離婚時の年金分割制度は、一番恩恵を受けるのは専業主婦の妻です。逆に、共働きの夫婦は計算をした結果分割が少し、または下手をすれば妻の持ち出しになることもあります。自営業の夫婦の場合はこの制度は関係なし。専業主婦でも婚姻期間が短ければ、年金分割はわずかなものとなります。
家計を支えた献身的な妻、ランチ三昧の妻
たとえば・・・
家族のため、あまり働かない夫のかわりにバリバリ働くAさん。常に自分を犠牲にし、食べるものも質素、オシャレも我慢してきて50歳。子供も独立し、自分の人生を歩もうと離婚することになりました。
Aさんの年金分割は?
Aさんは夫よりも稼いでいたために、年金分割をすると逆に夫に対して年金を与えることになるのです。自分から別れを切り出したために、なかなか分割ゼロという合意は得られず、しぶしぶ年金を別けることになりました。内心くやしくて仕方ありません。
そしてAさんと同級生のBさん。夫は商社マンでBさんは専業主婦(国民年金の第3号被保険者)。趣味はランチめぐりです。夫の稼ぎだけで十分楽しく暮らしていたのですが、事情により離婚することに。
Bさんの年金分割は?
Bさんはずっと専業主婦でしたので計算は簡単です。夫婦の婚姻期間中にある夫の厚生年金(報酬比例部分)を最大半分に別けるだけ。もちろん合意の上でです。
2008年4月からの年金分割は自動的に2分の1(専業主婦)
2008年4月からの婚姻期間につき、夫婦の片方が厚生年金加入者で、もう一方が第3号被保険者のときは、その期間(2008年4月以降の期間)については自動的に2分の1に年金分割されます。
これまた専業主婦に有利なしくみとなっております。
第3号被保険者から外れて、第2号被保険者(会社員、パートその他)または第1号被保険者となったときは、今まで通り、夫婦の合意によって年金分割が行われます。
自営業の妻は、年金分割には関係なし
離婚時の年金分割制度では、厚生年金部分だけが対象になっていますので、第1号被保険者(自営業・国民年金加入者)には関係のない話です。夫が月に30万円稼ごうが、60万円稼ごうが、国民年金は期間に応じた定額制ですから年金額に違いはありません。
仮に夫だけ国民年金の保険料を払い、妻が未納で無年金となあっても、年金を別けることはありません。その点会社員の妻は保険料無しで国民年金に加入できる第3号被保険者ですから、少なくとも国民年金だけはもらえます。年金分割の話ではないかもしれませんが、少し違和感を感じてしまいます。
ちなみに、今は自営業の夫婦であったも、かつて婚姻期間中に厚生年金に加入していた期間があるのでしたら、それは年金分割の対象となります。
夫婦期間が少ないと、年金分割も少しだけ
離婚時の年金分割は、夫婦で築いてきた年金は2人のモノ、という発想がありますから、夫が独身時代に入っていた厚生年金期間は年金分割の対象にはなりません。
50歳で結婚して55歳で離婚したらその5年間の分の厚生年金を最大半分にするということです。
年金分割はそうなのですが、例えば加給年金はたった1ヶ月の結婚でも要件さえ整っていれば支給されますし、遺族厚生年金も同じく結婚してすぐに夫が死亡しても一生涯妻に支給されます。一応関連知識として。
受給資格期間25年なければ年金分割も関係なし
そもそも論ですが、年金分割を受ける妻の年金が、老齢基礎年金の受給資格期間である25年(原則)に満たない場合には、分割された年金はもらうことができません。