預金が下ろせなくなる?財産が消滅する? 本吉正雄『元日銀マンが教える 預金封鎖』の読書録

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本吉正雄『元日銀マンが教える 預金封鎖』

単行本:219ページ
著者:本吉正雄
出版社:PHP研究所
発売日:2004年(平成16年)6月7日第1版第1刷発行

預金が下ろせなくなる?
財産が消滅する?
債権・株券のペーパーレス化、不動産登記の電子化、
住基ネット…、着々と、あなたの財産は囲い込まれている。
元銀行マンがはじめて明かす、日本の危機!
その予兆を見逃すな!

1.外貨預金にする
2.金(ゴールド)を持つ
3.タックスヘイブン、オフショア市場の利用
4.不動産を買う
5.外国株を保有する
すべて行っても「預金封鎖」には対処できない!

目次

はじめに

【序章】 極秘に進められた預金封鎖
見慣れぬ紙包み
極秘に進められた準備
新円切り替えの秘策
旧紙幣に証紙を貼って新紙幣として使用
昭和21年2月16日
当初の目的は戦争関連財産の没収
預金封鎖・財産税徴収をめぐる話
抜け道を見つけた人々

【第1章】 インフレから預金封鎖!恐怖の公式
なぜインフレが起こるのか
インフレのかたち
第一次世界大戦後のドイツのハイパー・インフレ
札を重さで計った戦後日本のハイパー・インフレ
インフレの行き着く先は物々交換
預金封鎖より財産税が恐ろしい
財産税とセットで実施された戦後の預金封鎖
終戦直後、民間に支払われた大量の資金
戦時公債のデフォルト(支払い停止)
戦後の預金封鎖は「不良債権処理の切り札」に使われた
現在、預金封鎖が繰り返されようとしている?
国の生命にかかわるような重い病気に襲われたとき・・・
インフレ発生の下地はできている
日本銀行の国債保有が危険な理由
終戦直後の国債支払い停止

【第2章】 着々と進む、あなたの資産把握策
預金封鎖・財産税実施へのカウントダウン
債券のペーパーレス化の本当のねらい
資産調査の布石、株券のペーパーレス化
登記事務のペーパーレス化で不動産を把握
電子マネーは秘匿できない
既に存在する「電子マネー」
「名寄せ」は金融機関の鬼門
「ペイオフ」実施に不可欠な「名寄せ」
莫大な名寄せ作業のコスト
「名寄せ」問題解決のための「住基ネット」
ペイオフ論議の中の預金封鎖の前兆
預金封鎖下の経済活動
これからおこる預金封鎖に抜け道はあるか

【第3章】 預金封鎖を法は許すのか
憲法の空白期間
帝国憲法では預金封鎖は合法
立ちふさがる憲法の壁

【第4章】 日本銀行の敗北と怨念
日本銀行氷川寮にて
日本銀行法の改正-その重要なポイントとは
「通貨価値の安定」から「物価の安定」へ
為替介入権を手放す
財政政策についてチェック・アンド・バランスができない
独立とは名ばかりの日本銀行の実態
監督権を手離さない大蔵省
予算の許認可権も握られている

【第5章】 インフレを起こしたい人、起こしたくない人
「ゼロ金利政策」を早く解除したい日銀
金利引上げ策の失敗
インフレ退治に専念する日銀
財政赤字はインフレが起これば解消する
インフレを起こすには
財務省が無制限で発行できる為券
米国の赤字国債を買い続ける日本
日本株の外国人比率は過去最高
インフレ・ターゲット導入に反対する日銀
「物価原理主義」の呪縛
デフレ不況脱却に非協力的な日銀

【第6章】 日銀が目指す中央銀行のあり方
日銀の独立度は世界17位
孤高の通貨の番人、ドイツ連銀
終戦直後の日本銀行
法王と呼ばれた日銀総裁
「ハーベイロードの前提」
日銀独立の陰にあるエリート思想
金利引上げの難しさ
「勝ち」「負け」という呼び方
調整インフレ論には慎重
日銀の本音
インフレターゲット論が導入された場合
「インフレファイター」として権限拡大を狙う
ハイパー・インフレへの道
インフレ下での預金封鎖・財産税徴収

【第7章】 預金封鎖・財産税への4つのシナリオ
[シナリオその1 マネーロンダリング対策強化]
本人確認法施行
国家がマネーの流れを把握する
[シナリオその2 住基ネットの導入]
「名寄せ」に使える「住基ネット」
手続きが便利になる「納税者番号」
「国民へのサービス向上」の裏にあるもの
[シナリオその3 海外投資のモニター制度]
世界各地にあるタックスヘイブン
海外への逃避資産の規制強化を始めたら要注意
[シナリオその4 インフレの前兆を見破る]
物価指数ではわからない
「インフレ」の公式発表は預金封鎖の第一歩

【第8章】 アルゼンチンの教訓
IMFの警告
財政赤字を外国からの借金で賄う
預金封鎖と外貨預金凍結
緊急措置の導入
日本で通貨危機が起こるとき
不良債権問題を抱える金融機関

【第9章】 自分の財産を守るには
その1 外貨預金にする
その2 金(ゴールド)を持つ
その3 タックスヘイブン、オフショア市場の利用
その4 不動産を買う
その5 外国株を保有する
[預金封鎖への対処法]
その1 「円」を外貨預金する
その2 海外へ移住する
その3 ネットオークションを使う
もう一つの対処法 小銭を貯める

エピローグ 預金封鎖へのカウントダウン
おわりに


関連・・・預金封鎖をテーマにしている本


『元日銀マンが教える 預金封鎖』の読書録

タイトル通り元日銀マンが記す、真実味・説得力ある「預金封鎖」本です。
過去の日本において実際に実施された預金封鎖について、
日銀内部の事情にも詳しい著者だからこそ語れる、
その背景や具体的手段、および効果などについて鮮明に描かれています。
また、預金封鎖が将来において再現するのかどうか、
実務面はもちろん法律的な観点からの解説がなされており、
最後には、預金封鎖の際に資産はどうすればよいのか、
具体的手段の説明と、一般的な資産防衛策のそれぞれの問題点を指摘しています。
エピローグでは、
『預金封鎖・財産税の実施というのは最後の手段であり、
巷間言われるほどの危険性はないと私は思っている。
しかし、それを実施したときには、
馬鹿を見るのはほどほどの資産を持ちながらも、
資産を守る情報が極端に少ない中産階級である。(P216-217)』
と記されているように、今すぐに…ということはないのかもしれないのですが、
実際に預金封鎖が行われたという過去の歴史や、
現在の日本の国債等債務残高のあまりの増大ぶりを見ていると、
個人的に「何か備えをしなければ」・・・と思えてなりません。
特に、年金生活者など労働収入のない方の場合、
もし予防なく突然預金封鎖が起これば深刻な事態になりかねません。

2008年10月

読書メモ

『昭和21年2月16日に金融緊急措置令等が公布され、
預金封鎖・新円切り替えが行われたのであった。(P22)』

『金融緊急措置令、つまり預金封鎖の成立の背景には、
戦争に関連した財産を調査し没収するという財産税の実施のための調査という目的が存在した。
当初は戦争の後始末として預金を封鎖し、その中から戦争関連のものだけを没収するという案であった。
しかし、インフレーションが急激に進行したため、
最終的には預金を封鎖した上で預金者全員から財産税を徴収し、
通貨量を減少させてインフレーションを抑えるということになった。(P25)』

『インフレーションは、(A)発生原因による分類、(B)上昇速度による分類に分けられる。

(A)発生原因による分類
■ディマンドプル・インフレーション(Demand Pull Inflation)
発生原因が需要サイドにあるインフレである。
■コスト・プッシュ・インフレーション(Cost push Inflation)
発生原因が供給サイドにあるインフレである。

(B)上昇速度による分類
■クリーピング・インフレーション(忍び寄るインフレーション)
物価水準が年率数%程度の割合で緩やかに上昇するインフレーション。
マイルド・インフレーションともいう。
■ギャロッピング・インフレーション(駆け足のインフレーション)
物価水準が年率10%を超える割合で上昇するインフレーション。
■ハイパー・インフレーション(超インフレーション)
物価水準が1年間に数百倍あるいはそれ以上に上昇するインフレーション
→これが預金封鎖の引き金を引きかねないインフレ。(P35-36よりまとめ)』

『昭和初期の預金封鎖の際は、取り付け騒ぎの中で銀行が倒産するという金融恐慌をおさめるためであり、
インフレーションは存在しなかった(P42)』

『預金封鎖だけであれば私たちの財産はさほどの影響を受けないのである。
しかし、戦後の預金封鎖については財産税の徴収も同時に実施された。
じつはこれが大問題なのである。戦後の預金封鎖は、財産税を徴収するために実施されたものであった。(P43)』

『インフレーション発生の下地はすでにできている。
政府が抱える巨額の国債と、実質上それを引き受ける形でゼロ金利政策をとり続ける日本銀行の行動は、
太平洋戦争時に軍備のために国債を発行し、それを引き受けた日本銀行の金融政策とよく似ている。(P53)』

『現在において預金封鎖が現実のものとなれば、
株式の形で保有する資産についても確実に資産調査・把握の措置がとられるであろう。
そのための布石として、株券のペーパーレス化の動きは見逃せないものといえる。(P67)』

『電子マネーの導入が資産調査はもちろんのこと、
プログラム変更による預金封鎖、そして財産税の実施を容易にすることはいうまでもないだろう。(P72)』

『預金封鎖には、「憲法」の壁が大きく立ちふさがっている。
したがって、帝国憲法下で行われたような預金封鎖、そして財産税の実施が困難なのは言うまでもない。(P94)』

『ハイパー・インフレーションは政府にとってもある意味で好都合な状況である。
政府はハイパー・インフレーションを収めるためと称して預金封鎖・財産税の実施を
正当化する理由を手に入れることができる。(P167)』

『預金封鎖を実施するにはさまざまな手続きが必要だ。
さすがにいきなり明日から預金封鎖・財産税が実施されるということはまず考えられない。
預金封鎖・財産税が実施されるには、その前段階として、単純には分からない方法で慎重に外堀を埋められて、
ある日気がついたら預金封鎖が実行されていた、となるのがもっとも適切なシナリオであるだろう。(P172)』

『マネーロンダリング阻止の強化は、預金封鎖の実施を容易にする効果がある。(P175)』

『住基ネットの導入は預金封鎖・財産税という最悪のシナリオを招く可能性を含んでいるといってよいだろう。(P181)』

『実際に「インフレーションが到来している」と政府から公式に発表があったときは、
すなわち預金封鎖・財産税が実施される可能性の高いときである。(P186)』

『逆転の発想であるが、「インフレーションは到来していない」という政府発表がインフレの前兆である、
と考えるのが妥当なところかもしれない。(P187)』

『預金封鎖は憲法違反だから窓口を開放し、
ATMを稼動させて現金の支払いを行えという判決がでることも間違いないが、
窓口にも金庫にも、そして日本銀行にも払うべきドルや円がなければ、窓口を閉めるしかない。
事実上の預金封鎖は起こるのである。(P198)』

さいごに

2008年10月、アメリカ発世界金融危機のあおりを受け、
アイスランドにおいて、一部預金封鎖が行われました。
2002年のアルゼンチンにおける通貨危機・預金封鎖ほどのインパクトはなかったものの、
今後、どこの国で預金封鎖が起きてもなんら驚けません。