離婚による年金分割。「これだけは知っておきたい」というポイント3点をご説明いたします。ひょっとしたら、離婚の時期を考え直さなければいけなくなるかもしれません。
(1)離婚の年金分割で、遺族年金の権利はなくなります。
「遺族年金は、子どもがいたり年齢の要件があったり、どうせ私には関係ない」
そんなことはありません。国民年金の遺族基礎年金は受給要件が厳しいのですが、遺族厚生年金は妻が受給対象でしたら、妻の要件は生計維持だけで足ります。
60歳の妻でも、70歳の妻でも、80歳の妻でも、子どもがいなくても、遺族厚生年金の対象になります。年金額にして、夫の厚生年金の報酬比例部分の3/4。そこに65歳未満ならば一定の要件のもと中高齢の寡婦加算(年間約60万円)、65歳を過ぎても経過的寡婦加算として一定額が減額された年金を受け取ることができます。しかも、一生涯。(再婚等をしたら失権)
(2)加給年金がもらえなくなります。
加給年金は、妻が65歳未満で、夫の厚生年金の1階部分が支給されるときから年間40万円加算される家族手当のようなものです。仮に妻が60歳から65歳までの間、夫の年金に加給年金が加算されていたとすると、40万円×5年間=200万円。これだけの金額を受け取れます。
しかし、離婚して年金分割を行うと、加給年金は分割されずに、単純に消えてなくなってしまいます。ですので離婚前に夫の年金を計算するときも、夫の年金全体から加給年金を差し引いて、さらに独身時代の厚生年金を差し引いて、そしてようやく分割する金額が出てくることになります。しかも、分割されるのは『最大で』半分ですから…。
(3)65歳以上で妻に振替加算がつく
この振替加算というものは、加給年金の対象になっていた妻が65歳になったときに、今度は妻の年金として一生涯もらえるものです。
金額は加給年金から生年月日に応じて減額した額になりますが、一度振替加算としてもらい始めてしまえば、その後はずっと妻のものとなります。
離婚して年金分割をしてもしなくても、この振替加算は関係なし。65歳に近い人は、とりあえず65歳まで待って離婚した方がお得です。
離婚時の年金分割、最大の誤解
以上3点を知っておけば、年金分割対策はほぼ大丈夫だといえますが、年金分割に対する最大の誤解は「夫の年金の半分をもらえる」ということです。
年金分割について正しくいえば、「夫婦でいた間の厚生年金加入期間の厚生年金部分の最大2分の1」ということになりますが、先述したように加給年金は分割されませんし、もしも妻に厚生年金の加入期間があれば、もらう一方という話ではなくなります。
生活の見込みがあれば別ですが、分割される年金をあてにして自立を考えている方にとって、年金分割された年金額は少々物足りないものになるかもしれません。