山田昌弘・白河桃子『「婚活」時代』の読書録

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山田昌弘・白河桃子『「婚活」時代』

新書:197ページ
著者:山田昌弘白河桃子
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2008年(平成20年)3月1日第1刷発行

目次

はじめに 山田昌弘

【1】「婚活」時代の到来 山田昌弘
ここまで似ている、結婚と就職
「規制緩和」によって、就職活動が必要となった
1975年、何が起こったか!?
「婚活」なしでは結婚できない

【2】結婚したくてもできない! 白河桃子
ふつうの人が結婚したいのに結婚できない?
丸の内OL、年収二倍の法則!
スーパーキャリアウーマンも男性の好みは同じ?
結婚はもはや、生活必需品ではなく、嗜好品!
仕事も子育ても家事も女性に頼る男性たち
対等な関係を阻害する男性の要因・女性の要因
日本男児は、今やすっかり受け身の王子様!
「頑固不断」な男たち
そもそも日本人に恋愛結婚はあったのか?

【3】「婚活」前時代VS「婚活」時代 山田昌弘
1980年までは「出会い」が自動的に設定されていた
「出会い」が少なかったから、出会った相手がすてきに見えた!
テレビドラマ『男女七人夏物語』が分岐点!?
結婚後の生活に男女が同じ予測をもてた時代
1980年以降、出会いの機会にも格差が!
出会っても、相思相愛にならない?
結婚するきっかけもメリットも見つからない?
自動的、画一的進展はない!

【4】彼と彼女が結婚できない理由 白河桃子
[彼女が結婚できない理由 その1] 周りにいい男がいない!
[彼女が結婚できない理由 その2] いいと思った人にはもう相手がいる!
[彼女が結婚できない理由 その3] 恋人はいるが、結婚に踏み切れない
[彼が結婚できない理由 その1] ムリ目の女性にばかり声をかけ、断られてしまう
[彼が結婚できない理由 その2] 声がかけられない
[彼が結婚できない理由 その3] 恋人はいるが結婚に踏み切れない

【5】結婚したいのにできない社会的要因 山田昌弘
男性間の収入格差が広がっている
自己実現意識が高まって、ライフスタイルのすり合わせが困難に
交際機会が拡大するほど未婚化が進む!?
男性は、経済力とコミュニケーション力が魅力格差に
女性は、結婚相手に対する要求水準の高さが障壁に
女性たちよ、狩に出でよ。男性たちよ、自分を磨け

【6】現代日本、「結婚」と「婚活」の実態 白河桃子
1.ここまで進化した!結婚情報サービス
2.親の代理見合い
3.合コンも進化する
4.出会いの意外な宝庫、ネット婚
5.西と東の国際結婚
6.花婿学校に見る男の婚活

【7】40歳からが結婚適齢期?35歳からの婚活 白河桃子
揺れるアラウンド・フォーティ
マドンナ幻想が使える!?「過去縁」
男性たちの意識の変革次第?
母親を意識させられる女性はダブー?
「STORY」創刊以来の40代女性たちの変化
再婚市場の変化

【8】成功する婚活 山田昌弘・白河桃子
男性は女性の多いところへ行くべし!
女性の婚活の最大のキーワードは、稼げる女性!
男性が、かつての依存型OL化している?
結婚の決断は、ライフスタイルのすり合わせから
男性の婚活のキーワードは、生きる力!
基本は「囲い込み漁」!
結婚の決め手は、男性のきっぱり告白!

あとがき 山田昌弘・白河桃子

『「婚活」時代』の読書録

この本で「少子化」の捉え方が変わるかもしれない。

本書は2人の著者によって『未婚』の実態を解明。
男性、女性それぞれについて、具体的な結婚対策にまで踏み込んでいる。

山田昌弘氏は、過去の著「希望格差社会」「新平等社会」で展開したような
就職の二極化が、実は結婚においても起きていることを指摘。
社会の仕組みの中で、自動的に就職、結婚できていた過去とは異なり、現代は
就職については就職活動→就活、結婚については結婚活動→婚活が必要になったと説く。

2002年に「結婚したくてもできない男 結婚できてもしない女」を発行した白河桃子氏は、
状況は『男女ともに、「結婚したくともできない時代」になった』と危機感を強めている。

未婚者が増えている要因としては、
収入減など社会的な背景によるもの(主に山田氏)や意識によるもの(主に白河氏)を上げているが、
結婚に向けての対策として両者共通しているのは、男性による変革(自分磨き)と、
女性による積極さ(白河氏は「逆狩猟時代」と言っている)。

なお、白河氏によれば、日本の女性は世界でもモテるが、男性は
『申し訳ないのですが、日本人は今、世界一モテない状況です。
コミュニケーション能力の差で、外国人には負けてしまう。
(略)
日本の男性も、東南アジアに行けば経済力でモテますが、
日本が経済的にだめになっても同じようにモテるのかというと、
ちょっとつらいものがあると思います。』(P154)
とのこと。
辛らつだが、なるほどそうかもしれない。

少子化対策→子育て支援?

結婚したくとも結婚できない。
単に婚期を遅らせる「晩婚化」も進んでいるが、
生涯結婚できない「非婚化」も進んでいると本書では指摘している。

『50歳の時点で結婚していない人は、
75年までは2~3%だったのが2005年現在、男性15.4%。
今後、その数は増え続け、
今の若者の25%以上が一生結婚しないだろうと予測されます。
そして、それが少子化の直接の原因になっています。』(P18)

日本では、結婚と出産の関係性が比較的強いため、
この通りに推移すれば少子化は止められそうもない。

参考:非嫡出子(ウィキペディア)
2003年の日本の非嫡出子=1.93%
アイスランド63.6%
スウェーデン56%
ノルウェー50%
デンマーク44%
イギリス43%
アメリカ 33%
オランダ31%
イタリア10%
(各国の非嫡出子より)

ところが、日本の少子化対策を見ると、
子供を産む際と産んだ後の施策ばかり。

参考:新エンゼルプランの主な内容(厚労省サイトより)

このような国の少子化対策に、山田氏は、

『いつも、疑問に思っていることがあります。
それは、少子化の直接の要因が「未婚化」、
つまり、結婚する人の減少にあるにもかかわらず、
少子化対策として打ち出されるものは、
子育て支援(保育所整備や育児休業導入や育児手当)なのです。』(P195)

さらに、

『少子化対策であろうがなかろうが、
「子育てしやすい社会」にすることは賛成です。
しかし、結婚しない人が増えているという現実を無視して、
少子化対策を進めても効果が上がるとは思えません。』(P196)

少子化対策は、高齢者対策や公共事業などに比べると注目度の低い存在だが、
年金や医療など社会保障制度の長期的持続の可否は、将来世代の数に大きく左右される。

本来ならば国をあげて取り組みたいところだが・・・

『中高年の政策担当者や研究者は、
現在若年者の男女交際に起こっている現実を、
まったくといっていいほど理解していません。
彼らは、「結婚なんて、したければ簡単にできるものだ」
と思っているふしがあります。
確かに、20年前くらいまでは、そうだったかもしれません。
しかし、(略)』(P196)

心配なのは、世の中で力を持っているのは年が上の世代で、
今後ますますその層が拡大するということ。

高齢者層の政治的発言力が強まる中、
上記のような誤解を解き、高齢者層の理解を得て
結婚対策にも資源を傾けられるかどうか・・・

結婚情報サービス

本書『「婚活」時代』では、結婚情報サービスについても
値段、メリット・デメリット、注意点などが書かれている。

結婚情報サービスのタイプは次の3つ。
1.お見合い仲人型
2.データマッチング型
3.インターネット型

2006年の経済産業省の結婚研究会
『少子化時代の結婚関連産業の在り方に関する研究会』の試算では、
結婚情報サービスを利用した人の1年以内結婚成婚率は利用しない人の2倍。

ただし、高い料金を請求されるケースやサクラ、だましのようなケースもあるようなので、
結婚情報サービス利用の前には、本書に書かれているような予備知識を身につけておきたい。

最後に

最後に、本書で、へ~と感じた新知識を3点メモしておきたい。
1.合コンは、結婚にいたるプロセスとしては、非常に難易度が高い(P133)
2.国際結婚の離婚率は日本人同士よりも高い(P153)
3.年下婚(男性が年下)は、不思議なことに女性がみな小柄なタイプだった(P165)
(女性よりも男性が7歳~12歳年下の1回り離れた年下カップルの取材による)