松原聡『超ダイジェスト これならわかる!「郵政民営化」』の読書録

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松原聡『超ダイジェスト これならわかる!「郵政民営化」』

単行本:80ページ
著者:松原聡
出版社:中央経済社
発売日:2005年(平成17年)11月15日初版発行

民営化の疑問・不安に
松原教授が
ズバリ答える!

なぜ民営化なの?
そもそも日本郵政公社とは?
成立した民営化法とは?
民営化後の新会社って?
なぜこれほどもめたの?
民営化してはたしてどうなる?
これでスベテすっきりするの?

目次

序章 小泉総理と郵政民営化

【CHAPTER1】 なぜ民営化か?
1.なぜ民営化か1~官尊民卑のうそ
2.なぜ民営化か2~国営だから赤字!?
3.なぜ民営化か3~民間でもユニバーサルサービス
4.なぜ民営化か4~財投改革は終わっている?

【CHAPTER2】 日本郵政公社とは
1.日本郵政公社とは
2.郵政3事業とは
3.国営であることの保護=民業圧迫、見えない国民負担
4.国営であることの制約
5.成り立たない公社経営

【CHAPTER3】 これが郵政民営化法だ
1.民営化の3つの道
2.持ち株会社下の4事業分割
3.郵貯・簡保完全民営化の意義
4.社会・地域貢献資金

【CHAPTER4】 民営化後にできる5社はこんな会社だ!
1.日本郵政株式会社って?
2.郵政事業株式会社って?
3.郵便局株式会社って?
4.郵便貯金銀行って?
5.郵便保険会社って?
6.郵便貯金・簡保保険管理機構って?

【CHAPTER5】 なぜこれだけもめたのか?
1.なぜ、今郵政事業の民営化なのか?
2.既得権その1=特定郵便局長会
3.既得権その2=労働組合
4.既得権その3=郵政官僚

【CHAPTER6】 民営化の懸念に答えます
1.過疎地の郵便局はなくなる?
2.過疎地の郵貯・簡保はなくなる?
3.サービスは良くなるの?悪くなるの?
4.外資に食い散らかされるって本当?
5.郵貯・簡保が国債を買わなくて大丈夫?
6.株の買い戻しって何?

【CHAPTER7】 民営化のその先へ
1.郵貯・簡保の地域分割を
2.政府系金融機関との統合を
3.郵便の民間参入促進を

[KeyWord]
ユニバーサルサービス
財政投融資
財投債
特殊会社
民営化と完全民営化
郵便認証司
特定郵便局
簡易郵便局

どんな本?

『超ダイジェスト これならわかる!「郵政民営化」』は、
郵政民営化の概要と論点がサラッと理解できる解説本です。

郵政民営化関連の本の中には、論点を取り上げて今後起こりうる問題を深く追求している本も少なくない(それはそれで重要)が、 本書は郵政民営化についてあまり詳しくない人が軽い気持ちで手にとっても郵政民営化について一通りの理解が出来る構成になっており、 郵政民営化について知りたいならば、まず最初に読んでおきたい本だといえます。

見所

本書の見所は、第5章の「なぜこれだけもめたのか?」の『既得権』の箇所です。(個人的判断)
既得権を持つ「特定郵便局長(会)」「労働組合」「郵政官僚」の存在を知ると、
郵政民営化について誰がどこを向いて抵抗しているかということがよく理解できます。

※しかし、どこを向いて郵政民営化が進められたのかということは??
もう少し外資云々に関する記述が多ければよかったのですが・・・

『超ダイジェスト これならわかる!「郵政民営化」』の読書録

著者も参加していた1995年の「郵政民営化研究会」(会長:小泉純一郎総理)のメンバーは、
のちの民主党代表の前原誠司氏、のちの神奈川県知事の中田宏氏など超党派国会議員のそうそうたる顔ぶれ。(P8)

郵貯・簡保に集められた資金330兆円は、国債、財投債、地方債などに流れ、政府、自治体の借金を支え、特殊法人・独立行政法人の存在を支えることにもなってしまっていた。(P27)

民営化の優先順位は「電電公社→NTT(1985年)」「専売公社→JT(1987年)」「国鉄→JR(1987年)」 よりも高いはずの郵政事業。政治力(政治力の源泉は「特定郵便局長会」「郵政労組」「郵政官僚」)を背景とした抵抗のため、民営化が見送られていた。(P51~P53)

特定郵便局・・・明治時代、国家財政負担軽減のために、民間人や民間の建物を郵便局として利用するための制度。(P53)

特定郵便局長・・・上記提供の見返りに、国家公務員の身分が与えられる。一般の国家公務員試験の合格率が10%以下(Ⅱ種)にもかかわらず、特定郵便局長の採用試験の合格率は 90%以上で、いわば「裏口公務員」といえる。(P54)

特定郵便局長のOB組織「大樹の会」は自由民主党の強力な集票マシンとして機能。(現職の国家公務員は選挙活動に制約。) 既得権を守るために自由民主党に郵政民営化反対の圧力をかけ続けてきた。(P55)

郵政事業の労働組合であるJPU(日本郵政公社労働組合)は連合の中核的組織として労働界全般に大きな影響力を持つ。選挙などを通じて、民主党に強い影響力を持つ(P56)

郵貯や簡保は2017年に完全民営化。
国債売買の判断が自由に行えるようになることで、大量の国債放出の可能性もある。
そうなれば、国際価格暴落、長期金利急上昇、経済に急ブレーキという事態もありうる。(P68)

郵政民営化をテーマにしている本