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2007年06月厚生年金・国民年金情報通 一覧

厚生年金の計算で使う平均標準報酬月額とは?

厚生年金の年金額を計算する時に使用する「平均標準報酬額」と「平均標準報酬月額」ですが、とくに算出がややこしいのが平均標準報酬月額の方です。これは、国が自動的に計算してくれるものなので気にしなければ問題ないのですが、賃金水準も物価水準も違う過去の給料を、どうやって計算しているのか、気になりませんか?

関連:標準報酬月額とは?

「平均標準報酬月額」の計算ルール

厚生年金の年金額を計算する時に、計算の元となるのは勤務実績に応じた給与と厚生年金加入期間です。それを時代ごとの記録を抽出して、一定の計算で現在の価格に評価しなおし、それをさらに平均して「平均標準報酬月額(平成15年3月までの厚生年金期間)」と「平均標準報酬額(平成15年4月からの厚生年金期間)」を算出します。

そして、厚生年金の年金額を出すにはさらに所定の数式で計算して、ようやく厚生年金の年金額が正しく算出されるのです。このようにつらつらと計算の流れを書いておりますが、ここでお話しする平均標準報酬月額ひとつとっても、手作業で計算するとなると本当に大変な作業となります。ですので普通は機械ではじき出された数字をそのまま信用して、最終的な計算だけ社会保険事務所の窓口で説明を受けたり、または、我々がお客様に説明したりするのです。

しかし、お客様の中には、「平均標準報酬月額の計算のどこかでごまかしがあるのではないか?」と思う方もおりまして、私も実際に電卓をたたきながら平均標準報酬月額を計算したことがあります。

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年金支給漏れの時効分25万人950億円

年金の支給漏れを発見たものの、時効として受け取れなかった年金は、該当者が既に判明している部分の推計だけでも25万人950億円(1人あたり約38万円相当)になります。ここでは計算の流れに注目してみました。

この数字が出てきたのは、平成19年5月30日の衆院厚生労働委員会で、柳沢厚生労働相が、社保庁の試算として明らかにしました。

どうやって計算したのか?

過去6年間で、支給漏れ年金の発見にて、実際に年金額を訂正した年金の受給者、約22万人から約1000人をサンプル調査したもので、そのうち約30%の人たちが5年間の時効によって過去の年金を受け取れなかったということです。

そこで、現実に支給漏れがあった6年間22万人を1年あたりの人数に計算すると、22万人÷6で、1年あたり3万7千人が支給漏れにて年金額を訂正する計算となります。

そして、その3万7千人のうち、サンプル調査で出てきた30%を掛けて、さらに平均余命などを掛け合わせるなどすると、時効で受け取れない部分の年金をもっている人たちは、約25万人と推定されるのです。

そこから、時効がなければ本来支給されていた額は、総額約950億円となるわけです。(平均余命をどのように計算したのかは、残念ながらわかりません。)

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厚生年金支給漏れがみつかって年金額が下がる人もいる?

年金記録訂正で『減額』でも受給額減らさぬ方針へ
本人の年金記録が特定できて、かえって年金受給額が減額されるようなケースにおいては「修正なし」とする運用に改められました。(日経新聞報道2008年5月~)

年金の支給漏れ対策は全体的に見れば歓迎すべきことなのですが、厚生年金の支給漏れが見つかったばっかりに、もらえる年金額が少なくなる人も出てくるのです。どういうことかと言いますと・・・

厚生年金支給漏れが見つかって年金額が下がるケース

国民年金の支給漏れが見つかった場合は何も問題はないのですが、厚生年金の支給漏れが見つかった場合には、人によっては、「加給年金」「振替加算」が支給されなくなる恐れがあるのです。

加給年金については、年金に関する雑誌等で度々取り上げられているのでご存知の方も多いかと思いますが、典型的なケースでは夫が厚生年金に20年以上勤めていて、妻が専業主婦の場合に、夫の年金に加給年金(40万円)が支給され、妻が65歳になると加給年金は消えて妻の振替加算として老齢基礎年金の上にくっつく形となります。(振替加算は生年月日により金額が異なります)

参考:弊所加給年金のページ

妻の厚生年金が20年を超えると

例えば加給年金の制度を知っていて、自らの年金記録を正確に把握し、自らの意思で厚生年金の被保険者期間を20年未満に抑えている人は、支給漏れ年金という話は出てこないかと思います。

しかし、支給漏れ年金の調査が実行され、それまで見落としていた(支給漏れで厚生年金期間とカウントされていなかった)厚生年金期間が加算され、妻の厚生年金期間が20年を超えてしまうと加給年金も振替加算もストップしてしまいます。そして、何より懸念されるのは、その受給していたお金の行方です。

問題になりそうです

通常ならば、受け取る権利のない年金を誤って受給していた場合、そのお金は国に返還しなければなりません。しかし、年金の支給漏れの問題との絡みで言えば、非常に複雑です。

自分の知らぬ間に年金の支給漏れが生じていて、「年金の支給漏れが見つかったので加給年金(振替加算)の分年金額が下がります。しかも、今まで受け取っていた分はさかのぼって返して」そんな風に言われて果たして納得できるでしょうか。

または、年金を少しでも取り戻そうと、自ら頑張って支給漏れを発見したところ、年金額ダウン。該当する人はそう多くはないとは思いますが、とは言っても年金のしくみ上ありえる話ですので、これからそういう話も出てくることと思います。

※2008年1月9日の産経新聞に、宙に浮いた年金が統合されることによる年金額ダウンのケースについて、これを受け入れなければいけないのかどうかということに関する記事が掲載されておりましたので一部引用させて頂きます。

『この件について、各地の社会保険事務所の対応が統一されていないのも問題になりそうだ。年金減額を説明された女性は「額が減ると聞いて、『それなら訂正しないで』と言ったら、『記録漏れが分かった以上、元に戻すことはできない』と言われた」と話す。一方、社会保険庁は「本人の了解や納得が得られなければ、無理に記録訂正はできない」として、記録をそのままにすることを否定していない。(原文まま)』

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支給漏れ年金騒動最中、国民年金徴収作業はしっかりと

6月初頭、わが家に社会保険事務所の国民年金徴収員が、保険料の催促に訪れました。私もよくないのですが、保険料をまとめて払うというスタイルのため時々徴収員が訪れます。しかし、支給漏れ年金がこれだけ問題になっているこの時期に徴収作業とは少し驚きました。

国民年金支払い、私のいけない告白

私は自営業なので国民年金に加入しています。
口座振替を勧められることもありますが、現金払いによって保険料を払う実感を確かめ続けたいとの思いから、ずっと納付書による現金払いです。

しかし、私はあまり計画性があるほうではありませんので、ちょくちょく保険料の存在を忘れ、数ヶ月保険料の支払いが滞ることがあるのです。

そのため私のところには、社会保険事務所の国民年金保険料徴収員がそのたびに催促に訪れ、数日後に現金を用意して支払いを済ませます。まるで目覚まし時計に促されているようで、後ろめたさもありますので「毎度すみません・・・」と心の中で反省しています。

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国民年金保険料の納付率の低下

年金の支給漏れの問題の影響で、国民年金の納付率がますます低下しそうだと日経新聞(2007年6月10日)が報じています。若い人かますます国民年金の保険料を納めなくなる恐れが。

最近の国民年金の納付率は?

最近の国民年金の納付率は、2005年が67.1%、2006年が64.2%ということで、国の目標とする80%には程遠いのが現実です。「義務だから」「強制だから」「罰則があるから」というやり方は反発を招くだけですし、安心して保険料を預けられるようでないと、納付率向上はかなり難しいといわざるを得ません。

いくら口先で、「年金記録は消えているわけではない」などと叫んでも、実際にあちらこちらで年金支給漏れの問題が発生している以上、納得できる説明、納得できる回答をしなければ、年金制度が「当てにできない」ものとなってしまいます。

年金受給者の背中を見て、国民年金保険料を納付しています

私のような若い世代の人にとっては、現在の高齢者の暮らしこそが将来の自分の姿です。年金について、どんなに聞こえの良い口上を並べられても、身近にいる高齢者が辛い思いをしていたら意味はありません。

今の高齢者が、もらえるはずの年金がもらえていないのであれば、「若い人たちは基礎年金番号があるから大丈夫だよ」といっても、良くない印象は消えません。そのために、何としてでも支給漏れ年金の問題は全面解決をして欲しいと思います。

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その昔、女性の厚生年金は55歳からの支給でした

旧法の厚生年金では、男性60歳、女性55歳が年金受給開始年齢でした。これから年金をもらう人には関係ないと思いきや、支給漏れ年金が見つかり時効撤廃が成立した時は、関係ないとも言い切れません。

時効撤廃で過去の厚生年金規則が注目に

これを書いている平成19年6月時点では、支給漏れ年金の時効は撤廃されていませんし、いろいろな取扱がどうなるかわかりませんが、場合によっては経過措置と共に無くなっていった厚生年金の規定が生きてくるかもしれません。

例えば年金漏れが見つかり、さかのぼって一時金をもらう時に、何歳から年金が出ていたか、漏れの部分はその前か後か、といったことが計算上関係するようになってくると思われます。知っていないと見逃される恐れが高いだけに、特に年配の方は、過去の年金のルールを知っておくことにはメリットがあるものと思います。

昭和61年4月前の女性の厚生年金

昭和61年4月前の厚生年金、いわゆる旧法の厚生年金ですが、女性の年金支給開始年齢は55歳でした。(男性は昭和29年の改正で60歳引き上げは済んでいます)

そして、昭和61年4月以後の新法の厚生年金からは60歳にするということが決まりました。女性の厚生年金支給開始年齢は、経過措置をもって、生年月日ごとに60歳引き上げが実施されたのです。

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厚生年金受給は65歳までは1年以上、65歳からは1月以上

わずかしか会社員・OLをやっていなかった人は、要件を満たせば60歳からちょっとだけ厚生年金が支給されます。ただし、65歳までの厚生年金(特別支給の老齢厚生年金と言います)は、1年以上厚生年金の加入期間がなければ支給されません。

すずめの涙の厚生年金

60歳になると、年齢的には厚生年金が支給されます。ただし、1年以上は厚生年金に加入していなければ、65歳まで年金はもらえません。11ヶ月でもダメです。12ヶ月以上厚生年金に入っている人だけが65歳まで厚生年金をもらえます。

しかし、今年金をもらう人は60歳からしばらくは報酬比例部分だけの年金の受給となりますので、1年の厚生年金期間しかない人ならば、年間で1万5千円、2万円、2万5千円といった、微々たる金額の年金受給となります。

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65歳までの厚生年金で優遇される人

男性なら昭和36年4月1日以前生まれ人、女性なら昭和41年4月1日以前生まれの人で、65歳までに厚生年金の受給資格ができた人は、一定の要件に合えば、定額部分・報酬比例部分のWで年金を受給することができます。

65歳までの厚生年金で優遇される人

65歳までの厚生年金は、現在経過的になくなる運命にあります。

最初は報酬比例部分の年金が支給され、途中からダブルの年金が支給される昭和16年4月2日~昭和24年4月1日以前生まれの男性(女性はすべて5年遅れ)。最初から最後まで報酬比例部分の年金しかもらえない昭和24年4月2日~昭和28年4月1日の男性。そして報酬比例部分の年金だけしかもらえないのに、それすら支給開始年齢が遅れていく28年4月2日~36年4月1日生まれの男性。

しかし、一定要件の障害者、厚生年金の長期加入者、元船員・坑内員の人などは、通常は報酬比例部分しか支給されない厚生年金の期間においても、定額部分も含めてダブルで受給することができるのです。

障害者の特例

前提は、65歳未満の老齢厚生年金の受給権者であることです。(原則25年の年金加入期間、短縮措置も使用可)

その上で、次のいずれにも該当するものは、生年月日に応じ、60歳ないしは64歳に達した時から「特別支給の老齢厚生年金(定額部分・報酬比例部分両方)」の支給を請求することができるのです。

  1. 昭和16年4月1日(女性は昭和21年4月2日)以後生まれ
  2. 厚生年金保険の被保険者ではない
  3. 傷病により障害等級に該当する程度の障害状態にある(傷病が治らない場合にあっては、その傷病にかかる初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日以後において、その傷病により障害状態にある)

1は、これ以前に生まれた人はもとより定額部分も含めたダブルでの厚生年金を60歳から支給できますので特例は必要のない人たちです。2は、働けない状態を想定していますので、会社員など厚生年金の被保険者であるときは、この特例は使えません。ただ、あくまで厚生年金の被保険者でなければいい訳で、厚生年金の適用のない事業所で働くことや、請負やパートなどで働くなど、厚生年金の適用のない働き方であれば特例を使えます。3は、厚生年金の障害等級の1~3級です。カッコ内は、事後重症のことで、厚生年金の加入期間等にあるケガ・病気に起因して障害となる場合です。

※注意…この障害者の特例は「請求」が要件です。これによって定額部分と報酬比例部分がパックで支給されるようになります。なお年金額の改定は、請求があった月の翌月からとなります。

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厚生年金が順調に増えなくなる分岐点(定額部分の限度)

厚生年金(老齢厚生年金)は、加入すればするだけ増えるものです。しかし、厚生年金の定額部分の計算には生年月日に応じて一定の限度が決められていますので、厚生年金の長期加入者は少し注意しておいた方がよいかもしれません。

厚生年金定額部分の限度

65歳未満の厚生年金には定額部分である1階部分(国民年金の老齢基礎年金に相当)と、報酬比例部分の2階部分があります。定額部分は働いた期間のみによって年金額が決定し、報酬比例部分は働いた期間に加えて、その他人それぞれの報酬額の多寡によって年金額にも影響してきます。

そして、この定額部分の方は、生年月日によって次のように被保険者期間の上限が定められているのです。(平成17年4月1日施行)

  • 昭和4年4月1日以前生まれ=420月
  • 昭和4年4月2日~昭和9年4月1日生まれ=432月
  • 昭和9年4月2日~昭和19年4月1日生まれ=444月
  • 昭和19年4月2日~昭和20年4月1日生まれ=456月
  • 昭和20年4月2日~昭和21年4月1日生まれ=468月
  • 昭和21年4月2日以後生まれ=480月

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厚生年金定額部分(1階部分)の計算の1,676円とは?

65歳未満の老齢厚生年金の年金額の計算において、定額部分(1階部分)で出てくる1,676円とはどういう数字なのか、ご存知ですか?

厚生年金定額部分の計算式

65歳未満の老齢厚生年金の定額部分の計算は、次の式に則って計算されます。

厚生年金の定額部分=1,676円×被保険者期間の月数×物価スライド率

つまり、定額部分に関しては現役時代の報酬額は関係なく、厚生年金の加入期間の長さだけによって年金額が決まります。多少の誤差はありますが、65歳以降の1階部分、老齢基礎年金と同様の考え方です。

1,676円の秘密

計算の途中で出てくる1,676円とはどういうものか。
これは、厚生年金の加入期間1ヶ月あたりの、老齢厚生年金(定額部分)の年金額の増加分に相当しますが、その数字のヒントは、老齢基礎年金の満額の金額から紐解くことができます。

【平成19年度の物価スライド数値0.985】

この0.985は、平成15年度から平成19年度の前年物価下落率合計値です。(-0.9%,-0.3%,0%,-0.3%, 0.3%※合計すると-1.2となりますが、過去の物価特例措置との絡みで-1.5%となります)

1,676円×被保険者期間の月数×物価スライド率
=1,676円×被保険者期間の月数×0.985
ここで、老齢基礎年金が40年で満額になるので、
被保険者期間に40年(480月)を入れてみると、
=1,676円×480×0.985=804,480円×0.985≒792,400円

ほぼ平成19年度の老齢基礎年金の満額(792,100円)と同じ金額です。つまり、1,676円という数字が、ほぼ老齢基礎年金の1ヶ月単価と同じだということです。若干厚生年金の単価のほうが高いので、その分は65歳以降に「経過的加算」として厚生年金の方で加算されます。

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老齢厚生年金・雇用保険の支給調整と事後清算

老齢厚生年金をもらえる人が、雇用保険の基本手当を受給した場合、たとえ1日でもその月は老齢厚生年金が支給停止になります。すると、同じ日数分の基本手当ての受給でも、厚生年金の支給停止月数が異なるという不合理が起きますが、それを修正するのが事後清算です。

事後清算の概略説明

例えばAさんとBさん。3月に退社して4月から雇用保険の基本手当を受給を開始しましたが、Aさんは毎月30日分の基本手当てを2ヶ月受け取り、Bさんは毎月15日分の基本手当てを受け取っていたとします。

Bさんの場合、日数ベースで考えると30日=1ヶ月分しか基本手当てをもらっていませんが、支給停止はAさんと同じ2ヶ月…不合理。

そこで、事後清算により支給停止2ヶ月から実質支給1か月分を差し引いて、あとから1か月分の年金支給停止を解除という流れになるのです。

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遺族厚生年金

遺族基礎年金とは違い、子供であることや、子供のある妻に限定していない遺族厚生年金の受給要件。そういう点ではいずれ受給する可能性が高く、どうしたらもらえるのか?ということは知っておいたほうがよいかもしれません。

遺族厚生年金の支給要件

遺族厚生年金の支給要件は、大きく分けると亡くなった方がどういう方かということと、遺族がどのような立場に人かということに分けられます。

亡くなった人の要件

遺族厚生年金の支給要件は、短期要件と長期要件とに分けられます。前者のイメージは、厚生年金に加入して間もない方の死亡、後者はその逆に年金をもらえるくらい長く厚生年金に加入していた方の死亡です。短期要件か長期要件かによって、年金額の計算は異なるものとなります。

【 短期要件 】

  1. 厚生年金の被保険者が死亡した時(現役)
  2. 厚生年金の被保険者であった者が、被保険者の資格喪失後に被保険者であった間に初診日がある傷病により、その初診日から起算して5年を経過する日前に死亡した時
  3. 障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき

【 長期要件 】

  1. 老齢厚生年金の受給権者または、受給資格期間を満たしている者が死亡した時

※老齢厚生年金の受給資格があるということは、イコール老齢基礎年金の受給要件を満たしているということになりますので、保険料納付済期間と合算対象期間を合わせて原則25年以上(短縮特例あり)あるということになります。

短期要件1と2の場合の保険料納付要件

短期要件で遺族厚生年金を受給する場合には、一定の期間保険料の未納がないことなど、保険料の納付に関して一定の条件が決められております。(保険料納付要件と言います)

【 保険料納付要件の原則 】

死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、当該被保険者期間にかかる保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上を満たしていること。

【 保険料納付要件の特例 】

死亡日が平成28年3月31日以前で遺族厚生年金を支給する場合は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前々月までの1年間(死亡日に国民年金の被保険者でなかった者は、死亡日の属する月の前々月以前の直近の国民年金の被保険者期間にかかる月までの1年間)のうちに保険料納付済期間と保険料免除期間以外の国民年金の被保険者期間(つまり保険料滞納期間)がなければ保険料納付要件は満たされる。ただし、当該死亡に掛かるものが死亡日において65歳以上である時を除く。

遺族厚生年金を受け取れる遺族の範囲

遺族厚生年金を受けることができる遺族の範囲は、死亡した被保険者または被保険者であった者の死亡の当時、その者により「生計を維持」されていたもので、死亡したものの「配偶者、子、父母、孫、祖父母(兄弟姉妹は入りません)」で、妻以外には年齢等の条件があります。

生計を維持していたものとは、被保険者等の死亡の当時、その者と生計を同じくしていたものであって、年間850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものを言います。

なお、妻は生計維持のみが要件で、16歳でも65歳でも80歳でも要件を満たします。(30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は、5年間の有期給付)

遺族の年齢等の条件

【 妻 】

年齢要件なし。(30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は、5年間の有期給付)障害要件不要。苗字が違っていてもOK。
事実上婚姻関係と同様の事情にある者(内縁関係にある者)も含む。

【 子・孫 】

死亡の当時、18歳に達する日以後の最後の3月31日までの間にあるか、または20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にあり、がつ、現に婚姻をしていないこと。

被保険者または被保険者であった者の死亡の当時、胎児であった子が出生した時は、将来に向かって、その子は被保険者または被保険者であった者の死亡の当時、そのものによって生計をいじしていた子供とみなされ、遺族の範囲に含まれる。

【 夫・父母・祖父母(義父母は入らず) 】

死亡の当時55歳以上であること。ただし、60歳になるまでは支給停止。
(今はあまり関係ありませんが、平成8年4月1日前に被保険者等が死亡していた場合には、障害等級1級または2級に該当する障害の状態にあること。)

遺族厚生年金を受給する遺族の順位

  1. 配偶者、子
  2. 父母
  3. 祖父母

【 妻と子が同順位の時 】

子に対する遺族厚生年金は、妻が遺族厚生年金の受給権を有する期間、支給停止されます。

例外として、妻が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有さず、子が当該遺族基礎年金の受給権を有する時は、妻に対する遺族厚生年金は支給停止され、子に遺族厚生年金が支給されます。

例えば、死亡した夫と妻が同居して暮らし、子は祖母と暮らしていたケースの場合、夫が亡くなると妻は「生計を同一にする子のない妻」となって遺族基礎年金の受給要件を満たしませんので、子供に遺族基礎年金が支給されます。そのような場合は遺族厚生年金も子供に支給されるということです。

【 夫と子が同順位の時 】

夫に対する遺族厚生年金は、子が遺族厚生年金の受給権を有する期間、支給停止されます。

【 最先順位の者だけが受給権者 】

上記同順位の場合は複数が受給権者となりますが、基本的に遺族厚生年金を実際に受給することができるのは最先順位者のみで、その受給権は転給(上位順位者の受給権が消滅し、下位の者に受給権が転がってくること。例えば労災がそのしくみです)することはありません。

遺族厚生年金を受け取ることができる遺族とならない場合とは、「父母ならば、配偶者と子」が、「孫ならば、配偶者と子、または父母」が、「祖父母ならば、配偶者と子、父母、または孫」がそれぞれ受給権を取得した場合です。

また、父母、孫、祖父母の有する遺族厚生年金の受給権は、被保険者または被保険者であった者の死亡の当時胎児であった子が出生した時は消滅します。

例えば、収入がかなり多く、亡くなった夫に生計維持されていないような妻が子供を産むケースで、父母に行っていた遺族厚生年金の受給権が、妻が子を産むことによって、子供が遺族厚生年金の受給権を有することになりますので、父母の受給権は消滅(失権)することになるのです。

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脱退手当金とは?(厚生年金)

かつて短期間で会社を辞める女性社員が、厚生年金の脱退手当金を受け取るケースが多かったのですが、今は少しの厚生年金加入期間でも年金に反映されますので、脱退手当金は必要なくなりました。脱退手当金をもらった昭和61年4月までの分は、合算対象期間に反映されます。

脱退手当金と合算対象期間

脱退手当金を受け取った部分にかかる厚生年金の被保険者期間、昭和36年4月1日~昭和61年3月31日までの分は合算対象期間となります。

年金をもらうために必要な受給資格期間の25年(原則)に、脱退手当金の対象となった厚生年金の加入期間が算入されますので、「無年金」を防止するにはこの脱退手当金の対象となった期間が一役買うことになります。(ただし年金額には反映されず。)

廃止された脱退手当金

脱退手当金は、昭和60年改正によって廃止されました。
ただし、昭和16年4月1日以前に生まれた者には支給するということになりました。なぜならこの方々は昭和61年4月1日(昭和60年改正法施行日)に45歳以上で、このときから厚生年金の加入期間である65歳(当時)までは20年未満のため、若い世代に比べて厚生年金加入期間が掛け捨てになってしまう可能性が高かったからです。

昭和16年4月1日以前に生まれの人たちは、その後の状況次第で脱退手当金の道を残すことで、掛け捨て防止の道も残したということになります。

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年金の時効は2年と5年

年金支給漏れの騒動の中で注目された時効の問題。基本は、払う方が「2年」、もらう方が「5年」ですが、一時金などではそうでもないことも。ここでは条文に則って、国民年金と厚生年金の時効を見てみます。

国民年金の時効

国民年金の時効は、国民年金法102条に記してあります。

  1. 年金給付を受ける権利は、その支給事由が生じた日から5年を経過したときは、時効によって消滅する。
  2. (1)の時効は、当該年金給付がその全額につき支給を停止されている間は、進行しない。
  3. 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する。
  4. 保険料その他この法律に規定する徴収金についての督促は、時効中断の効力を有する。

【 時効の年数と起算日 】

  • 年金給付を受ける権利(5年)…起算日は年金給付の支給事由が生じた日の翌日
  • 死亡一時金を受ける権利(2年)…起算日は死亡の日の翌日
  • 保険料・徴収金を徴収する権利(2年)…起算日は納期限の翌日
  • 保険料・徴収金の還付を受ける権利(2年)…起算日は、還付の請求すべき旨の通知が債権者に到達した日の翌日

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こんな人は危ない!年金の支給漏れチェック

年金の支給漏れは、起こりやすい人と起こりにくい人がおります。全員が社会保険事務所で年金加入記録の確認をすることは大前提ですが、注意しなければならない人はどういう人なのでしょうか。

転職・転勤・出向経験の多い方

かつて厚生年金では、会社が変わるとその度ごとに年金番号を発行していたという事実がありました。1つの厚生年金被保険者証で2社、3社の会社の記録が入っていたり、1社しか入っていなかったり、または複数の厚生年金の年金番号を持っているのに同じ会社のものであったり・・・

何も転職だけではなく、転勤によって新たに年金番号が発行されることもありましたし、出向によって年金番号が追加されるということもありました。ですので、自分が勤めていた会社の年金番号があっても、それだえで安心はできないのです。例え短い期間であってもです。

女性の方の結婚前のOL期間

65歳からの厚生年金は、たとえ1ヶ月の勤務歴であっても年金として反映されます。例えば22歳で大学を卒業して23歳で結婚、専業主婦になっても、その間の1年間の厚生年金期間として生きています。

仮にその後国民年金に加入しなかった期間があっても昭和61年3月までは合算対象期間として受給資格期間として通算されますから、さらにその後第3号被保険者となる、または働きに出る、国民年金に任意加入をするなどして年金の受給権を得ることができれば、わずかな厚生年金加入期間であっても、無駄になることはありません。

名前の問題「結婚による姓の変更、間違えやすい名前、偽名等」

結婚等で性が変わった人は、変更前、変更後で別人として年金記録が管理されていることがあります。また、名前の読み方が複数考えられる場合や、難しい漢字の方の場合、違う名前で他人として管理されていることもあります。

もしくは事情により偽名で働いていた人も、年金記録は偽名で登録したもので管理されていることもあることから統合するのは…どうするのでしょう?偽名のケースは実務上経験がありませんが、恐らくは厚生年金被保険者証や年金手帳を保管していれば認められると思いますし、照会作業上、勤めていた会社名と偽名が一致していれば問題ないのではないでしょうか。

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年金相談と依頼状(委任状)[印刷用PDF臨時掲載]

「親の年金記録漏れを調べたい」…このようなとき、社会保険事務所へ持参するものに「依頼状(委任状)」というものがあります。せっかく何時間も待たされて自分の番が来ても、必要な書類がなければ年金相談に応じてもらうことはできません。ここでは依頼状(委任状)の書き方をお伝えしようと思います。

依頼状(委任状)に書く内容

依頼状(委任状)は、特に決められた用紙があるわけではありませんので、A4かB5サイズの紙に必要事項を書いて、年金相談を受けるときに提出すれば足ります。記載内容は次のとおりです。

  • 本人(父親の年金記録を聞きたいのでしたら父親)の年金手帳に記載されている基礎年金番号、または年金証書に記載されている基礎年金番号と年金コード。
  • 本人の住所
  • 氏名
  • 生年月日
  • 依頼内容
  • 本人が来られない理由(多忙等でも可)
  • 依頼される方の住所
  • 依頼される方の氏名
  • 依頼される方の生年月日
  • 本人と依頼される方との関係(友人でも可)
  • 署名押印(本人が本人の印でする)

「依頼内容について」は、細かく書きすぎるとかえってそれ以外のことがやりにくくなりますので、例えば「年金見込額照会回答表や年金記録一覧表など、年金記録の確認のための資料をすべて出し、その詳細を聞き、その場で年金の記録もれが確認できたものについては記録を統合する。」

または、「年金記録漏れ調査にかかる手続一切を委任する」というように、その場で必要な調査・手続が生じたときに動きが取れるように記載するのが良いと思います。

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この3点だけ知っておきたい離婚と年金分割

離婚による年金分割。「これだけは知っておきたい」というポイント3点をご説明いたします。ひょっとしたら、離婚の時期を考え直さなければいけなくなるかもしれません。

(1)離婚の年金分割で、遺族年金の権利はなくなります。

「遺族年金は、子どもがいたり年齢の要件があったり、どうせ私には関係ない」
そんなことはありません。国民年金の遺族基礎年金は受給要件が厳しいのですが、遺族厚生年金は妻が受給対象でしたら、妻の要件は生計維持だけで足ります。

60歳の妻でも、70歳の妻でも、80歳の妻でも、子どもがいなくても、遺族厚生年金の対象になります。年金額にして、夫の厚生年金の報酬比例部分の3/4。そこに65歳未満ならば一定の要件のもと中高齢の寡婦加算(年間約60万円)、65歳を過ぎても経過的寡婦加算として一定額が減額された年金を受け取ることができます。しかも、一生涯。(再婚等をしたら失権)

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熟年結婚は早く、熟年離婚は遅く(加給年金と振替加算)

年金の制度上、熟年結婚するのなら、夫になる予定の人の年金(定額部分)が出る前にするのが得。熟年離婚をするのなら、自分自身に振替加算がつく65歳以降が得になります。

熟年結婚は早目がお得

1回目の結婚でも2回目の結婚でも構いませんが、夫となる結婚予定の方(以後夫とします)の年金次第で、あなたの年金にも影響が出てきます。

というのは加給年金と振替加算の話なのですが、簡単に言えば、夫に対して1階部分に年金が出るときに、妻が65歳未満であれば、夫の年金に40万円もの加給年金が支給されます。そして、妻が65歳になると、今度は加給年金の支給が終わり、妻に対して振替加算が支給されるようになります。

なお、夫の1階部分に年金が出るときに妻が65歳以上のときには、加給年金は支給されませんが、いきなり妻に振替加算が支給されるようになります。

そしてポイントは、夫の1階部分の年金が支給される直前に結婚しても大丈夫だということです。

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死亡間際の入籍でも遺族厚生年金は支給される?

遺族厚生年金の妻に対する支給要件は比較的ハードルが低く、妻の要件としては基本的に生計維持されていれば支給されます。それでは、夫70歳、妻40歳、入籍数ヶ月の妻にも遺族厚生年金は支給される?

たとえ遺族厚生年金目当でも

例えば…男性70歳、パート勤めの女性40歳。お互い独身で趣味サークルで知り合いました。男性は余命半年を告げられています。女性は男性に対して知人以上の感情はありませんでしたが、ふと良からぬことを考え始めました。

「いま入籍したら、遺族厚生年金が私のものに・・・」

女性は年金のことをよく勉強していていたのです。
男性と一緒にいる時間を長くして、次第に男性も自分に良くしてくれる女性に惹かれ始めました。

そして数ヶ月。ついに一緒に暮らし始め、少しでもいいから夫婦として暮らそうと入籍することになりました。そして1ヵ月後、男性は亡くなりました。

女性にとってはまさに予定通り。今後再婚等をしない限り、一生涯遺族厚生年金を受け取ることができるのです。

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離婚時の年金分割と、国の年金財政

離婚時の年金分割制度の背景の一つとして、国の年金財政の問題があります。財政的に言えば、「離婚が増えれば国が助かる」しくみとも言えなくもありません。

離婚時年金分割と遺族年金の関係

離婚をすれば遺族厚生年金の受給権はなくなります。40年50年連れ添った夫婦でも、離婚してしまえば、たとえ1ヵ月後に夫が亡くなったとしても妻に遺族厚生年金は支給されません。

遺族厚生年金は夫の全厚生年金期間の報酬比例部分の4分の3ですが、夫婦とも平均的な寿命まで生きるとすれば、夫が築いてきた年金の多くが、死亡後も妻に支給されることになります。女性のほうが平均寿命が5年くらい長いですから、夫死亡後もそれだけの期間、夫の年金が生きてくることになります。

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中高齢寡婦加算35歳→40歳は、1,500万円の年金カット

今年平成19年(2007年)4月から、厚生年金の中高齢寡婦加算対象年齢が35歳から40歳に引き上げられました。小さな改正と思いきや、金額にすると、とてもインパクトのある改正であることがわかります。

中高齢寡婦加算は1年約60万円の年金

中高齢寡婦加算をごくごく簡単に説明しますと、遺族厚生年金を受け取れる妻に遺族基礎年金の対象となる子供がない場合に、遺族厚生年金に加えて年間約60万円の年金(中高齢寡婦加算)が加算されるというものです。

中高齢寡婦加算は40歳から65歳まで

ここが法律で変わったところですが、従来は35歳になっていれば一応中高齢寡婦加算を受け取れる権利は得る事ができていました。(実際の支給は40歳から)

平成18年度の中高齢寡婦加算の金額は、594,200円(年間)ですから、へたをすると老後の老齢基礎年金くらい大きな金額です。それが、今回の法律改正で40歳からと改められました。

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加給年金の支給停止時期はいつ?(厚20年の話)

妻が厚生年金に原則20年以上加入していると、夫に支給される加給年金(年間約40万円)が支給されなくなります。それでは、支給停止になってしまうのはいつなのでしょうか?1.妻の厚生年金加入が20年(原則)になったとき?2.妻が60歳になったとき(年金の受給権を取得した時)?3.妻の年金に定額部分がついたとき?4.妻が65歳になったとき?

妻の年金受給権発生で、加給年金の支給停止です

答えは2番です。今後65歳未満の年金はなくなっていく運命にありますから、生年月日によっては61歳~64歳で、夫の加給年金が支給停止になります。

妻の厚生年金加入20年についても、中高齢の特例によって生年月日によって15年~19年の厚生年金加入で20年とみなされてしまいますので注意が必要です。(女性は35歳以降の厚生年金加入期間)

  • 昭和22年4月1日以前に生まれた者=15年
  • 昭和22年4月1日から昭和23年4月1日までの間に生まれた者=16年
  • 昭和23年4月1日から昭和24年4月1日までの間に生まれた者=17年
  • 昭和24年4月1日から昭和25年4月1日までの間に生まれた者=18年
  • 昭和25年4月1日から昭和26年4月1日までの間に生まれた者=19年

年金が下がる原因の一つ

妻に対する加給年金は、年間約40万ですから月に直すと3万円程度になります。妻が年金をもらい始め、夫の年金が下がった時は、まずこれを原因と一つとして考えてみてください。

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専業主婦にやさしい離婚時の年金分割

離婚時の年金分割制度は、一番恩恵を受けるのは専業主婦の妻です。逆に、共働きの夫婦は計算をした結果分割が少し、または下手をすれば妻の持ち出しになることもあります。自営業の夫婦の場合はこの制度は関係なし。専業主婦でも婚姻期間が短ければ、年金分割はわずかなものとなります。

家計を支えた献身的な妻、ランチ三昧の妻

たとえば・・・
家族のため、あまり働かない夫のかわりにバリバリ働くAさん。常に自分を犠牲にし、食べるものも質素、オシャレも我慢してきて50歳。子供も独立し、自分の人生を歩もうと離婚することになりました。

Aさんの年金分割は?

Aさんは夫よりも稼いでいたために、年金分割をすると逆に夫に対して年金を与えることになるのです。自分から別れを切り出したために、なかなか分割ゼロという合意は得られず、しぶしぶ年金を別けることになりました。内心くやしくて仕方ありません。

そしてAさんと同級生のBさん。夫は商社マンでBさんは専業主婦(国民年金の第3号被保険者)。趣味はランチめぐりです。夫の稼ぎだけで十分楽しく暮らしていたのですが、事情により離婚することに。

Bさんの年金分割は?

Bさんはずっと専業主婦でしたので計算は簡単です。夫婦の婚姻期間中にある夫の厚生年金(報酬比例部分)を最大半分に別けるだけ。もちろん合意の上でです。

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基礎年金の国庫負担「2分の1」引上げはどうなる?

国民年金(基礎年金)の支給に関しては、平成16年改正によって、「3分の1」から「2人の1」へ引き上げることが決まりました。しかし、あれやこれや財源の確保を検討・準備・一部実施をしているうちに『年金支給漏れ問題』が起こり、予定がもろくも崩れ去る勢いです。時効撤廃も計算外だったでしょうし、支給漏れ件数も想像以上・・・果たして国庫負担2分の1への道のりは険しい?

平成16年年金改正と基礎年金の国庫負担引上げ

平成16年の法律改正では、基礎年金の国庫負担割合を3分の1(2003年で約5.6兆円)から2分の1に引き上げることが決まりました。

そして、具体的な方策や実施時期について法附則で、「2004(平成16)年度から年金課税の見直しによる増収分を財源として国庫負担割合の引上げに着手し、2005(平成17)年度及び2006(平成18)年度に適切な水準へ引き上げた上で、2分の1に引き上げる特定年度については、2007(平成19)年度を目途に所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、2009(平成21)年度までのいずれかの年度を定めるものとする」と定められました。

すでに行っている基礎年金の国庫負担、財源確保対策

基礎年金の国庫負担財源確保として、すでに行っているのは65歳以上の人の公的年金等控除の最低額を140万円から120万円へ引き下げたことと、65歳以上で所得金額が1,000万円以下の人の老年者控除(1人50万円)を廃止したことです。(平成18年度~)

しかし、これによる財源確保の金額は約1,600億円ということで、国庫負担を2分の1に引き上げるのに必要な分、2兆7000億円には程遠い金額となっています。

なお、この必要とする金額は消費税で言うと1%に相当する金額です。

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どうする60歳・65歳の年金と雇用保険(基本手当)?

60歳になって退職すると、年金と雇用保険(基本手当)を、どう手続したらよいのか迷います。雇用保険受給中は年金がストップしてしまいますから、どちらが有利か考えなくてはなりません。では、その基準は?上手な受給方法は?「60歳の退職」と、「65歳前後の退職」に分けて見ていきます。

【 ここから60歳の退職の話 】

年金か雇用保険(基本手当)か

60歳で定年退職(通常の退職も考え方は同じ)した場合、雇用保険の手続と、年金の手続をどのようにしたらよいのでしょうか?

前提は、65歳未満において雇用保険(失業手当)と年金は一緒にもらえないということ。昔の人は両方もらっていたということで、間違いを教えられるかもしれませんが、 残念ながら平成10年4月からは、片方しかもらえない決まりになってしまいました。

年金は老齢で働かない人・働けない人のため、雇用保険は働く意思がある人(現役)のため、 目的が違うからという理由ですが、本当は財政的な理由でしょう。

「雇用保険から基本手当をもらっている間は、年金は支給停止」ですから、年金の方がもらえる金額がかなり多い時には、失業の手続をしてしまうと損をしてしまうかもしれません。

ほとんどの人は、雇用保険(基本手当)の方が有利(金額が多い)

「60歳で定年退職した場合、ハローワーク(公共職業安定所)で失業認定の手続をして、そのあとで年金の手続をする。この方が手続がスムーズ」

このように書かれた本もありますが、ほとんどの場合は年金よりも基本手当てを受け取ったほうが有利ですので、それで間違いはありません。

しかし、現役時代の給与は高給で、不況の影響などで退職前にガクンと給料が下がった人など、こういう人が60歳で定年退職するような場合には、 年金のほうが有利ということもありえます。

ですので、何も考えずにいきなりハローワークで手続を開始するというのはどうなのでしょう。少なくとも会社から届く離職票が手元に来たら、ハローワークに行って基本手当の目安だけを聞き、 その前には、社会保険事務所へ行って年金の見込み額を出すということは必要なことと思います。

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60歳~厚生年金カットなしで高年齢雇用継続給付受給

60歳で定年退職、そして再雇用。給料がガクンと落ちた人には、雇用保険から給付金が支給されます(高年齢雇用継続給付=支給要件あり)。しかも、やり方によっては在職老齢年金のしくみによる厚生年金のカットなしで継続給付が受けられるのです。

高年齢雇用継続給付の概要と厚生年金カット

高年齢雇用継続給付とは、60歳まで働いてきた人が、60歳以降に賃金が75%未満になってしまったときに雇用保険から給付金が支給されるというものです。給付金は、1回限りではなく、60歳から65歳未満において、毎月要件に合う月に、賃金の最大15%(61%未満に低下の場合)が支給されるものです。

例えば60歳の定年退職当時、月収40万円だった人が、再雇用後は20万円となった場合、61%以上の下落ですので20万円の15%、約3万円が雇用保険から毎月支給されます。

ただし、その時厚生年金ももらっている場合には、高年齢雇用継続給付の金額に応じて支給調整されることになっています。上記15%の給付金をもらったときにカット率が最大となり、標準報酬月額の6%の厚生年金がカットされることになります。15%よりも少ない給付金の時は、それに応じた少ない厚生年金カットとなるしくみです。(在職老齢年金とは別の話です)

年金カットされずに雇用保険の継続給付をもらう

結論から言えば、週20時間から30時間の間の時間で働くと、高年齢雇用継続給付をもらいつつ、60歳前半の厚生年金もそのまま受給できます。

まず厚生年金や健康保険ですが、そこで働く正社員の所定労働時間と労働日数の概ね4分の3以上で働く場合に被保険者となります。1ヶ月の所定労働日数が20日の会社であれば、週30時間以上かつ1ヶ月15日以上働く場合に被保険者となるわけです。

そして雇用保険ですが、こちらは週20時間以上働く人が被保険者とされます。

よって、週30時間未満の労働で厚生年金の被保険者から外れつつ、週20時間以上働いて雇用保険の被保険者に入っていれば、高年齢雇用継続給付の対象になりつつ在職老齢年金のしくみから外れ、しかも高年齢雇用継続給付による年金カットの支給調整も行われません。厚生年金の保険料も払う必要がなくなります。

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海外在住者の任意加入なら国民年金協会へ

最近、海外の方から2件続けて任意加入手続きのお問い合わせをいただきました。(平成19年6月現在)海外在住者の方で厚生年金に加入していない方は、年金は任意加入(3号を除く)になりますが、手続きについて国内に協力者がいない場合は『国民年金協会』が海外在住者の方の窓口となっております。

国民年金協会と海外在住者の任意加入手続き

国民年金協会

海外に住む人が国民年金の手続をする時に頼りになるのが国民年金協会です。例えば海外在住者が国民年金に任意加入したくなった場合には、基本的には国内にいる親族に手続をしてもらわなくてはなりませんが、親族が高齢などの理由で手続をすることが困難な場合には、国民年金協会が国民年金の加入手続きと保険料の納付の代行を行ってくれるのです。

代行する時の事務手数料も無料ですので、国内に親族などの協力者がいないときは、国民年金協会のホームページから相談して頂けたらと思います。

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夫に厳しい遺族年金

年金制度は、事実婚の妻を遺族年金の対象にするなど先進的な面がある一方で、古臭い考え方も今の時代までスライドしてきています。その一つが遺族年金の夫と妻の受給要件の違いです。

遺族年金から見た年金の夫婦像

遺族年金は、国民年金が遺族基礎年金、厚生年金が遺族厚生年金ですが、それぞれ受給要件は違えど、根本に流れている基本精神は共通しています。

それは、「夫は一家の大黒柱として家族を養うもの」「妻は専業主婦。夫に守られる存在」ということです。例え話として、夫婦で子供なしのケースと、夫婦と子供一人のケースで遺族年金の受給要件を見てみます。

夫婦と中学生の子供1人。夫が受け取る遺族年金は?

夫婦と中学生の子供1人。体の弱い夫のために妻が働き家計を支えています。そして不幸にも妻が亡くなり夫と子供だけに。さて遺族年金は?

まず、国民年金の遺族基礎年金は子供が受給権を取得しますが、父と同居しているために支給停止です。そして、厚生年金については子供に対して遺族厚生年金の権利が発生します。ただし、18歳までです。

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もらいすぎる配偶者加給年金

法改正により遺族年金の30歳未満有期年金化や、中高齢寡婦加算の年齢要件の引上げなど、厳しい改正が行われる反面、もらいすぎる年金支給も存在します。それは、配偶者加給年金の要件から生じるもらいすぎです。

配偶者加給年金の妻の3つの要件

配偶者加給年金は、夫が20年以上厚生年金に加入したときに、妻が次の3つの要件を満たした場合、年間約40万円が夫に支給されるものです。

  • 厚生年金加入20年未満
  • 65歳未満
  • 年収850万円未満

厚生年金19年、共済年金19年加入でも出る配偶者加給年金

明らかに元公務員の人に有利なしくみなのですが、厚生年金加入20年未満ということであれば、厚生年金19年数ヶ月、共済年金19年数ヶ月加入という条件でも配偶者加給年金は支給されます。

妻が60歳になり、合計39年分の年金をもらえるようになっても、妻が65歳になるまでは、なお40万円の配偶者加給年金が夫に支給されるのです。

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必要?25年ルール(受給資格期間)

支給漏れのせいで年金加入25年に満たない人は、いったいどのくらい存在するのでしょう。そもそも25年ルールは必要?と考えていたところ、「国政モニターの声に対する回答」というものを見つけました。質問者と厚生労働省の回答を少し見ていきます。

「国民年金受給資格年数見直しを」から

全文はこちらをご覧ください。
http://www8.cao.go.jp/monitor/answer/h17/ans1802-005.pdf

質問事項は、
「~そもそも受給資格年数というのはどういう目的で設定されているのか~なぜ25年も必要なのか~受給資格年数の見直しを~」
というもので、その答えがなんとも消化不良なものでした。

回答者の答えの要旨は
「免除や任意加入を利用すれば、25年を満たすことはできますよ。25年未満で年金受給ですと年金額が少なくなってしまいますよ。」そして、「25年未満でもよしとすると未納が増え、世代間扶養が成り立たない。」さらには「年金は損得、見返りではない」という結論に・・・

第13回社会保障審議会年金部会から

平成20年11月27日の社会保障審議会年金部会の「老齢基礎年金の受給資格期間(25年)の見直しについて」の議論の中で年金課長は、受給資格期間の25年について次のように発言しています。

『~この歴史的な背景としては、(略)当時、国民年金制度発足当時、厚生年金が20年としていたこと。あるいは免除制度という形で別途対応がなされていたこと。それから、25年ないと意味ある年金が確保できないという考え方で25年ということになっていったわけでございます。~もともと25年というのは、年金水準の目標の設定に当たって25年という意味を持っていたものが、64年改正で40年フルペンションということに変わった中でも資格期間としては、25年が残っているということでございます。』

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国民年金加入40年。65歳1ヶ月で亡くなったら年金は?

もし65歳1ヶ月で亡くなったら?というお話です。条件は、自営業(国民年金)のみ40年。夫婦子供なし、または子供が18歳到達年度以上。亡くなるのは夫で、やっと老齢基礎年金をもらいはじめたところだとします。

答え:老齢基礎年金1か月分のみです

このケースでは、40年年金を納めてきて、生涯でもらえた年金は約6万円ということになります。実際には支給日前の死亡となりますので、妻が老齢基礎年金の1か月分の未支給年金を請求して終了です。

要件の軽い死亡一時金は?

国民年金加入3年以上であって年金をもらう前に死亡した時に、遺族に死亡一時金が支給されますが、この場合、1ヶ月でも老齢基礎年金をもらえているわけですから死亡一時金の受給権はありません。

死亡一時金は国民年金加入3年以上で12万円、35年以上で32万円ですが、結果的にそれよりも少ない年金しかもらえないということになります。せめて、死亡一時金の金額に満たない額しか年金を受け取っていない場合は、死亡一時金の額くらいは最低保障して欲しいところですが。

遺族基礎年金は当然支給されません

遺族基礎年金は「子供のいる妻」か「子供」にしか支給されませんので、もともと国民年金の加入期間しかない子供がいない夫婦には、遺族基礎年金の受給権は発生しません。

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失業給付3612円以上受給中は、被扶養者になれず

雇用保険の失業給付(基本手当)受給中、その1日分の金額が3612円以上であるときは、国民年金の第3号被保険者や、健康保険の被扶養者となることができません。

被扶養者要件の130万円未満と、基本手当3612円

国民年金の第3号被保険者や、健康保険の被扶養者になるには、60歳未満なら年収130万円未満という決まりがあり、この130万円を見るのは先々の見込みの話です。

そして、雇用保険の基本手当の場合、給付日数は関係なく、基本手当を半年間もらうものとして計算されます。

つまり、基本手当1日分の金額に180日を掛けて、これが65万円(130万円基準の半年分)を超えるかどうかで130万円の収入見込みを算定するのです。

65万円÷180(日)≒3611.111円

これにより、基本手当日額3,611円なら被扶養者要件を満たし、
3612円ならば被扶養者要件を満たさないということになります。

もしも、基本手当の給付日数が90日などでも、このように1日いくら?という計算となります。

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