離婚時の年金分割制度の背景の一つとして、国の年金財政の問題があります。財政的に言えば、「離婚が増えれば国が助かる」しくみとも言えなくもありません。
離婚時年金分割と遺族年金の関係
離婚をすれば遺族厚生年金の受給権はなくなります。40年50年連れ添った夫婦でも、離婚してしまえば、たとえ1ヵ月後に夫が亡くなったとしても妻に遺族厚生年金は支給されません。
遺族厚生年金は夫の全厚生年金期間の報酬比例部分の4分の3ですが、夫婦とも平均的な寿命まで生きるとすれば、夫が築いてきた年金の多くが、死亡後も妻に支給されることになります。女性のほうが平均寿命が5年くらい長いですから、夫死亡後もそれだけの期間、夫の年金が生きてくることになります。
元々離婚を予定していた、という人にとっては朗報ですし、個々の夫婦の寿命の差を考えれば夫婦総額では若干のプラスになることも考えられます。しかし、年金分割制度によって本来離婚しないはずの夫婦が離婚した場合には、夫婦の年金総支給額は大きなマイナスとなります。
年金分割で夫の年金が削られることはもちろん、妻にとっても遺族年金という大きな保障を失うことは痛手です。その分分割されて年金が増えると言っても、あくまで婚姻期間の報酬比例部分の年金の最大半分ですから、そう多くは望めません。
離婚と加給年金・振替加算の関係
年金分割の話とはずれますが、離婚と関連したお話です。
夫婦の年齢にもよりますが、離婚をすることによって加給年金(年間40万円)も支給されなくなります。その上、こちらも条件によりますが、妻に支給される振替加算(生年月日によって異なりますが、昭和20年生まれで10万円超)も受給できなくなってしまいます。
このてんでも離婚が増えれば増えるだけ、国の年金財政の点で言えばプラスになるわけです。ただし、若い人の離婚によって少子化が進んでしまえば働き手が減り、保険料収入が期待できなくなりますのでマイナスです。今回の話はあくまで熟年離婚の話です。