・年金保険料の納付の時効は2年間
・年金保険料を原則25年以上納めていない人は1円も年金を受け取れない
この2つは、法律で定められた年金の基本的なルールです。
年金保険料を1ヶ月しか納めていない人も、24年11ヶ月まで頑張って納めた人も同様に老後にもらえる年金はゼロ。(あくまで原則論。実際には合算対象期間や、25年が短縮される例外もある。)
いざ年金をもらえる年齢になった時になって「足りない分を納めたい」と思っても、2年を経過してしまった未納保険料は、もはや納めることはできません。
元社保庁職員のコネの力は法律をも曲げる?
平成17年3月、元大阪社会保険事務局の職員だったA氏は、地元の奈良社会保険事務所の年金窓口の説明不足により妻の年金に未納が生じたとして、B氏(下記の流れ図参照)に対し2年を過ぎた未納分を納付できるように強く抗議。
保険料納付の時効(2年)もなんのその。なんと、2年経過分の保険料納付を認めさせることに成功したのです。
【抗議の伝わり方の流れ】
(流れ…2009年5月15日TBSサタデーずばッとより)
1.B氏…大阪社会保険事務局 共済係長
(抗議を受けた人)
↓
2.C氏…大阪社会保険事務局 総務課長
↓
3.D氏…奈良社会保険事務局 総務課長
(納付を許した人)
裏ルートの交渉??
そして抗議の翌日、
D氏からC氏、C氏からB氏、そしてB氏からA氏に納付可能の旨と納付金額が伝言され、最終的にA氏はE氏(奈良社会保険事務所 国民年金課長)に対して2年を超えた妻の国民年金未納分を納付することとなりました。
時効経過分は19ヶ月の国民年金保険料。
年金にして3万800円の増加です。
(厚生労働委員会会議録より)
厚生労働委員会での追及
この国民年金保険料の違法後払い問題については平成18年6月16日の厚生労働委員会、3年後の平成21年4月15日ならびに平成21年4月17日の厚生労働委員会において、民主党長妻昭議員が追及しています。
その該当箇所を厚生労働委員会会議録から抜粋します。
1.平成18年6月16日厚生労働委員会
衆議院会議録情報 第164回国会
厚生労働委員会 第32号 平成18年6月16日http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/164/0097/16406160097032a.html
○長妻委員
そしてもう一つ、一ページでございますけれども、これも非常におかしな話でございますが、大阪社会保険事務局でAさんという方がいらっしゃる。このAさんという方は、社会保険庁の職員であられる方で、平成十七年三月三十一日定年退職されました、医療職、医師でございます。この職員の奥様が、いろいろ支払いをめぐって問題があるという指摘を受けまして調査いたしましたら、この一ページ目の調査報告書が出てきましたけれども、これはどこが問題ですか。
○村瀬政府参考人
苦情の申し立てを、これは大阪社会保険事務局並びに奈良の社会保険事務所に対しまして、御本人からあったわけでございます。時効によりまして徴収権が消滅しました期間に保険料をお納めいただくというのは、法律上、納付できないことになっておりますので、そういう点で法律に反する事務処理だというふうに考えております。
○長妻委員
これは、うがった見方をすると、職員であると、奥様が未納だと。普通の人は、二年より以前はさかのぼれないわけですね。ところが、書類にもありますけれども、強い抗議をしたと、この職員OBの方が。職員の方ですね。強い抗議をすると、いとも簡単に、さかのぼれる時効は二年前までのはずなのに、その前もさかのぼれてしまう。こんなコンピューター処理、ばんばんできるんですか。
非常に身内に甘いというか、普通の厚生年金や国民年金の方で、未納があって、例えば、二十五年ルールというのがありますけれども、延べ二十五年払っていないと、年金の受給資格がない上、保険料も没収される。では、そういう方が、いや、あと一年足りないからさかのぼって払わせてくれと言っても、ノーですよ。もちろん払えない。しかし、こういうコネがある方は、しかも住所地は奈良ですよ。大阪がこういうふうに便宜を図るというのはあり得るんですか、一般的に。
○村瀬政府参考人
大阪の事務局から奈良へ連絡をとって手続をとっていただいた、こういう形で確認をしております。したがいまして、本来はこの権限はすべて奈良の事務所長が持っているわけでございまして、その部分について、奈良の事務所長が大阪から確認したことによってそれを認めたということは、極めて遺憾な行為だろうというふうに思っております。
○長妻委員
懲戒処分ですか、これは。
○村瀬政府参考人
処分裁定につきましては、全体のものを見た上で決めさせていただきたいというふうに思っております。
○長妻委員
何らかの処分は出るということですね。
○村瀬政府参考人
当然、処分は出るというふうにお約束します。
○長妻委員
この方は、十九カ月不正に納入した、不正に社会保険庁が受け取ったということですけれども、十九カ月多く納入したことによって、この方は幾ら給付金額がふえましたか。
○村瀬政府参考人
現段階、まだそこの細かなデータを確認しておりませんので、後ほど御回答申し上げたいと思います。失礼しました、納付済み期間が十九カ月ふえることによりまして、年金額が約三万八百円増加するということでございます。
○長妻委員
これは年間だと思いますけれども。基本的に、これは氷山の一角だと私は思うんですよ。いろいろな御指摘で、職員とか職員のOB、職員の関係者は、強く言えばさかのぼれるんだ、こういう驚くべき内部告発をいただいています、本当かどうかわかりませんけれども。ですから、これも念のために全国調査をするとお約束ください。
○村瀬政府参考人
はい、おっしゃるように、私自身もこういう事務処理が行われていることはびっくりしている次第でございまして、しっかり調査をさせていただきます。 |
この時は事件が明らかになったばかりということで、類似案件の件数など詳細は明らかとなっていません。注目すべきは村瀬社会保険庁長官(当時)の『法律に反する事務処理だというふうに考えております。』『当然、処分は出るというふうにお約束します。』という言葉です。果たして3年後、その約束は守られたのでしょうか?