「希望格差」を超えて 山田昌弘『新平等社会』の読書録

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山田昌弘『新平等社会』

単行本:285ページ
著者:山田昌弘
出版社:文藝春秋
発売日:2006年(平成18年)9月15日第1刷発行

中流生活が崩壊し、
社会の「底抜け」がはじまった・・・
『希望格差社会』の著者が放つ
家族と日本を救う処方箋!

・格差に脆弱な時期は「就職期」「子育て期」「高齢期」
・収入の低い男性は結婚が難しいという現実
・パラサイト生活もできなくなる貧困化した若者
・「中流生活」崩壊と貧困母子家庭の急増
・病気、要介護状態になった貧困高齢者の「底抜け」
・国内の地域格差が拡大再生産されている
・「生活の希望」を再建する新平等社会への道
混迷する格差論争に終止符を打つ決定本

目次

はじめに
格差に関する議論が盛んなのはなぜか?
本書の構成

第Ⅰ部 希望格差を超えて

【第1章】 格差問題を考えるための3つの問い
A 格差拡大はあるのか
B 格差はよいものか
C 格差拡大の原因は何か

【第2章】 格差に関わる社会問題を考える際の5つの領域
格差拡大の実態と社会問題の観点
1.「上離れ」と「底抜け」の問題(前者のみか、後者が含まれるか)
(1)低収入の若者の出現
(2)夫の失業、収入低下によって中流の生活が維持できなくなった家族
(3)離別母子家庭の増大
(4)貧困高齢者の底抜け
2.ライフコースの問題 就職期、子育て期、高齢者での格差の意味
3.生涯格差 格差が一生継続するのかという問題
4.格差の再生産の問題
5.地域格差の問題

【第3章】 格差の現代的特徴と平等社会のイメージ
近代社会が始まって以来の議論
平等社会のイメージ
近代社会における格差の特徴
市場原理主義者のロジック
市場の外部不経済としての「格差問題」
第三の平等概念
なぜ今新しい平等概念が必要になったのか

【第4章】 新たなタイプの格差の出現とその理由
1.仕事における新たなタイプの格差
収入の格差以上に仕事格差の出現が問題
工業社会における仕事の格差(1990年頃まで)
ニューエコノミー(ポスト工業社会)における新たな仕事格差の出現
新しい生産性格差の発生
若者の仕事格差拡大
(1)スタートラインから大きな格差がつく(将来性、安定性、そしてプライド)
(2)生涯収入の格差 専門中核労働者のルートに乗り続けられる人VS乗れない人
地域的格差拡大
2.家族の格差拡大
家族と格差の関係
戦後家族(1990年頃まで)
家族格差の出現
格差を隠す形での家族の多様化
収入格差拡大による家族問題の増加
3.経済と家族の格差拡大は構造的必然
「搾取」なのか?
(1)収入格差の拡大 不可避であり、不当とは言えない
(2)家族による格差拡大 不可避であり、不当とは言えない
格差拡大の不当性を強調しようとすると、自由を抑圧するというジレンマ
4.希望格差の出現
希望とは何か
外部不経済としての「絶望」
戦後経済の高度成長期~1990年頃までの日本社会-努力保証社会
外部不経済としての絶望の高まり
希望格差社会
「スキルアップ型の職」減少の心理的影響
大量の定型作業労働者増大の心理的影響
生活の場での希望の喪失
新たに登場する格差が希望格差につながる
希望格差が社会の持続可能性を損なう

【第5章】 新たな平等社会を目指して
1.格差対策の前提条件
希望喪失に至るメカニズム
希望の平等社会を目指して
希望格差対策の前提条件
(1)生産性の低い職はなくならない
(2)家族で不利益を被る人はいなくならない
何が必要なのか
2.非正規雇用の人々への具体的な支援策
「生産性の低い職に就く人」への対応
手段(1)生産性の低い職に就く期間を短くする
(2)生産性の低い職の中で徐々に昇進できる道をつくる
(3)生産性の高い職に就くための教育訓練の機会と「報い」を保証する
(4)生産性の低い職を少なくし、生産性の高い職を増やす
3.「底抜け」を防ぐための自立支援
人はプライドで生きる存在
(1)就職期、子育て期、高齢期における自立支援
(2)子どもの教育訓練の保証
(3)リスク化したライフコースに対応できる社会保障制度
4.新しい公共性の構築を
新しい「希望」のある労働、生活の支援
(1)共生事業(新しい形の公共事業)の推進
(2)新しい形でのコミュニティ活動の推進
5.「生活の希望」の再建へ向けて
生活の構造改革を
男女共同参画は当然の前提
累進課税、相続税、そして寄付税制
新平等社会への道

第Ⅱ部 格差社会の断面

【第6章】 仕事格差-フリーター社会のゆくえ
フリーターに関する各論
雇用の二極化
フリーターが中年になる日

【第7章】 結婚格差-結婚難に至る男の事情、女の本音
未婚化の研究はタブー?
仕事のために結婚しないのか
夫の収入が問題
若年男性の収入のリスク化と二極化
未婚率低下への切り札

【第8章】 家族格差-家族の形が変わり、新しい格差を生む
人口減少楽観論の盲点
バブル崩壊前の二つの家族像
(1)高齢者の格差拡大-身寄りなく生活困難に
(2)子育て世代の二極化-生活を決定する三要素
(3)未婚者の招来不安-パラサイト後の転落

【第9章】 教育格差-希望格差社会とやる気の喪失
勉強という努力が報われない
戦後教育のパイプライン・システム
ニューエコノミーの浸透とパイプラインの漏れ
教育の「バトル・ロワイヤル」

【第10章】 「家族主義の失敗」とリスク構造の転換
「家族主義の福祉社会」の転換期
近代社会と社会的リスク
標準的家族モデルとその弱点
近代福祉国家の課題
経済の低成長期におけるリスク構造の転換
先進国の対応
「家族の失敗」の進行

おわりに
生活の構造改革を目指して-格差が問題化しない社会を

あとがき
文献目録
初出一覧

以下読書録作成予定