金持ちを優遇して、貧乏人にツケを回す社会がやってくる 山崎養世・荒井広幸『だまされるな郵政民営化』の読書録

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山崎養世・荒井広幸『だまされるな郵政民営化』

単行本:139ページ
著者:山崎 養世荒井 広幸
出版社:新風舎
発売日:2005年(平成17年)8月5日初版第1刷発行

このままじゃ日本が破綻する
異色の二人が立ち上がった

・特殊法人の無駄遣いは放置したままツケは国民へ
・ますますハンディが広がる日本の田舎
・いつでも誰でもの機会平等の社会から、お金持ちが優遇される社会へ
・官でも民でもない第三の道がある!

郵貯と簡保資金を国家財政の穴埋めに使い、
金融・財政政策の失敗のツケを庶民に負わせた上、
簡保を「生保」にして、外資への生け贄とするのか!

目次

はじめに
金融・財政政策の失敗のツケをまわされ、永田町の権力闘争の道具にされた郵政問題

ここがおかしい!郵政民営化

誰でもが全国どこでも公平に加入できる「機会の平等」が破られる、国民益を守る闘いだ
-自民党 参議院議員 荒井広幸
郵貯という成功モデルを発展させずに、何故銀行という破綻したビジネスモデルに替えるのか?
-元ゴールドマン・サックス投信株式会社社長 山崎養世

激論 日本を破綻に導く郵政民営化

郵貯と簡保資金を国の財政の穴埋めに使い金融・財政政策の失敗のツケを庶民に負わせた上
簡保を「生保」にして、外資の生贄とするのか
-コーディネーター 八木澤徹

郵政民営化関連法案が衆院本会議で可決-今後はどうなる?

資料

Ⅰ 荒井広幸の提案・国営民活という真の郵政改革をめざして
Ⅱ 山崎養世の提案・衆議院郵政民営化に関する特別委員会参考人陳述資料
小泉郵政改革への対案

どんな本?

この『だまされるな郵政民営化』は、郵政民営化の裏にあるデメリット・問題点をつまびらかに解説し、
今のような郵政民営化ではない、第三の道を提言している本です。

形式としては郵政民営化における山崎養世氏&荒井広幸氏の問題意識&改善案の対談を、八木澤徹氏コーディネーターの元で取りまとめているのですが、 プロ同士の対談ということで、読んでいて難しく感じる箇所も少なくありませんでした。(やや苦痛・・・)

また、荒井広幸氏については「郵政民営化のここが問題だ」とう類の記述は、詳細で満足度は高いのですが、
「ではどうしたらよいのか」という『提案』の部分はいまいち印象が薄いような・・・
一方で、山崎養世氏の『証券化』の提案はわかりやすく、明るい前途を感じさせる内容でした。

※P139より

【現状】

郵貯資金(民)→財投国債(財務省)→特殊法人等(官)

【改革後】

郵貯資金(民)→証券化→住宅ローン借入れ、中小企業、農業従事者、環境振興、ベンチャー起業家など

郵政民営化について詳しくない方でしたら、松原聡『超ダイジェスト これならわかる!「郵政民営化」』など、 簡単に郵政民営化知識が身に付く本を事前に読み、一通りの理解のあとで本書を読むことをおすすめします。

『だまされるな郵政民営化』の読書録

P99~P101の中で、郵政民営化の本質的な問題と思われる非常に印象的な記述がありました。
ここで一部抜粋させて頂ます。

1960年代から日本の金融に係わり、国連で国民貯蓄銀行プロジェクトを推進してきた
マークシャー元国連上席調査員の話として、
『・・・(略)郵便局が集めた郵貯・簡保資金が財政投融資資金として道路公団など無駄な公共投資に使われてきたことについては、 「資金運用は財務省の管轄。財務省を改革すればいい。官邸の動きには恣意的なものを感じる」とし、小泉・竹中改革路線を非難した。 また、在日米国商工会議所(ACCJ)や米生命保険協会(ACLI)が郵貯・簡保の民営化を求めていることについては、 「自分のところに資金が流れてくるのを期待している」と指摘。』

本書冒頭部では、郵政民営化法案はアメリカの要求どおりとの記述があり、実際に「米国政府対日要求」と 「郵政民営化法案」の本書記載の対比をみると、まさにその意を汲み取ったものとなっています。
私たち国民が本当のことを知ることができるのは、10年、20年後になるのかもしれませんが、果たして・・・

郵政民営化をテーマにしている本