私たちの年金はいったいどこへ!? 長妻昭『「消えた年金」を追って』の読書録

厚生年金・国民年金増額対策室年金読書録(年金、年金生活、社会保障関連の本) > 長妻昭『「消えた年金」を追って』の読書録

厚生年金・国民年金増額対策室

長妻昭『「消えた年金」を追って』

単行本:257ページ
著者:長妻昭
出版社:リヨン社
発売日:2007年(平成19年)10月19日

目次

はじめに

第1部 「消えた年金」を追って

【第1節】 年金被害者にならないためには
8人に1人、被害の広がり
3つの被害者
年金がもらえるか否か
知らずに少ない受給額を
相談員によってもよそあしが
「あなたの記録はありません」と言われたら
文書での回答を要求しよう
官尊民卑の発想

【第2節】 問題追及の経緯
カラオケ、ゴルフ、チケット代まで・・・
統合しても問題は解決しない
議員を飼い慣らす官僚
65歳以上の未統合記録は2300万件
官の主張を取り入れるマスコミ
安倍前総理は「不安をあおるな」と
悠長な姿勢では間に合わない
なぜ問題の本質を見きわめようとしないのか
時間切れを狙う答弁
社会保険庁は火消しに躍起
「対策は不要」という説明
問答無用の強行採決
内閣支持率が急落しなければ
「批判=攻撃=反撃すべきもの」という発想

【第3節】 問題の原因と解決策を探る
5種類の問題記録と隠蔽
コンピューターに入力されていない記録
ずさんな事務処理の実態
受給者にはチェックなし
何人の記録が統合されたのかも非公開
漢字をあてずっぽうで読んでカナ入力
企業に問題があったケースも
紙台帳で発見される可能性
国民年金の記録が消えた235人
消えた記録の原因
領収書がない厚生年金の被害は深刻
まだ隠している重要なデータ
サンプル調査の重大な問題点
実態解明なくして・・・

【第4節】 年金の信頼を取り戻すために
信頼を回復させる3つのプロセス
消えた年金の解決策
[1] 徹底した実態解明
[2] 徹底した責任追及
1.発生責任
問題は50年前にさかのぼる
「年金を払ってあげるのだから」
廃棄は正当だったのか
ハンコを押し続けた幹部の罪
自浄能力がない政治と官の関係
官僚をコントロールできない政治
憲法15条を盾に大臣の指示に従わない官僚
2.不作為責任
3.実態隠蔽責任
[3] 抜本的解決策の提示と実行
重要なのは受け付け体制の整備
1年以内に紙台帳と照合させるには
保険料が無効になることを知っていながら
銀行と同じような通帳を発行していれば
巨額のコンピューターシステム
将来の社会保険庁のあるべき姿
天下り団体に食いものにされるのは
巨大なムダを生み出すシステム
取るだけ取って、払い渋る

第2部 「消えた年金」の問題の本質と核心に迫るQ&A

長妻昭 VS. 政府・社会保険庁 第1ラウンド
長妻昭 VS. 政府・社会保険庁 第2ラウンド
長妻昭 VS. 政府・社会保険庁 第3ラウンド

あとがき

『「消えた年金」を追って』の読書録

※読書録記載…2009年9月17日

2009年9月16日、長妻昭議員は厚生労働大臣となった。
本書はその2年前の2007年(平成19年)秋に出版されたもので、
「消えた年金」に関して『野党』民主党の一員として政府を追及する側の立場で書かれている。

本書前半部は、消えた年金についての原因、責任の所在、政府の対応などが書かれており、
後半部は社会保険事務所等に保管されている「紙台帳保管リスト」と
国会における「消えた年金」の質問・回答がQ&Aで掲載されている。

興味深いのは「政権交代」という言葉が使われている所で、
すでに政権交代後の改革意欲を覗かせる。

●『「野党が、感度の鈍い政府・与党に圧力を加えて、対策を進めさせる」という手法では限界があります。今こそ、政権交代が必要です。』(P6)
●『政府が情報開示を拒み続けるのであれば、政権交代をして私たち民主党が政府の中に入っていかなければなりません。』(P111)
●『私は、局長以上約百三十人を政権党や大臣が任命する「政治任用大臣」を政権交代直後に成立させるべきと考えます。』(P121)
●『真の年金改革を達成するためには、政権交代が不可欠です。しかし、政権交代が実現していない現在でも野党議員として果たす役割は数多くあります。これからもコツコツ 調査・改善をしていきたいと考えています。』(P145)

徹底した実態解明

「消えた年金」問題により落ちた信頼を取り戻すためには3つのプロセスが必要だとしている。(P102~)

そのうちの1.徹底した実態解明は次の通り。
(リンクは弊所サイト内関連ページ)

●消えた記録の実態・・・被害者は何人?いつどこで記録が消えた?など
●5000万件の実態・・・5000万件の保険料総額や内訳
特例納付の実態
脱退手当金の実態
●不在者デッチ上げの実態・・・国民年金納付率向上のために行われた不正免除
●障害年金の実態
●年金の申請漏れの実態
標準報酬月額入力ミスの実態
厚生年金基金未払いの実態
●保険料払いすぎの実態
●期限切れ納付の実態・・・国民年金の保険料
●受給死亡停止の実態

果たしてどんな情報が出てくるのだろうか・・・
なお、「2.徹底した責任追及」の責任には、
「発生責任」「不作為責任」「実態隠蔽責任」の3つがあるとしてそれぞれ解説してあり、
「3.抜本的解決策の提示と実行」は緊急にすべきことから年金制度改革まで策が解説してある。

関連・・・『消えた年金問題』『請求もれ年金』をテーマにしている本