「消えた年金問題」で、国民年金の年金記録の消失事例が目立つ「年金の特例納付」。1970年~1980年の間において「無年金」を減らすことを目的として計3回行われました。その特例納付の行われた時期と、納付金額が平成19年7月2日、明らかになりました。
特例納付の時期、件数、納付額
国民年金保険料の未納分の後払い、「特例納付」が行われた時期と件数、納付額は次の通りです。
- 1:1970年7月~1972年6月=約219万件(約172億円)
- 2:1974年1月~1975年12月=約280万件(約628億円)
- 3:1978年7月~1980年6月=約229万件(約1675億円)
なお、特例納付保険料は、第1回目が月額450円。第2回目が月額900円。第3回目が月額4,000円となっています。(平成16年財政再計算結果資料より)
特例納付についての雑誌等のコメント
年金記録が消えてしまう事例が比較的多いとされる特例納付による保険料の納入ですが、その背景の一つとして、社保庁職員の怠慢が上げられています。
雑誌や新聞等で報じていたインタビューの中から、特例納付に関するものを一部ご紹介いたします。
「(さかのぼって国民年金保険料を納められた過去3回の特例納付の年金記録について)この納付記録は、いっさい社会保険庁のコンピュータに入力されてこなかった~(社会保険業務センター職員)」
「(特例納付記録をコンピュータに入力してこなかった理由として)本当のところを言えば、作業が面倒だったからです~(社会保険庁OB)」
「(それを受け、現在の社会保険事務所窓口について)~しかし、いま窓口に座っている若い職員は、特例納付の記録が倉庫に眠っていることすら知らない。パソコンの画面だけで申請を処理しようとすることが多いのです。(社会保険庁OB)」
「(国民年金の特例納付の保険料受付は、金融機関、郵便局、社会保険事務所だけのはずだが、そのことについて)保険料を市町村の方に納めたケースが多々ありました。市町村では仮領収書を本人に渡していったんそこで領収してしまう。そのお金が時によってはどこかに行ってしまうケースもありました。~私は着服とは言わないです。しかし、仮領収書をきった市町村から社会保険事務所に(保険料が)バトンタッチされていないとしか考えられない。~被保険者は市町村から預かりましたという仮領収書が行くだけで、自分は(保険料を)納めたという気持ちになっていたというわけなんですね。自分が年金を請求するときになって、やっと(未納が)わかる状態なんです。~(全体では)かなりの数になるのではないかと思います。私のところ(社会保険事務所)でも、何件かあったわけですから、それが300前後の事務所でいけば、(全体では)相当な数になると思う。(元社保庁職員)」
それでももう一度特例納付はやって欲しいです
特例納付自体は悪者ではありません。
受給資格(原則25年)というものがあるために、無年金となる、または保険料が掛け捨てになる。人それぞれ事情がありますから、保険料を納めたくても納められなかった人も大勢いるはずです。
「免除がある」とは言っても、免除の枠に入らずに苦しむ人、例えば今でも30歳以上でニート、フリーター、または脱サラして収入がない人の場合、一定の収入のある親と同居している限り、免除も若年者猶予も使えずに、単に未納者となってしまいます。
また、そうした例だけではなく大量の年金もれが判明した今、客観的な証明が何もできず、消えた年金のせいでわずか数ヶ月の年金期間によって無年金となる人。今のままでは救いようがありません。
極めて理不尽、不条理でも、特例納付のようなしくみによって空白になっている年金期間を穴埋めするしかないのが、こうした人たちの現実ではないでしょうか。
申立てと特例納付期間
消えた年金記録の対策として「第3者委員会への申立て」ができましたが、もしも特例納付によるまとめ払いで消えた年金記録が発生してしまった場合には注意が必要です。
といいますのも、まとめ払いした期間を言い間違えたり、記憶違いをしていると、「納めた」ものとして認められない恐れがあるからです。
本当に納めたのに、最後の詰めで「不合理」と判断されてはたまったものではないですので、まとめ払いをした時期に関して「大体このくらいの時期だった」という記憶しかない方は、正しく特例納付の時期の範囲内で申立てを行ってください。