これであなたも年金相談ができる! 田島ひとみ『年金基礎講座』の読書録

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厚生年金・国民年金増額対策室

田島ひとみ『年金基礎講座』の読書録

『年金基礎講座』
単行本:263ページ
著者:田島ひとみ
出版社:日本法令
発売日:2009年(平成21年)7月15日初版発行

表紙

これであなたも年金相談ができる!
聞かれることは、実は10パターンしかない!
相談業務を始めたい社労士のための必読書!

目次

【Prologue】 年金相談への対応
1.社会保険労務士と年金
2.年金相談で聞かれる10の質問
3.10項目の概要

【Pattern1】

Q1 将来年金を受け取ることは可能か?
1.受給資格期間
2.確認の手順
3.老齢基礎年金の受給資格期間
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
1.老齢基礎年金の受給資格期間
2.老齢基礎年金の受給資格期間短縮の特例
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.年金制度の概要
2.公的年金制度の歴史
3.国民年金の被保険者
4.サラリーマンの妻のカラ期間
5.保険料の免除
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 2~3年の加入期間でも年金を受け取ることは可能か?
Q3 国民年金・厚生年金の加入期間がそれぞれ25年未満しかない場合、年金を受け取ることは可能か?
Q4 ある程度の年齢まで保険料を納めていなかった場合、年金を受け取ることはできないか?

【Pattern2】

Q1 60歳以降も勤めていると支給開始年齢は65歳になるのか?
1.60歳以降も会社勤務を続ける場合の年金の扱い
2.在職老齢年金
3.受給要件確認の手順
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
1.老後の年金の種類
2.支給開始年齢のスケジュール
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.加給年金額が支給される時期
2.支給開始年齢の特例
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 生年月日がほとんど同じ人でも定額部分の支給開始年齢が違うのはなぜ?
Q3 自分はいつから年金を受け取れるのか?
Q4 前職時代にかけていた厚生年金はいつから支給されるのか?

【Pattern3】 年金をいくらくらい受け取れるか

Q1 受け取れる年金額はいくらくらいになるか?
1.老齢基礎年金
2.年金額の計算の手順
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
1.老齢基礎年金の金額
2.加入可能年数
3.振替加算
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.老齢厚生年金の金額
2.付加年金
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 どのような計算で年金額が算出されているのか?
Q3 国民年金を途中でやめた場合、何か問題が生じるのか?
Q4 なぜ年金額が少ないのか?

【Pattern4】 繰上げ・繰下げ

Q1 繰上げ支給を受けるにあたっての留意点とは?
1.繰上げ・繰下げのしくみと留意点
2.アドバイスを行う際のポイント
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
1.老齢基礎年金の繰上げ・繰下げ
2.繰上げ支給を受ける際の注意事項
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.厚生年金の期間がある人の繰上げ
2.今後60歳になる人の繰上げ
3.老齢厚生年金の繰下げ
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 年金を60歳から受け取るにはどのような方法があるか?また、金額はどのくらいになるのか?
Q3 本来61歳以降から受け取る年金を60歳から受け取るにはどのような方法があるか?

【Pattern5】 国民年金の任意加入

Q1 年金額を増やすためにはどうしたらよいか?
1.確認の手順
2.年金額を増やすための方法
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
1.国民年金の任意加入
2.国民年金の特例任意加入
[さらに、このことも知っておくと有利]
厚生年金保険の高齢任意加入
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 70歳以降も厚生年金に加入し、年金額を増やすことは可能か?

【Pattern6】 在職老齢年金

Q1 給与の金額により、年金額はどのように調整されるのか?
1.在職老齢年金のしくみ
2.在職老齢年金の計算の仕方
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
在職老齢年金
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.70歳以上の人の在職老齢年金
2.高年齢雇用継続給付
3.高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の調整
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 高年齢雇用継続給付を受け取る場合、在職老齢年金の金額はどうなるか?
Q3 定年後、個人経営で仕事を行う場合、年金はどのようなあつかいになるか?

【Pattern7】 加給年金額と振替加算

Q1 加給年金額とはどのようなもので、受け取れるためにはどうしたらよいか?
1.老齢基礎年金
2.老齢厚生年金
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
加給年金額
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.振替加算
2.加給年金額がつかなくなる場合
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 年金額が急に減ってしまったが、なぜか?

【Pattern8】 厚生年金基金のしくみ

Q1 厚生年金基金とはどのようなものか?
1.厚生年金基金のしくみ
2.厚生年金基金のメリット・デメリット
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
1.厚生年金基金の概要
2.基金に加入している場合の年金額の計算
[さらに、このことも知っておくと有利]
基金に加入していたことのある人の在職老齢年金
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 厚生年金基金に加入していた場合、年金額はどのように計算するのか?

【Pattern9】 遺族年金・障害年金

Q1 主人の扶養となっていない場合、遺族年金は支給されないのか?
1.遺族年金と障害年金
2.遺族年金の支給要件の確認手順
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
1.遺族基礎年金
2.寡婦年金
3.死亡一時金
4.遺族厚生年金
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.障害基礎年金
2.障害厚生年金
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 主人の遺族年金を受け取っている場合、自分の年金は将来どうなるのか?
Q3 障害年金を申請する場合、国民年金を滞納していたことは問題になるのか?

【Pattern10】 年金の手続きについて

Q1 年金を受け取るための手続きはどのように進めるのか?
1.年金請求の手続きの進め方
2.年金請求の手続きの確認手順
☆Q1のような質問を受けたときのポイント
[これだけは知っておきたい!]
老齢給付の請求手順
[さらに、このことも知っておくと有利]
1.障害年金の裁定請求手順
2.遺族年金の裁定請求手順
3.その他
[ここまでの知識があれば、次の質問にも対応可能!]
Q2 年金の受給の手続きは60歳の時に行うべきか?

『年金基礎講座』の読書録

※当ページ記述2010年3月20日

『この本は、これまで年金業務、特に年金相談業務を苦手としていた社会保険労務士の方に年金を少しでも身近に感じてもらいたい、また、年金を好きになってもらいたい、 そして、年金相談業務もしてみたいと思っていただくための手助けになればということで執筆させていただきました。』(「はしがき」より抜粋)

本書は、一言で言えば『年金相談バイブル』である。
本書のキモは年金相談で聞かれる質問を類型化した「10」のパターン分けで、その10項目を切り口として
質問者にどのように助言したらよいか、答えるポイントは・・・といった内容が年金の解説とともに記されている。

10の質問パターン・・・一般の人の質問の受け皿をあらかじめ用意しておくことで、
何を答えればよいのかと混乱することなく回答を提示することができる。
本来、時間をかけて身に付けるスキルを、本書を読むことでスキップすることが可能・・・
社会保険労務士など年金相談を業とする人向けの本としては安すぎる価格設定では??

ただし、本書は、よくある一般的な質問に対応するための本であるために、
すでに十分な経験を有している人にとっては少し物足りなく感じる所もあるかもしれない。
あくまで、年金相談を始めたばかりの人や年金相談を苦手とする人向きの本である。

わかりやすいポイント整理

本書では、10の質問パターンそれぞれについて、質問を受けたときのポイントが整理されている。
例えば、Pattern3の「受け取れる年金額はいくらくらいになるか?」という質問に対しては、

※P81より抜粋

このように、順を追った説明となっている。
人によっては「当たり前の話ばかり」と思う向きもあるかもしれないが、図に表して説明することや、相談者に対して確認すべきこと、話しておかなければならないことなど、 最初は一つ二つ抜けてしまい相手に苦情を言われたり面倒をかけてしまうこともありうる話であるために、あらかじめ抑えておきたいポイントが分かっていることは非常に心強い。

もう一つ、Pattern8の「厚生年金基金とはどのようなものか?」という質問に対するポイントも例示したい。

※P185より抜粋

厚生年金基金が厚生年金の一部を代行するため、老齢厚生年金本体の年金額は少なくなる。
しかし、一般的に年金の仕組みの説明においては、「1階部分が国民年金」「2階部分が厚生年金」「3階部分が厚生年金基金」と簡潔に説明をされることが多いために、 本書でも記されているように「老齢厚生年金の金額が少ない」とする質問は珍しくはない。

社会保険労務士としては当然の話であっても、相談者の年金額の数字を見て、どの部分がどういう意味を持つのかを適切に説明することは案外と難しいもので、 本書186ページの厚生年金基金の概要の図、あるいは187ページの「基金に加入している場合の年金額の計算」がわかっていると話がスムーズに運ぶ。

本書を読み終えて

とかく一般の人にとっては年金は複雑であり、どこをどう聞いて良いのかもわかっていないこともある。
しかし、相談を受ける側においても、豊富な年金知識をアウトプット用に交通整理できていなければ、
本心から理解、納得できるだけの答えを相手に提供することは難しい。
その点本書は、年金相談のテクニカルな部分のベースになりうると思われる。