『週刊ダイヤモンド 2010年2/20号 特集:年金の大誤解』の読書録

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『週刊ダイヤモンド 2010年2/20号 特集:年金の大誤解』の読書録

週刊ダイヤモンド 2010年2/20号 特集:年金の大誤解
週刊ダイヤモンド:150ページ
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2010年(平成22年)2月15日

表紙

1500人アンケートで
浮かぶ誤解・勘違い
元凶は基礎年金

20歳以上必読
自己防衛のための
年金必須知識

高すぎる運用利回り
改革の足を引っ張る厚労省

著名経済学者の
「年金制度に関する共同提言」

特集目次(P36~P83)

[36] 年金の大誤解

【Part1】 誤解だらけの年金
[38] 制度の基本と矛盾をおさらい
[38] [誤解]サラリーマンは国民年金保険料を支払っている
[40] [誤解]20年以内に年金がいっさいもらえなくなる事態が起こる
[41] [誤解]自分が払った保険料が積み立てられ、年金をもらっている
[42] [誤解]国民年金保険料を払いたくなければ、払わなくてもいい

【Part2】 問題先送りの深刻
[44] 想定運用利回りは「砂上の楼閣」
[46] 政治に翻弄されてきた年金制度
[49] [Column]改革つぶしに血眼になる年金官僚

【Part3】 年金問題の真実
[50] 年金制度が抱える根本問題
[52] 経済学者の「年金制度に関する共同提言」
[56] 制度を歪める基礎年金拠出金
[59] 公的年金財政を危うくしている慢心
[61] [Iterview]古川元久 内閣官房国家戦略室兼内閣府副大臣

【Part4】 公的年金の本当
[62] 20~40歳代が損をしないための必須知識
[62] 年金を無事もらうための大前提
[64] 家族の大黒柱が亡くなったら
[65] 病気やケガで働けなくなったら
[65] 年金定期便を読みこなす
[66] あなたが本当にもらえる年金額
[67] [Table]17タイプ別 本当にもらえる年金額試算

『週刊ダイヤモンド 2010年2/20号 特集:年金の大誤解』の読書録

当ページ記載:2010年3月13日

政権交代が実現して約半年。
本格的な年金制度改革の議論はまだまだ先だが、本書を読むと、現在の年金制度が抱えている問題や解決の方向性や年金をめぐる複雑な利害関係を理解することができる。
全体としては、厳しい年金財政・年金制度のほころびに対して真正面から論じつつ11名もの経済学者の提言も掲載しており、現行年金制度に異を唱える内容となっている。

※同じ経済系雑誌の『週刊東洋経済 2009年10/31号 特集:年金激震!』 では、本書とは反対に現行の年金制度を擁護するような内容となっており、併せて読むとおもしろい。

『週刊ダイヤモンド 2010年2/20号 特集:年金の大誤解』の読書メモ

給付額は同じでも保険料負担は違う

『各年金の基礎年金額は40年加入の満額で月6万6008円と同じでも、支払っている保険料は各制度によってバラバラ』
(P39)

空洞化問題のコストはサラリーマンにも

『未加入者、未納者の増加は、基礎年金拠出金単価の上昇を通じて、国民年金加入者だけでなく、サラリーマンの厚生年金にも財政的なしわ寄せを及ぼしている(略) 被保険者総数で均等に負担する場合と比べ、サラリーマンの負担は約2割高くなっている』(P39)

マクロ経済スライドは次世代へのしわ寄せ

『経済前提はもちろん、将来人口などの悪化で年金財政へのダメージが明らかに見込まれたとしても、マクロ経済スライドの調整率は上がりません。延長しかないのです。』(P42)

利害関係

46~47ページにある「年金をめぐる政官財の相関図」は、コンパクトながらも年金をとりまく利害関係が明確にされており、 年金制度改革の難しさの一端が見て取れる。

『連合』は中間所得層以上の年金が減額されることは避けたいとの思惑があり、『日本経団連』は事業主負担の削減を狙って基礎年金の全額税方式化を提言。 『厚生労働省』は現状維持の牙城で、各政党同士あるいは同じ党内でも主張が異なる党もある。

摘まれた改革の「芽」

『年金改革が至らなかった要因の一つとして、厚労省の存在も忘れてはいけないだろう。なかでも同省年金局は、現状維持派の牙城だ。 超党派による年金改革の提言にも名を連ねた自民党の衆院議員、河野太郎氏は「年金局には税方式による年金改革を避けたい理由があった」と指摘する。 旧厚生省が独占してきた巨大な「年金特別会計」の存在だ。この特別会計は年金局の力の源泉となってきたという。しかし、改革派が打ち出す税方式へと移行してしまうと、 財源は財務省が取り仕切ることになってしまうのだ。』(P48)

改革つぶしに血眼になる年金官僚 幹部回りネガティブキャンペーン

『「河野太朗が変な改革案を主張していますが、税方式は成り立ちませんよ」-。河野氏が税方式による改革を主張するたびに、厚労省の年金官僚が自民党幹部の事務所を 回って徹底したネガティブキャンペーンを展開してきたという。』
(P49)

経済学者 年金制度に関する共同提言(P52~53)

起草
鈴木亘・学習院大学経済学部教授
西沢和彦・日本総合研究所主任研究員
本誌編集部

最後に

数年前、新聞各紙がこぞって年金改革案を提言し、社会保障審議会年金部会などでも活発な議論が行われたが、結局のところ甘い経済前提の修正もなく、 社会保険方式の仕組みも変わることはなく・・・結局のところ「現状維持の牙城」ではないが、何も変わらない印象を受けた。

そして政権交代。まずは、上記共同宣言の3番目「2009年年金財政検証における経済前提を見直し、年金財政の悪化を直視すべきである。経済前提の決定プロセスを透明化せよ。」 のように、正しい現状把握から始めなければ議論は先に進まないような気がする。