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厚生年金支給漏れがみつかって年金額が下がる人もいる?

年金記録訂正で『減額』でも受給額減らさぬ方針へ
本人の年金記録が特定できて、かえって年金受給額が減額されるようなケースにおいては「修正なし」とする運用に改められました。(日経新聞報道2008年5月~)

年金の支給漏れ対策は全体的に見れば歓迎すべきことなのですが、厚生年金の支給漏れが見つかったばっかりに、もらえる年金額が少なくなる人も出てくるのです。どういうことかと言いますと・・・

厚生年金支給漏れが見つかって年金額が下がるケース

国民年金の支給漏れが見つかった場合は何も問題はないのですが、厚生年金の支給漏れが見つかった場合には、人によっては、「加給年金」「振替加算」が支給されなくなる恐れがあるのです。

加給年金については、年金に関する雑誌等で度々取り上げられているのでご存知の方も多いかと思いますが、典型的なケースでは夫が厚生年金に20年以上勤めていて、妻が専業主婦の場合に、夫の年金に加給年金(40万円)が支給され、妻が65歳になると加給年金は消えて妻の振替加算として老齢基礎年金の上にくっつく形となります。(振替加算は生年月日により金額が異なります)

参考:弊所加給年金のページ

妻の厚生年金が20年を超えると

例えば加給年金の制度を知っていて、自らの年金記録を正確に把握し、自らの意思で厚生年金の被保険者期間を20年未満に抑えている人は、支給漏れ年金という話は出てこないかと思います。

しかし、支給漏れ年金の調査が実行され、それまで見落としていた(支給漏れで厚生年金期間とカウントされていなかった)厚生年金期間が加算され、妻の厚生年金期間が20年を超えてしまうと加給年金も振替加算もストップしてしまいます。そして、何より懸念されるのは、その受給していたお金の行方です。

問題になりそうです

通常ならば、受け取る権利のない年金を誤って受給していた場合、そのお金は国に返還しなければなりません。しかし、年金の支給漏れの問題との絡みで言えば、非常に複雑です。

自分の知らぬ間に年金の支給漏れが生じていて、「年金の支給漏れが見つかったので加給年金(振替加算)の分年金額が下がります。しかも、今まで受け取っていた分はさかのぼって返して」そんな風に言われて果たして納得できるでしょうか。

または、年金を少しでも取り戻そうと、自ら頑張って支給漏れを発見したところ、年金額ダウン。該当する人はそう多くはないとは思いますが、とは言っても年金のしくみ上ありえる話ですので、これからそういう話も出てくることと思います。

※2008年1月9日の産経新聞に、宙に浮いた年金が統合されることによる年金額ダウンのケースについて、これを受け入れなければいけないのかどうかということに関する記事が掲載されておりましたので一部引用させて頂きます。

『この件について、各地の社会保険事務所の対応が統一されていないのも問題になりそうだ。年金減額を説明された女性は「額が減ると聞いて、『それなら訂正しないで』と言ったら、『記録漏れが分かった以上、元に戻すことはできない』と言われた」と話す。一方、社会保険庁は「本人の了解や納得が得られなければ、無理に記録訂正はできない」として、記録をそのままにすることを否定していない。(原文まま)』

加給年金の20年の短縮に注意!

上記参考ページにも書いてありますが、一定の生年月日に該当する人は、厚生年金の被保険者期間が20年より短くても20年とみなされる場合があります。

これを中高齢の特例と言います。
参考:弊所中高齢の特例ペーゾ

これに該当する人は、厚生年金の支給漏れ発見のおかげで厚生年金の期間が15年から16年になった、もしくは16年から19年になったなどというようなケースでも加給年金(振替加算)がストップになるかもしれません。(加給年金の対象となる配偶者・・・一般的には妻がそうなる場合です。)

遺族厚生年金も減額があり得ます

例えば、結婚間もない会社員の夫が亡くなったとき、妻には遺族厚生年金が支給されますが、それまで夫がもらっていた平均の収入から平均標準報酬額(古いものは平均標準報酬月額)というのを算出して25年勤めていたと仮定して遺族年金の金額を計算します。

これは、25年以上勤めていれば(トータルで厚生年金期間が25年という意味)実期間で計算しますが、厚生年金加入短期間でなくなった場合には遺族厚生年金の金額が少なくなってしまうためのみなし規定です。

ということは、会社勤め10年で亡くなってしまった人に、厚生年金の記録が例えば3年見つかっても遺族年金額は変わりません。いずれにしろ25年で計算されているからです。

むしろ、新入社員の頃の安い給料の厚生年金期間が見つかった場合には、全体の給与平均額を引き下げることにもなりますので、もらえる遺族厚生年金の額が下がってしまうということにもなるのです。

この辺は法的な解釈ですが、その辺今後どうなっていくのか現時点ではわかりません。しかし、苦労して、苦労して、やっと支給漏れ年金が見つかったと思ったら「大変でしたね、それでは年金額を下げます」では、私だったら絶句してしまいそうです。

障害年金も注意です

障害厚生年金にも、遺族厚生年金同様に、平均給与で年金額を算定しますので、25年(300月)のみなしが適用されている人は、支給漏れが見つかって年金額が下がるケースと言うのは十分に起こりえる話です。

あたりまえですが、もらいすぎていた人も

年金記録が他人のものになっているケースもありますので、逆に他人の年金記録を支給されていた人は、調査の結果もらいすぎていた年金は返還しなければならなくなります。

過去の分と今後の年金カットですが、当然とはいえなんだか損をした気分になってしまいます。

以上、支給漏れ年金の発見によって、「100%の人の年金が増えるのではない」ということだけ知っておいて頂けたら、と思います。

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