白河桃子『結婚したくてもできない男 結婚できてもしない女』 の読書録

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白河桃子『結婚したくてもできない男 結婚できてもしない女』

単行本:267ページ
著者:白河桃子
出版社:サンマーク出版
発売日:2002年(平成14年)7月1日初版発行

「結婚しない男女」のさまざまな結婚意識の実情に、
気鋭の同世代ライターが迫る!
しない自由、できない理由

いつか「運命の人」とめぐり合い、結ばれる。
そして子供が生まれて温かい家庭を築いて、
いつかその子供たちがまた誰かとめぐり合い・・・。
世界はそんな風に続いていくと誰もが思っていた時代がたしかにあった。
男も女も誰もがそんな物語を胸に秘めていた。
(中略)ところが今私たちは、
その物語をつくれなくなってしまった。
男と女は出会えなくなってしまった。
物語の初めの一章となるはずの「結婚」に異変が起きている。
(本書プロローグより)

目次

プロローグ
1960年代症候群
・空前の未婚時代へ
・1960年代という病

【第1章】 結婚したくてもできない男たち

1.思う人には思われず、思わぬ人から思われる
CASE1「鏡を見ない男」
・欲しいのは人生の壁打ちパートナー
2.本気で恋愛したことがない
CASE2「恋愛筋不足の男」
・傷つくのが怖い
3.仕事も女も、絞りきれない
CASE3「バブル残党の男」
・キリギリスのお手本はなくなった
4.女には不自由したことがない
CASE4「モテる男」
・「ひとり」を極めて、あえて選ぶ「ふたり」
5.一生添いとげるものと思っていたのに・・・
CASE5「バツイチの優柔不断なイイ男」
・子供でもできなければ決断できない
CASE6「結婚しているのかしていないのか、わからない男」
・離婚を切り出されたときが最後
6.「結婚情報サービス」に集う男たち
選ぶ立場から選ばれる立場への転換
キーワードは「対等なパートナー」
老後の不安を「妥協」で消そうとしても
7.お姫様を待たないで
普通の男性も結婚しない時代
相手とぶつかり合えない男たち
恋愛結婚至上主義が結婚を遠ざける
経済的な責任感がますます邪魔をする
お姫様を待っている場合じゃない
「しない」から「できない」へのターニングポイント

【第2章】 結婚できてもしない女たち

1.1960年代生まれは結婚しない?
結婚できない女VS結婚しない女
「クロワッサン症候群」後のシングルズ大量発生
Hanakoさんこそ、すべての先導者だった
実家のレベルより落ちる結婚はしたくない
2.家族神話という刷り込みから逃れられない
ハンサムウーマンたちの結婚願望
女性たちが「上」へ行きすぎてしまった
「父の娘」の永遠のライバルは母
3.熟女限定「SMAP症候群」が女を縁遠くする
現実の男は面倒くさい
1990年代の女性が最も見たかった夢
SMAP症候群から脱却する4ステップ
・すれ違う中から出会えたふたり
4.結婚しない時代のやめられないお見合
女性から見た「おみー君現象」
パラサイトシングルのつまずき
お見合50回でも結婚できないその事情
お見合い界はマイナスポイント制
親が気に入らない相手とは結婚できない
王子様は、もういない
5.結婚したくない現実的な理由
日本女性の強固な「家事」の刷り込み
「家事能力ゼロ男」とは好きでも結婚しない
家事負担より、家事奴隷募集中?
6.縮みゆく世界の結婚・恋愛事情
少子化の先頭を行く国で何が起きているのか
アジアのシングルズの微妙
7.「やまとなでしこ」海外流出の実情
恋愛海外亡命時代がやってきた
女性が「女の子」になれる島
自分の「三高」に気づかない女性たち
自分の足で立つ、ということ
8.1960年代症候群
繁殖力に乏しい少子化の犯人たち
出産限界年齢を迎える1960年代女性の選択
不機嫌な果実たちが求めるもの

【第3章】 新・晩婚時代

1.晩婚・少子化の主役たちの結婚
由梨の場合-女子大生タレント、十年後れの結婚
・結婚という「パンドラの箱」を開けて
・十年遅れの招待状
・つくられた女子大生タレント
・結婚とは「してもしなくても後悔するもの」
・三年後の由梨を訪ねて
祥子の場合-勤続十六年目の社内結婚
・「遅すぎる結婚」なんてない
・リードするのは私、従うのは彼
・十年前なら選ばなかった彼
・自分だけのいい男(ひと)を見つける
・三年後の祥子を訪ねて
淳子の場合-年下夫は鍛えなあかん!
・ホロリときて結婚
・年下夫は鍛えて育てる
・あきらめない年上と、やわらかな年下
・三年後の淳子を訪ねて
真澄の場合-時代の求める「小さい男」
・「小さい男」はよくしゃべる
・大きい女は損をする
・二年後の真澄を訪ねて
・晩婚のキーワードは「逆転」
2.ヴィンテージな結婚と子育て
桜の場合-ジョージ・ルーカスと仕事をした女
・スーパーキャリアの結婚
青年会のおみこしを担いで
三年後の桜を訪ねて
3.恋愛異種格闘技時代
不倫は最も「切実」な関係
不倫のシナリオは常に一定のパターン
不倫のゴールはウエディングベルか?
4.「できちゃった結婚」は21世紀の救世主か
魔女の条件
いちばん愛している人と結婚したくない?
奇跡の「できちゃった婚」
「運命の人」は本当に身近にいた
「できちゃった婚」は日本を救うかもしれない
遺伝子を残せない男たち
5.病めるときも、健やかなるときも
もうひとつの「ビューティフル・ライフ」
6.ひとりの時代に考える「男と女」
王子様はもういない
「青い鳥」が見える目をあなたはもっているか
人とつながった「ひとり」になりたい

あとがき

『結婚したくてもできない男 結婚できてもしない女』の読書録

結婚しない・結婚できない男女の実情とは・・・
数多くの取材対象から見えてくる様々な人生模様。
統計やデータからは見えてこない「結婚」事情がわかるとともに、
自分自身に照らしても該当しうる部分、胸に響く部分、反省する部分がいくつか存在し、
その点読む価値のある1冊であったといえる。

一方で残念に思うところは、
筆者のプロフィール
「1961年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業」
に象徴するように、モデルの女性の多くが
1.バブル時代(崩壊前)に社会人となり、
2.そのバブルを謳歌できた、
3.キャリアの女性
に限られたものであるということ。

取材対象(女性)の登場部分をおおまかにピックアップしてみると次のようになる。

すべてに学歴が記されているわけではないので不明な部分はあるものの、
高校卒や短大卒女性の話は出てこないし、
バブルの時代にあっても低収入のパートや一般職社員として働いていた女性の話もない。

タイトルの女性の部分は「結婚できてもしない」となっているので、
「結婚したくてもできない」であろう人が多いと思われる経済的に恵まれない層の
女性の結婚事情については、ハナから除外しているのかもしれないが・・・。

山田昌弘『希望格差社会』91ページ図4-6『夫婦の学歴組合せ』
によると、高学歴男性は結婚相手に高学歴女性を選ぶというように、
学歴と結婚の間の相関関係が認められる。
「子どもの教育のために男性の学歴に見合った「賢さ」が求められたのである」(P90)

また、山田昌弘『パラサイト・シングルの時代』83ページ「専業主婦志向の女性の結婚難」
によると、女性の未婚の低収入労働者の多くは専業主婦志向のパラサイト・シングルであると思われ、
彼女らの要求を満たす男性が少なくなっていることから、結婚が難しい状況になっている・・・
という内容の記述がある。

以上のことから、不況期の高学歴者以外の結婚事情は「結婚したくてもできない」要素が
強まると思われるし、今後対象者はさらに増加して深刻さは増すものと考えられる。
この「結婚したくてもできない」層の結婚事情こそ重大問題ではないだろうか。

ところで、男性についても見てみると、
1.高収入と思われる職業に就いていて、
2.性格、考え方に問題がある男性
という共通項がある。

こちらも男性で非正規社員というような、
経済的に「結婚したくてもできない」というような話は出てこない。
その点、やはり物足りなさを感じる。

2008年3月発行 山田昌弘・白河桃子『「婚活」時代』でバランスを取った!?

本書で欠けている部分・・・時代背景もあるので一概には言えないのだが、
希望や贅沢云々ではなく、本当の意味で結婚できないという層を度外視していたことにあると思われる。

しかし、5年後に「希望格差」「パラサイトシングル」などの言葉を生み出した山田昌弘氏と共に出版した
山田昌弘・白河桃子『「婚活」時代』では、「結婚したくてもできない」社会的背景の分析・解説を山田氏が担当し、
白河氏はその社会的背景を考慮しつつ、改めて前著同様結婚できない原因を説いた。

『「婚活」時代』24ページから抜粋。

『そこであらためて実感したのは、 男女ともに、結婚したくないから結婚しないのではなくて、結婚したいのにできない。 さらには、いかにも結婚できなさそうな男性や女性が結婚できないのではなくて、 すぐにでも結婚できそうな感じなのに、結婚できないでいる人たちが、非常に多いということでした。 それはなぜでしょうか?具体的には、どういう人たちなのでしょうか?

その一部は、いわゆる負け犬世代の女性たちを対象にした拙書『結婚したくてもできたい男 結婚できてもしない女』(2002年)で、 「彼女たちが仕事や自分磨きなどで自らの価値を高めた末に、ハードルが高くなりすぎて、結局つり合う男性がいなくなってしまった」 として紹介させていただきましたが、五年経った今、状況は、男女ともに、「結婚したくてもできない時代」を迎えてしまいました。 実際五年前のインタビューで未婚だった女性が自分磨きをし、出会いを求めていても、まだ未婚のまま。男性にいたっては、忙しさのあまり、 流されるように未婚のままという状態です。2000年と2005年の国勢調査を見ると(略)つまり、今起きている現象はただの晩婚化ではなく、 生涯一度も結婚しない人、希望するわけではないのに、未婚のままの人が増えていく現象だと思います。』(以上、P24~P25より抜粋)

読書メモ

・『少子化の原因には「結婚力」の低下と「出産力」の低下があるのだが、今の日本では婚外子は全体の二%以下なので、結婚力の低下は、そのまま出産力の低下にダイレクトにつながる。』(P2-3)
・『恋愛は「瞬発力」。結婚は「持続力」。こう考えれば、恋愛結婚とは、その両方を備えたものだということ。』(P33)
・『長い独身にはなぜか、結婚したら妻一筋タイプが多い。』(P54)
・『先進国で少子化を克服する試みを成功させたスウェーデンでは、生まれる子供の半数が婚外子だ。女性を結婚させるのではなく、女性の就業率を上げて、ひとりでも子育てができるようにすれば 出生率は上がる、というデータが出ている。』(P78)
・『「結婚よりも仕事を選ぶ」女性が増えている、というのはまだ時期尚早だろう。それほど魅力的な仕事をもっている女性は、まだ少数派だ。』(P88)
・『シングルの男性たちは、「年をとったら妥協する」という。女性たちの辞書には「妥協」の文字はない。傍から見たら、「あんなに選り好みしていたのに、どうして」と思われる 結婚をしている人も多いだろう。妥協とは「量」の変化であり、「質」の変化ではない。身長180センチ以上と言っていた女性が170センチでもいいと思うのは妥協だ。180センチじゃなくても、 この人のここがいいと思えれば、それは「質」の変化だ。』(P212)
・『自分の娘には、違う人生設計を考えなさい、というつもり。「高齢出産は甘いもんじゃない」って、これは絶対に書いておいてくださいね』(P220)
・『高齢出産の多いアメリカでも、四十才で子供を産むのはOKでも、四十二才で二才の子供を追いかけるのは大変だっていわれているぐらいなんですよ』(P221)