日本解体の危険なシナリオを暴く! 青柳孝直『第二のビッグバン「郵政民営化」の衝撃』の読書録

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青柳孝直『第二のビッグバン「郵政民営化」の衝撃』

単行本:213ページ
著者:青柳孝直
出版社:総合法令出版
発売日:2005年(平成17年)4月6日初版発行

目次

まえがきに代えて

プロローグ 日本と日本人が変わった
西武王国の解体
アメリカ対中国、そして日本は

【第1章】 郵政民営化は第二のビッグバンだ!
日本型金融の壊滅
郵政民営化の本当の理由

【第2章】 日本版ビッグバンの正体 日本版ビッグバンと1995年から10年の流れ
中国の台頭
香港返還直後に始まったアジア通貨危機
アジア通貨と日本
ジョージ・ソロスの登場
香港G7
ブルーマンデー
ソロスの韓国への凱旋
グローバル投資セミナー
1995年4月19日のプラザ・リバーサル
日本版ビッグバン構想の発表
日本の『ブラック・ノベンバー』
ブラック・ノベンバーの教訓
日本の真の終戦日

【第3章】 ビッグバンが変えた日本の生態
根幹の意味が理解されないまま、変貌した日本の10年
キッカケはフジテレビ-「大買収時代」の幕開け
雇用の変貌
年金の変貌
病院の変貌
情報システムの変貌
生活形態の変貌

【第4章】 21世紀の世界経済 米国中心の世界から米欧中の三すくみ経済へ
米国は自由主義経済のアンカー
基軸通貨の意味
近未来の頭を打ったか?米国経済
「ニューエコノミー論」
低下する失業率
財政の黒字転換という難問
米国「輸入依存型経済」の問題点
双子の赤字
グリンスパンFRB議長の引退という難問
変わらない米国の国民性
崩れ始めた米ハイテク産業。ドット・コム企業の急激な衰退
貿易赤字が支える米国経済
米国はいつまで対外的な借金を続けられるか
21世紀の期待の新通貨ユーロ
拡大プラザ構想をちらつかせる米国の真意
通貨「YES」構想の「Y」はどの国か
金融市場に揺さぶりをかける人民元
金(GOLD)、ユーロ、米株式の関係

【第5章】 時代に沿った投資戦略
日本を巡る環境の変化
産地直送型の経済メカニズム
日本国株式会社の経営危機
待ち受ける悲惨な状況
今後の投資戦略
今後の投資に対する考え方

あとがき

【投資戦略-資産運用のまとめ】

どんな本?

この本は、タイトルと内容に微妙に差異ある印象を受けるかもしれない。
個人的な印象でいうと、タイトル「第二のビッグバン「郵政民営化」の衝撃」からは、
郵政民営化による影響や問題点を詳細に記述されているものと思っていたが、
本書を読むと、そのままズバリ「郵政民営化」に関する部分は「第1章 郵政民営化は第二のビッグバンだ!」
の34~49ページのみの記述となっている。

本書のメインは1996年11月からの日本版ビッグバン(金融ビッグバン)の背景と影響、
今後の予測等であって、郵政民営化はいわばその一部であり、第2幕的な位置づけとなっている。
内容に沿ってタイトルを付けるなら「日本版ビッグバンの衝撃」・・・が妥当かもしれない。

ただ、それでも本書は面白く、個人的には○。
ビッグバン以降の一連の流れの背後にアメリカの影響があり・・・
堤西武王国の解体~郵政民営化といった大変革の裏に隠される真実・・・
推理小説よんでいるかのようだが・・・これが真実なのかもしれない。
ここはタイトルに違わず、非常に衝撃的だ。

『第二のビッグバン「郵政民営化」の衝撃』の読書録

郵政民営化のメリット

『第二の予算とまで呼ばれてきた巨額の財政投融資資金(以下、財投資金)の出口を止めることになることが
とてつもないインパクトである。』(P36)
『例えば円高防止のための円売りドル買い、介入資金や株価買い支えのPKOの資金、国債の購入、さらには官僚
の天下りの温床、特殊法人にもジャブジャブと流され、高給や高額退職金などに使われてきた。官僚の最大のうまみ
である天下りは、こういうシステムの下に実現できたのである。これを止めるというのが(止めるしかなくなる、民営化
されるのだから)、郵政民営化である。』(P37)
『二番目のメリットとして公的不良債権の炙り出しを指摘できる。これまで財投資金として国に貸し出したまま、焦げつき
になっている公的な不良債権、さらには運用の失敗による赤字を洗い出すのである。』(P38)
『政官癒着の利権構造も断たれていくという第三のメリット』(P39)
『第四のメリットとして公務員数の削減が図れる。なにしろ郵政職員の数は常勤28万人、非常勤10万人の計38万人
というのだ。それは国家公務員の3分の1を占める数となる。』(P39)

郵政民営化のデメリット

『同業他社を圧迫する。
民間の金融機関にとっては強大なライバルの出現となる』(P39-P40)
『民営化すれば「政府保証」という錦の御旗がなくなる。貯金が一般の金融機関に流れて当然だ。加えて運用失敗なら
定期貯金は破綻し、債務超過に陥ることも。となれば背に腹は代えられず、保有する国債を一気に売り出すことになる。』(P43)

『第二次橋本内閣が成立した直後の1996年11月11日、前触れも一切なく、全く突然のタイミングで「日本版ビッグバン構想」 が発表される。(しかし、実は、水面下では日本への指示は前からあったと推測できる)。』(P70)

『年金は自分でつくるしかない
厚生年金と国民年金システムは崩壊する。生き残るのは、お手盛りの議員年金と公務員の共済年金だけだろう。』(P109)
『年金がもたない主な理由は5つある。
1.国民が熟知してしまった「団塊の世代が受給年代になる恐怖」
2009年に定年のピークを迎える団塊の世代。
2.国民年金が熟知してしまった「資金運用の稚拙」
なかでも財投は不良債権の山だ。戻ってくることは120%望めないだろう。
3.国民が熟知してしまった「逆ピラミッド型人口構成」
4.国民が熟知してしまった「官僚中心の利権体質」
5.社会保険庁解体論-解体できるか役人天国』
確かに少子化問題は深刻だが、現状はそれ以前の問題というしかない。恐るべし役人天国。
何やかんやと言われつつ、日本の年金制度は崩壊に向け一目散なのである。』(P111-P118)

『さて、ハッカーたちにとって最後の聖域と言われる「住民基本台帳」(通称・住基ネット)のセキュリティは
大丈夫だろうか。なにしろ個人財産が網羅された宝の山である。』(P129)

『バブル崩壊直後の91年でさえ15.1%あった国民貯蓄率は、02年度には半分以下の6.2%まで落ち込んでいる』(P131)

『郵政民営化で、日本の金融機関はさらに混迷し、非常に不安定となる。他方、郵貯自身も完全に安全とはいえない
ことを忘れてはならない。』(P210)

郵政民営化をテーマにしている本