「霞ヶ関政権」が続けば日本は沈没する! 脱藩官僚の会『脱藩官僚、霞ヶ関に宣戦布告!』の読書録

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脱藩官僚の会『脱藩官僚、霞ヶ関に宣戦布告!』の読書録

『脱藩官僚、霞ヶ関に宣戦布告!』
単行本:251ページ
著者:脱藩官僚の会
出版社:朝日新聞出版
発売日:2008年(平成20年)9月30日第1版発行

「霞ヶ関政権」が続けば日本は沈没する!
官僚の手の内を知り尽くした
男たちが明かす、
改革を骨抜きにする
霞ヶ関の実態と
日本救済の秘策

目次

【第1章】 江田憲司 通商産業省脱藩・衆議院議員

官僚のお家芸「改革の骨抜き」を完全阻止する!
霞ヶ関連合軍と全面戦争をやり抜いた男

【第2章】 高橋洋一 財務省脱藩・東洋大学教授

天下りの斡旋禁止で官僚の質はアップする
官僚すべてを敵にした埋蔵金男

【第3章】 岸博之 経済産業省脱藩・慶應義塾大学教授

官僚の政策独占を打ち破り、官製不況を止める!
霞ヶ関にゲリラ戦で挑んだ竹中平蔵氏の懐刀

【第4章】 上山信一 運輸省脱藩・慶應義塾大学教授

大阪維新に期待!地方分権こそ霞ヶ関改革の近道
地方から国を変えたい自治体の改革屋

【第5章】 福井秀夫 建設省脱藩・政策研究大学院大学教授

エリート主義が破綻した霞ヶ関を国民目線の集団に変革せよ!
行政の手口を知り尽くした政策通

【第6章】 寺脇研 文部科学省脱藩・映画評論家

「まともな抵抗」ができない役人たちに頭のいい交渉の仕方を教えよう
タカ派文教族に敵視されたゆとり教育の旗手

【第7章】 木下敏行 農林水産省脱藩・IT企業役員

国の人事制度を変えれば税金の無駄遣いは簡単になくせる
抵抗勢力と戦い、改革を実現した元佐賀市長

【第8章】 石川和男 経済産業省脱藩・新日本パブリック・アフェアーズ上級執行役員

霞ヶ関からは出てこない「当たり前」の政策を発信する!
規制緩和に心血を注ぐ「脱藩官僚」

設立趣意書「CHANGE!官僚国家日本」
緊急アピール「官僚諸兄へ・・・率先して自らの身を切れ」

『脱藩官僚、霞ヶ関に宣戦布告!』の読書録

元官僚8名による書。
それぞれの章において官僚の実態、憂慮、手の内、改革への決意などが語られている。

「国のため」「国民のため」に入省したはずの志し高き若者エリートも、
いつのまにか省益拡大・利権獲得にまい進するようになる恐ろしき世界霞ヶ関。

『三十代の終りから四十代、いわゆる管理職になったころ、ほとんどの官僚は青雲の志を失い、上から陰に陽に言われる「新しい政策を作るなら、新しい団体を作り、 そこに天下り先を確保しろ」「補助金をとってきてその給料をもぐりこませろ」というささやきに負け、家族と老後を考えた揚げ句に、組織に忠誠を誓い、一生を霞ヶ関に 捧げてしまうのです。』(P51抜粋)

また、騙しのテクニックとも思える「霞ヶ関文学」や、省益のために暗躍する官僚の姿は、元当事者でなければわからないであろう内容であり、非常に興味深く読めた。 (同時に悲しい気持ちや怒りの気持ちも)

ただ、本書の欠点として、所々で難しいコトバがサラッと使われていることが上げられる。
もちろん、コトバのレベルとして人によっては「どこが難しいの?」と思えるようなものかもしれないが・・・

恥を忍んでピックアップしてみる。

霞ヶ関文学・手口の一例

・「経済財政諮問会議」→『財政』を抜き「経済諮問会議」としようとする。(P38)
・財政と金融の分離を阻止するため、総理記者会見に『共生』の文言を入れ込むべく根回しする。(P46)
・政府系金融機関改革に際して「完全民営化」を『完全民営化』に書き換える。(P110)
・天下り禁止について『~最高の経営責任者』とすることで、対象者を少なくする。(P112)

どれも大した違いがないように見えるが、解説を読むと印象は異なる。
まるで、気づかれないように大きな落とし穴を仕込んでいるかのようだ。

規制

【理容師と美容師】

ヘアカット専門店では、繁忙に応じて理容師と美容師をフレキシブルに配置したいところだが、
理容師は理容所のみ、美容師は美容所のみという規制によって、それはかなわない。
「理容師と美容師が一緒に働くと危険である」??との理由だが、協業をゆるさないのは
新しい業態を苦々しく思う旧来型業態の利益擁護にほかならない。(P169要約)

【幼稚園と保育園】

幼稚園(調理施設なし)を所管する文部科学省、保育園(調理施設あり)を所管する厚生労働省。
待機児童解消のため、幼稚園の稼働時間を延長するなどして余っている幼稚園を保育園に転用する案もあったが、
厚労省いわく「調理場がなければ、きちんとした家庭が作れない」として却下。
本音は「調理場で働く調理師さんの雇用」「調理場の建設や管理の業者」が心配??(P170要約)

官僚と政治家

『政治家が官僚に取り込まれて、操られてしまう姿を、私はイヤというほど目にしてきました。多忙を極め、 法や情報を吟味する余裕のない国会議員は、せいぜい政務秘書官一人を連れているだけで、何もわからず官僚にコントロールされてしまいます。』(P95抜粋)

一方、政策に精通しているとはいっても官僚出身の族議員は出身省庁の利害に配慮。
また、その政策自体も、
『実情は、役所の権限や予算の拡大、過去から連綿と続く既得権益の維持のため-すなわち「省益のための政策」が大半でした』(P97抜粋) とのこと。

行政不況、官製不況・・・背景の一端が見えたような気がする。