綻するのは役人が悪い議員が悪いと言うが、
よく考えてみると悪いのは自分ではないだろうか。
天下りで役人がコネを頼ると言うが、
自分もコネを頼っていないだろうか・・・。
日本人全員がもたれあうことから、
年金制度が沈没してゆくのではないだろうか。
年金制度を変えるには、
そういうことにならないよう
一人一人が自立するしか方法はないのではなかろうか。
(「はじめに」より)

目次

はじめに
要約

【第1章】 年金問題に潜む本当のこと
1.厚生労働省が示す虚構と現実の世界
2.年金問題~火元は国共済年金破綻にあり~
3.団塊の衝撃~2015年 少子高齢化の波を越えて
4.社会保険庁~ムダ金・流用・天下りを許さず

【第2章】 2001年VS2015年 厚生年金・国民年金・国共済年金 負担と給付の比較
1.厚生年金~今のままで切りぬけ可能ではないのか?
2.国民年金(基礎年金)心配ご無用~年金月額を減らすか、国庫負担2/3でOK?
3.国共済年金~すでに破綻?近々、サドンデス?
4.厚生年金を赤字転落にみせかける年金ジグゾーパズルの謎を解き明かす

【第3章】 年金制度を設計・運営してきた行政官庁への不信
1.厚生労働省・社会保険庁 ムダ金・流用・天下りの40兆円を返すのか
2.厚生労働省・社会保険庁 このまま任せたら、二重の損失
3.究極の政策 社会保険庁廃庁、国税庁に吸収せよ

【第4章】 年金制度を巡る客観情勢
1.公共事業から年金へ~所得保障政策のコペルニクス的転換
2.デフレはグローバル化の波~日本は14年間よく耐えた
3.少子高齢化なんかこわくない

【第5章】 2015年 高齢社会に向けての年金改革案
1.団塊超過対策~団塊給付5%削減、次世代仕送りプラン
2.2015年に向けて~高齢社会の年金制度改革案
3.2015年に向けて~年金以外での高齢社会対応策
4.730兆円の国債返済

【第6章】 日本の未来 絶好のポジション
1.日本は地政学的ベストポジション
2.体制変革 現代の松蔭、出でよ
3.サラリーマン的発想からの脱却
4.変化のきざし~イラクの人質事件
5.団塊サラリーマン 最後の生き場所、死に場所
6.自らの年金を自らが決める最初で最後のチャンス

【第7章】 補足
1.年金の不思議 ~46の疑問・質問
2.年金額の計算式
3.年金ジグゾーパズル解読~辿りついた道すじ

おわりに
私の提言
参考文献

『2015年の年金破綻回避』の読書録

2015年、人口ボリュームの多い団塊世代が全員65歳以上の年金受給者側に回り、
2.3人の現役世代が1人の高齢者を扶養する構図となる。
本書では、その2015年から特に厳しくなる年金財政の前に、国民全員に対してメッセージを発し、
それぞれの自立心によって年金制度を持続させていこうとする意識啓発書的な本である。

第5章 2015年高齢社会に向けての年金改革案
1.団塊超過対策~団塊給付5%削減、次世代仕送りプラン(P92)より
『団塊超過問題が実現化する2015年より前に、団塊超過対策を完成させておく必要がある。2015年を超えるとどんな対策も後手にまわり効果が十分に期待できないおそれがある。 準備期間として10年程度は必要であるから2005年には準備をスターとさせなければ間に合わないことになる。1日も早い国民のコンセンサスが求められるところである。』

読書メモ

『年金は誰かが得をして誰かが損をしてはいけないのである。
全ての人が公平に権利を持ち、義務を果たすべきなのである。』(P3)

『厚生労働省・社会保険庁の皆様、(略)誇り高く公正に日本を支えていく行政官を国民は待ち望んでいます。
若者よ、(略)このまま選挙に行かなければ、さらに借金を背負うかもしれないのだぞ。
団塊の世代よ、(略)自分達の給付を削減し、次世代に仕送りしてもいいじゃないか。
専業主婦の皆様、(略)堂々と年金権を主張すればいいのです。
自営業の皆様、(略)25年納めなければ(略)堂々と文句を言うべきです。
年金受給者の皆様、(略)お孫さんにお小遣いをあげる分、社会全体として困る次の世代に仕送りしてください。』
(P3~5)

『少子高齢化の進展とは違うところで年金財政が破綻していることに気がつかなければならない。(略)一つめは、厚生労働省・社会保険庁によるムダ金・流用・天下りである。(略) 二つめは、国家公務員共済年金の破綻である。(略)あわせて100兆円の損失が少子高齢化とは関係のない原因による負担増と思われる。』(P17~18)

(社会保険庁 平成13年版事業年表をもとに)『厚生年金は保険料負担者が3,158万人いて受給者949万人を扶養している。国共済は掛金負担者が111万人で受給者が60万人いる。 厚生年金は3.33人で1人の退職者の面倒を見ているが、国共済は1.85人で1人を見ていることになる。誰も指摘していないが国共済はすでに超高齢化社会に突入しているのである。 (略)しかし国共済は(略)給付の15%切下げが必要であるにもかかわらず、下の図3のように常に厚生年金より高い給付を受け続けてきているのである。』(P20~21)

以降、年金制度をとりまく現状や矛盾、問題点等々を指摘しつつ、
第5章では、具体的かつオリジナルの年金改革案が提示されている。
(年金一元化、年金支給開始年齢の引き下げなど)
また、最後にも『私の提言』として次の1を含めて10個の案が提示されている。
『1.年金保険料を値上げしないで欲しい

国民年金保険料は、月額13,300円で固定します。
厚生年金保険料は、13.58%で固定します。
その代わり、消費税のうち3%程度を年金目的税として負担してもらいます。』(P163)

さいごに

本書「おわりに」でも触れられているが、 例えばP149の『2004年5月30日放映の「サンデープロジェクト」で田原総一郎さんと福島瑞穂さんとのやりとりは久々に怒りで体が熱くなった。』のように、 本書では、具体的に批判すべき場面においては仮名ではなく実名を用いている。 そのような歯切れの良さが、本書の話の分かりやすさ、興味の促進、全体としての読後感の良さにも繋がっていると思われる。