旧法の厚生年金では、男性60歳、女性55歳が年金受給開始年齢でした。これから年金をもらう人には関係ないと思いきや、支給漏れ年金が見つかり時効撤廃が成立した時は、関係ないとも言い切れません。
時効撤廃で過去の厚生年金規則が注目に
これを書いている平成19年6月時点では、支給漏れ年金の時効は撤廃されていませんし、いろいろな取扱がどうなるかわかりませんが、場合によっては経過措置と共に無くなっていった厚生年金の規定が生きてくるかもしれません。
例えば年金漏れが見つかり、さかのぼって一時金をもらう時に、何歳から年金が出ていたか、漏れの部分はその前か後か、といったことが計算上関係するようになってくると思われます。知っていないと見逃される恐れが高いだけに、特に年配の方は、過去の年金のルールを知っておくことにはメリットがあるものと思います。
昭和61年4月前の女性の厚生年金
昭和61年4月前の厚生年金、いわゆる旧法の厚生年金ですが、女性の年金支給開始年齢は55歳でした。(男性は昭和29年の改正で60歳引き上げは済んでいます)
そして、昭和61年4月以後の新法の厚生年金からは60歳にするということが決まりました。女性の厚生年金支給開始年齢は、経過措置をもって、生年月日ごとに60歳引き上げが実施されたのです。
女性の厚生年金支給、60歳引き上げの経過措置
昭和61年4月以降の新法の厚生年金に変わったからといって、女性の厚生年金の支給開始年齢をいきなり60歳にすることはできませんから、段階的に60歳に引き上げることになりました。
具体的には次のように、生年月日ごとに支給開始年齢を定め、支給開始年齢を徐々に60歳になるようにしたのです。
- 昭和 7年4月1日以前生まれ=55歳
- 昭和7年4月2日~昭和9年4月1日生まれ=56歳
- 昭和9年4月2日~昭和11年4月1日生まれ=57歳
- 昭和11年4月2日~昭和13年4月1日生まれ=58歳
- 昭和13年4月2日~昭和15年4月1日生まれ=59歳
上記年齢から支給される厚生年金の中身は?
昭和61年4月からの現行法では、国民年金にあわせて厚生年金も65歳からの支給となりました。そこで、当分の間、実態はそれまでの老齢厚生年金と変わらない、名目は『特別支給の老齢厚生年金支給』を支給することになりました。
※定額部分を経過的に65歳に引き上げることは平成6年の改正、報酬比例部分を65歳に引き上げることは平成12年の改正で改められました。
女性の経過的な厚生年金の支給の中身は、『特別支給の老齢厚生年金支給』を支給することになりました。ただし、この60歳までの間に支給される厚生年金は、原則厚生年金に20年以上加入していなければ支給されません。
ちなみに、60歳から65歳までの厚生年金(部分年金、または特別支給の老齢厚生年金)は、厚生年金の加入1年以上で支給されます。
そのため女性の厚生年金支給は5年遅れなのです
このような旧法からの流れがあり、男性と女性とでは65歳までの厚生年金の支給開始年齢に5年の差があるわけです。例えば、65歳未満の定額部分の引下げが男性昭和16年4月2日以降生まれ、女性昭和21年4月2日以降生まれとなっていますが、これを男性に合わせてしまいますと、生まれた年代によっては心の準備なく急速に年金がダウンしてしまいます。
年金のしくみを考えてローンを組んでいた人や老後の設計を立てていた人も、法律をいきなり変えられて急に年金がカット・ダウンしてしまったら、ろくな資金準備もできません。よって、後々まで5年の差が続いているわけです。