偏差値と人生の相関関係 セオリープロジェクト編『学歴社会の真実』の読書録

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セオリープロジェクト編『学歴社会の真実』の読書録

『学歴社会の真実』
単行本:251ページ
著者:セオリープロジェクト(編)
出版社:講談社
発売日:2008年(平成20年)8月1日第1版発行

人生は出身校で決まるのか?
東大ブランドの真相から
過熱する中学受験の内幕と対策、
出身校と人間性の関係まで、
学歴社会の「気になる話題」を徹底検証!

学歴社会をめぐるあなたの疑問に答えます!
「神童はなぜ20歳過ぎるとタダの人になるのか?」
「東大の格差社会『勝ち組』『負け組』の分かれ目は?」
「みんな書かない名門私立中学の実態とは?」
「頭の悪い親子に逆転法はあるのか?」
「あの有名人の出身校は意外?納得?」

東大OBの追跡取材で分かった
「その後の人生」、
あの名門中学が「東大を捨てた」理由、
有名私立校の父母が明かす
「受かっても大変」、
偏差値では分からない「意外にいい学校」、
そして最高の講師陣による
「人生の授業」まで。
中学受験の子供を持つ親、必読の一冊。

目次

【第1部】 「東大ブランド」の真相

神童は20歳過ぎるとなぜタダの人になるのか
東大内・格差社会の実情
名門『武蔵』は東大を捨てたのか

【第2部】 過熱する中学受験の「内幕」

有名私立中・受かっても大変、落ちても大変
みんな書かない有名校の実態
偏差値以上にいい学校はどこか?

【第3部】 学歴社会を「生き抜く」方法

頭の悪い親子の3ヶ月逆転法
海外留学・山村留学ってどうなの?
17歳からのリフォーム術

【第4部】 親子で受けたい「人生の授業」

小柴昌俊「心に夢の卵を持とう」
張富士夫「失敗するから成長するんだ」
山崎直子「自分の宇宙を育てようよ」
立命館小学校・これが評判の「漢字の時間」
日野原重明「あれをしよう、これをしようと思える何かがあれば、人は幸福でいられる」

【第5部】 「人間性」は出身校で決まるのか

出身大学別「人間性」の研究と分析
頭のよさそうな有名人の意外な出身高校

『学歴社会の真実』の読書録

※当ページ読書録記載日:2009年10月26日

本書『学歴社会の真実』は、学歴エリートコースを進む人たちに焦点を当て、中学受験からはじまる受験競争を勝ち抜いていく秘策・ポイント・失敗・挫折等の情報が掲載されているが、 興味深いのは受験戦争に勝ち抜き東京大学に入学できたとしても、卒業後にフリーターや風俗嬢のヒモ(P38)などをしている『負け組』が存在し、 その要因となるのが入学時点およびそれぞれが歩んできた進学コースにあるということだ。

何だかんだ言っても、東大に入りさえすれば「勝ち組」人生を送ることができる・・・ 漠然とそう思っていただけに意外であったが、なるほど無名校出身者と地方出身者にとっては、本書で書かれているような不利な状況に置かれる可能性もあるのかもしれない。

ポイントは入学直後のクラスオリエンテーション(合宿)で、出身高校が開成や灘、ラ・サールといった有名校である場合には入学直後から顔見知りがいるためにグループの輪の中に入ることができ、 それらグループと似たようなグループが合流し、一大勢力が形成されていく。

また、サークル勧誘においても同様に有名校出身者は先輩・後輩のつながりが生かされ・・・「東大での人間関係はクラスの友達かサークルの友達ということが多い。 つまりはこのサークルオリの時点で今後の大学生活の人間関係がほとんど決定するということであり、ここで孤立したら最後、孤独な大学生活が待ち受けているということになる。」(P44)

【勝ち組】サークル、バイト、恋愛にいそしむ。
【負け組】授業以外はやることもなく、試験時は搾取されるだけ。(P45)

一方、知り合いの少ない「負け組」は大学生活における格差はもちろん、就職活動においても一人で活動するために「勝ち組」とは露骨な格差が存在する。 数の上でも有名校出身者と無名校出身者の人数割合は約7対3(P41)ということなので、無名校出身者は意識的に人間関係を形成していかないと、「東大」ブランドの価値を十二分に 発揮できない可能性が高まるということか・・・

私立中学入学1年目に240万円!?

76ページにある私立中学入学1年目の「お金」の試算を見ると、塾に通うケースで年間240万円とされている。
入学金、授業料、通学定期代、寄付金、塾代なども十分に高額だが、驚くのは小遣い月2万円で年間24万円、交際費月1万円で年間12万円、携帯電話代月1万円で年間12万円と なっている点で、まるでサラリーマンのようである。

「友達の中には、親が医者や弁護士、会社社長という子も珍しくないのが私立中学の常。プライベートでの持ち物や、 遊びに使うおカネの値段も、小学校時代とはケタが違う。」(P75)

100点目指すな、70点でいい

100ページの私立中学受験のノウハウ「100点目指すな、70点でいい」では、合格者の平均点よりも合格者の最低点を気にすべしとの助言が記されている。 ほとんどの学校が6割の正解で合格できるとして、事例として白百合中学2008年受験結果を上げている。

「合格者の最低点が203点に対し受験者平均は201.6点と、さはわずか1.4点。つまり、国語の漢字一つ、算数の計算問題1問で泣いた子供がかなりいるということ。 逆に言えばこの1問さえ解けるようになれば合格率はぐっと高くなるというわけだ。」(P101)

ここでは、そのための勉強方法が紹介されているが、要は難解な問題を解けるようにするよりも基本的な問題を確実に解けるようにするとのこと。 資格試験の試験対策とまったく同じである。

わからない問題に当たったときの試験本番テクニック

試験本番における解答の時間配分についてなどいくつかの受験テクニックが紹介されているが、答えられない問題にぶつかった時の対処法がなかなか面白い。

国語なら文中のキーワードを2つ3つ使用して文章にする。小説の問題で主人公の心情を問う問題ならば、設問中の肯定的なものを選ぶ。算数の穴埋めならば10以下の整数で 閃いたものを入れる。(P115~118)

もちろん、わからなかったときの最後の手段であるのだが、いざとなればこの手でいこうという手段を持ち合わせていれば、平常心で試験に望めるのではないだろうか。

素質

「講師によると、教育倫理上「努力が大切だと子供たちに教えるそうだが、実際はできる子たちは大して努力しなくてもできるらしく、できない子は努力しても できないそうで、そうなるとこれは「素質」というよりほかないであろう。」(P11)

これはその通りだと思われる。
自分自身できない側の人間として、能力(記憶力、吸収スピードなど)について努力で補えない壁が存在することを実感してきたのだが、 意外と「脳」の力(ここでは学力?)については生まれもった個人差ではなく努力次第であるとの考えを持っている人がいることに驚く。

おそらく知的な面での生まれ持った個人差を認めると、それが差別につながるような認識があるのかもしれないが、 むしろできないことを努力不足とされることの方が本人に逃れられない苦痛を抱かせる。

62ページ「合格体験談じゃ分からない 有名私立中・受かっても大変、落ちても大変」を読んでいると、分不相応な難関中学に入学した生徒の行く末が案じられてならない。