本当は「財政危機ではない」これだけの理由 菊池英博『増税が日本を破壊する』の読書録

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菊池英博『増税が日本を破壊する』

単行本:238ページ
著者:菊池英博
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2005年(平成17年)12月1日第1刷発行

借金795兆円には
カラクリがある
いま日本経済に必要なのは、
積極的な投資減税と公共投資

世間に蔓延する日本の財政の誤解を解き、
客観的データと歴史的経験、経済学的理論から、
真実の姿を明らかにする

目次

はじめに
日本は世界の笑いもの
日本国民は騙されている
魔女に呪文をかけられた日本
本書で主張したいこと
騙されたいために
本書の構成内容
さあ国民のみなさん、罠から抜け出そう
序章 なぜ政府には大増税しか策がないのか
問題点1 財政均衡至上主義に陥っている
問題点2 日本の財政を「粗債務」だけで捉えている
問題点3 大失敗した政策の反省がない
問題点4 財政政策に経済活性化の要素を盛り込む考えに乏しい

【第1章】 日本は財政危機ではない
1.純債務でみれば日本の財政は健全
「粗債務」でみた日本の財政
「純債務」でみた日本の財政
「粗債務」だけで財政危機と判断した橋本財政改革
日本とアメリカの国債保有者比較
2.借金795兆円の嘘
日本の粗債務と純債務
3.日本には巨額の対外債権がある
4.危機煽る財務省に騙されるな
政府は債務超過ではない
債務をかさ上げした内閣府
5.財政の日本型モデル
米英は対外債務国、債務を増やしても景気対策を重視
ドイツは日本とともに対外債権国、国内は低調で財政赤字が続く
財政の「日本型モデル」
日本は財政赤字を必要とする経済体質
6.日本は投資不足
ドーマーの定理
7.国債格下げの理由
デフレによる名目GDPの低迷が原因
小泉内閣のデフレスパイラル緊縮予算が格下げの原因
S&Pは純債務、MDは粗債務で格付けをする
財務省は格下げに対して「純債務論」で反論
8.国会でも純債務論はたびたび出ている
国会にみる純債務論
衆参両院予算公聴会での私の説明
純債務に対する財務大臣の見解
新聞は本質的問題を正しく理解して記事にすべきである
9.国債の発行はまだ十分できる
資産の流動化対策が必要
財政の罠からの脱出と財政規律

【第2章】 なぜ増税論が出るのか
1.デフレを起こした財政改革、国民に謝罪した橋本元首相
ゴア副大統領が来日、緊縮財政への懸念を表明
1997年の財政改革が長期デフレの原点
金融恐慌と信用収縮を引き起こした財政デフレ
金融恐慌が発生、信用収縮が拡大
2.財政再建凍結で税収増加
成功だった1998~2000年の財政金融政策
3.構造改革が財政悪化を招いた
小泉構造改革がなければ、税収は60兆円に達していた
公共投資削減で税収激減
税収が激減したのはなぜか
デフレのもとでは「実質」成長は幻想にすぎない
デフレが国民生活を崩壊させている
貧富の差が拡大、家計の24%が預貯金ゼロ、失業率の実態は10%
雇用機会を潰す金融庁行政
自殺者数最悪、社会不安の増加、凶悪犯罪の多発もデフレが原因
景気のいい話は一部の大企業だけ、偏向する新聞情報
4.虚構の構造改革の落とし穴
アメリカ大恐慌と日本の昭和恐慌の教訓
アメリカ大恐慌の推移-均衡財政が経済を破壊した
ルーズベルト大統領は財政支出の増大で危機を救った
財政支出の効果に消極的な見解は大きな誤り
日本の大恐慌の推移-緊縮財政が日本国家を破滅させた
デフレ政策を積極的に支援した新聞論調
高橋是清蔵相は財政支出の拡大で危機を救った
財政支出を増やせば財務負担は減少する
財政規律のあり方
大恐慌と同じ落とし穴に落ち込んだ現在の日本
5.大前提から「虚構」だった構造改革
[1]「公共投資はGDPの増加に寄与していない」
[2]「銀行に不良債権があるから貸し出しが伸びず、デフレが長引いている。だから不良債権処理を加速すべきだ」
[3]「需要不足経済なのに供給過剰と断定して、供給サイドを削減する政策を進めてきた」
[4]「主要先進国の水準も参考としつつ、公共投資の対GDP比率を中期的に引き下げていく必要がある」
6.グローバリズムの罠にはまった日本
グローバリズムは冷戦終了後のアメリカの世界戦略
アメリカの対日要望書
日本はグローバリズムに対する対策と戦略がない
自己資本比率規制(BIS規制)
ペイオフ完全実施が金融システムを不安定にした
時価会計と減損会計が日本を破壊していく
日本だけが導入した時価会計-デフレ下での導入、世界の笑いもの
減損会計は企業を破壊し、税収を激減させる
大手新聞が時価会計と減損会計のキャンペーンを実施
7.間違った財政健全化の思考
誤解1 「政府の債務」は全額返済すべきである
誤解2 日本は「小さい政府」を目指す。だから財政支出も削減すべきだ
誤解3 赤字国債を発行すれば、いずれ増税になる(増税しないと赤字国債を削減できない)
誤解4 財政赤字の削減には、財政支出の削減と増税以外に道はない
誤解5 国の財政赤字は家計の赤字と同じである。収入を上回る支出は削減すべきだ。国債残高を子供に引き継がせてはならない
誤解6 このままいけば日本はアルゼンチンのようになる
誤解7 これからは高齢化社会になる。だから国債の発行は抑えるべきである
誤解8 新規国債の発行額を金額で「○○円まで」とすべきだ
誤解9 粗債務だけの残高をみて、「日本の財政は破綻状態だ」
8.国を破綻させる識者の実態
粗債務だけで日本財政をみる識者
大増税を招く経済財政諮問会議の民間委員の見解

【第3章】 税収減少を招いた金融改革
2000年度で不良債権処理は終わっていた
小泉デフレで不良債権が増加した
日米首脳会談で不良債権処理の加速を公約
1.銀行と企業を破壊した金融再生プログラム
大前提から間違いだった「金融再生プログラムの内容」
2.デフレのもとでDCFと減損会計はやってはいけない
DCF方式による企業と銀行潰し
減損会計による企業と銀行潰し
金融庁の企業と銀行潰しのプロセス
銀行と企業を破綻させる監査法人
日本経済を萎縮させるから税収が減る
金融改革プログラムは強度の金融引き締め政策
UFJ銀行とダイエーは潰すべきではなかった
3.ペイオフ完全実施は金融システム破壊の起爆剤
ペイオフ完全実施で貸し出し機能が弱体化した
本来のペイオフ制度は貸し出し機能の保護も目的としている
4.日本はオーバーバンキング(銀行過剰)ではない
日本はショートバンキング
国内で進む金融の寡占化と硬直化
銀行の寡占化と硬直化にどう対処すべきか(主要国のルール)
オーバーバンキング論は誤り
5.金融庁行政には全面的な方針転換が必要だ
強まる銀行利用者の不安感
国民に安心感を与えよ
国内基準行の自己資本比率規制を撤廃し、早期是正措置を復活させるべきだ
大手行の株式保有に対する外資規制を導入すべきである
金融庁の責務
金融庁を廃止せよ

【第4章】 増税が国を滅ぼす
1.大増税はどうして出てくるのか
基礎的財政収支の赤字20兆円の穴埋め
構造改革路線から増税路線に転換
義務教育費から生活苦の母子家庭の援助まで削減
日本は一定の財政赤字を必要としている(財政の日本型モデル)
妥当な財政赤字は17.2兆円か
公共投資が名目GDP成長を支えている
新規国債発行額の推移と内訳-赤字国債を増やした小泉内閣
日本国民の租税負担は高いのか低いのか
税収の推移-落ち込みの激しい法人税
法人税の国際比較
大増税を主張する識者
2.増税になるとどうなるか
増税はすでに始まっている
サラリーマン大増税計画
3.再び経済失速への道
デフレ時の緊縮財政と増税は経済を破綻させる
1997年度の増税よりはるかに大きい国民負担
経済情勢を考えない目標は設定すべきではない
財政の理念は「量出制入」(支出を量って入りを制す)
橋本財政改革と同じ発想は危険
4.増税は財政再建にならない
内閣府モデルによるシミュレーション
所得税を増税すると
公共投資を削減すると
税収20兆円はどうやって徴収するのか
PBをゼロにしても財政は改善しない
政府の増税案は増税効果が薄い
増税が日本を滅ぼす
日本は政策危機である
増税が日本を滅ぼすプロセス
増税破綻を防ぐにはどうすればよいか

【第5章】 今、必要なのは減税政策
1.どうすれば債務は減るのか-アメリカの良さに学べ
債務残高はいくら多くてもよい
名目GDP成長率が純債務増加率を上回ればよい
アメリカの良いところに学べ
景気と成長重視の財政政策が債務を減少させる
2.常に拡大路線が状況を打開する
「投資項目」に財政支出を集中
義務的経費には上限を設定
景気回復と拡大路線が財政赤字を削減
3.進む産業空洞化を阻止せよ
減少する若年層の雇用機会
三重県「クリスタルバレー構想」と亀山市「産業振興奨励金」
「投資減税」による「内需拡大策」が空洞化を阻止する
4.自分のために自分のおカネを使え
われわれのおカネはどこにあるのか
自分のカネをどうやって使うのか
5.日本再興投資資金枠で経済は活性化する-税収倍増・赤字国債解消
高齢化が進む今こそ投資を増進すべきだ
日本再興投資資金枠100兆円の設定
日本再興投資資金枠の具体的内容
日本再興投資資金100兆円の効果
投資減税の効果は大きい-経済産業省モデル
投資減税50兆円の効果
開発投資の効果
赤字国債の新規発行解消
投資以外の財政支出の削減
6.国債価格は暴落しない
外貨準備は日本銀行の資金で購入
国債安定化政策の確立が必要
銀行の自己資本比率に与える影響
大恐慌のアメリカの国債管理政策
7.金融の国際ルールは捨てよ
[1] ペイオフ制度の適用を停止する
[2] 時価会計と減損会計は日本では通用しない
[3] 自己資本比率規制は国内基準行には適用しない
8.日本の伝統をベースにした改革が繁栄をもたらす
雇用の安定と生活保障の意義こそ日本の誇るべき伝統だ
日本の土壌に合わないものは取り入れるな
若者に夢を与えよ、すべては安定した雇用からだ
家庭の崩壊が社会を混乱させ、人間尊重の精神を喪失させている
配偶者・扶養控除の増加と少子化対策費の増加が必要
外資による大手銀行・大手企業の買収を禁止すべきだ
アメリカの要求に対してどのように対処すべきか
日本は間接金融中心の国である
内需拡大こそ日本が生き延びる道だ
世界から尊敬される国民になろう

おわりに
参考文献

ちょっと道草
[1]「純債務でみると、日本の財政事情は破綻とは程遠い」
コロンビア大学教授デビッド・ワインシュタイン氏の分析
[2]「政策の失敗で失った15年」
金融政策・財政政策の失敗と無用の不良債権処理が長期低迷の原因
[3]「日本は反面教師だった」
日本のバブル崩壊後の対策失敗を勉強したアメリカ
[4]「中央銀行と政府は一体である」
サクンホーンで結ばれたクリントン(民主党)とグリーンスパン(共和党)
[5]「アメリカン・カルチャーを大切にするアメリカ」
ニューヨーク株式市場のフィンガーサイン継続は雇用対策

以下読書録作成予定