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特定の主婦だけ年金優遇 平成23年「運用3号適用」施行

平成23年1月1日前に年金を訂正した主婦は?

「正直者が馬鹿をみる」「保険料納付者への背信行為」「理不尽」「不公平」・・・広く認知されるほど不満の声が上がりそうな年金の制度が施行されました。

平成22年12月までに自分の年金記録を見直し、誤って第3号被保険者になっていた年金記録を第1号被保険者に訂正したことのある人は要注意。怒りに震えることになるかもしれません。

※注・・・年金の第3号被保険者の99%は主婦(1%は主夫)ですので、ここでは第3号被保険者=主婦として話を展開しています。

【平成23年2月11日追記】

『運用3号』制度について、厚生労働省が公表した詳細資料へのリンクです。
「運用3号」に関する経緯等について(PDF:201KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011je9-att/2r98520000011jik.pdf

「運用3号」職員向け「Q&A」集(第2版)(PDF:310KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011je9-att/2r98520000011jid.pdf

(平成23年1月31日 第20回年金記録回復委員会資料より)

【平成23年2月24日追記】

「運用3号制度」について、見直しの動きが出てきました。

『国民年金第3号被保険者の切り替え漏れ問題について、細川律夫厚生労働相は24日の予算委員会で、1月から始めた救済を一時停止する方針を示した。今後の対応は総務省と協議して近く結論を出す。同日午前の衆院予算委員会で鴨下一郎議員(自民)の質問に答えた。』(毎日新聞2月24日より引用)

【平成23年3月3日追記】

問題化したので決定時期変更で責任回避?

『国民年金:3号被保険者切り替え漏れ 責任なすりつけ? 厚労省、決定時期前倒し

サラリーマンの妻など国民年金の第3号被保険者(3号)が夫の扶養から外れた際などの切り替え漏れを救済する「運用3号」制度に関し、厚生労働省は2日、これまで「昨年12月」と説明してきた決定時期を「昨年3月」へと前倒しした。厚労省は、昨年3月29日に同省の年金記録回復委員会に運用3号の案を提示し、12月14日の同委員会の了承を得て決定したと説明してきた。細川律夫厚労相も同様の答弁をしている。昨年3月の決定なら、当時の長妻昭前厚労相が責任者となるが、12月なら細川氏の最終判断となる。運用3号を巡っては、自民党が細川氏の責任をただす構えを見せており、決定日変更は野党の追及をかわす狙いもあるとみられている。大塚耕平副厚労相は2日の会見で「3月29日に政務三役と関係幹部が最終的に協議して省として決めた」と述べた。』(毎日新聞3月3日より引用)

本決定が2010年3月ならば、有識者を集めた年金記録回復委員会の議論(第14回 2010年12月)はお飾りだということなのでしょうか。「決定」の定義がどうあれ、問題が拡大してから制度決定時期を変更するということについて、どうしても保身の意図を感じてしまいます。

【平成23年3月4日追記】

平成23年3月4日の衆議院予算委員会により、驚くべき3つの点が明らかになりました。
(質問者 世耕弘成議員、回答者 細川律夫厚生労働大臣)

●その1-過去2年分の保険料納付は運用3号の適用を受ける必須条件ではなかった。

これまで「最大過去2年分の保険料の支払い」は「運用3号の適用」の条件であるかのように新聞・テレビ等で報じられていました。また、私自身も通知等を読みそのように解釈しておりましたが、実際には、過去2年分の保険料の支払実績とは関係なく、運用3号の救済を受けられることが明らかになりました。(必要なのは「支払う意思の確認」であって、支払った結果ではない。)つまり、3号から1号への切り替え漏れにより過去20年間不整合記録となっている人については、運用3号への適用後、最終的に過去2年分の保険料の支払いが履行されなかったとしても、過去2年より前の18年間については「運用3号」として実質3号被保険者として扱われる訳です。過去2年間については、保険料を納めれば1号としての保険料納付済期間となり、未納ならば1号としての未納期間とされます。

●その2-運用3号の施行日前の受付について、現場により不公平が存在した可能性がる。

運用3号の施行日は平成23年1月1日ですが、現場によっては平成22年12月から受付を行っていたということが明らかになりました。(世耕議員指摘による。)これは、現場向けの説明会の時期や、担当者が親切な人か杓子定規の人かということによって、適用が受けられるかどうかの差が生じていた可能性があるということです。(大臣答弁「昨年12月15日より前に(救済申請を)受け付け、適用しているケースも一部ある可能性もある。」)

●その3-運用3号制度の12月15日内部通知を厚生労働大臣は知らなかった。

平成22年12月14日第19回年金記録回復委員会の議題の一つに運用3号制度が取り上げられ厚生労働大臣も出席していたのですが、翌日12月15日に出された内部通知(厚生労働省年金局事業企画課長通知)については、厚生労働大臣は知らなかったということが明らかになりました。

【平成23年3月8日追記】

運用3号制度については「きちんとした法律制度で対応」することになりました。
(8日の衆議院予算委員会。菅首相答弁より。)

【平成23年3月9日追記】

平成23年3月8日の厚生労働委員会(大塚厚生労働副大臣答弁)により、従来から、事実上運用3号と同じ扱いが現場で『多数』行われていたということが明らかになりました。これは、旧社会保険事務所に裁定請求に来たときに、窓口の職員が本当は第1号被保険者と訂正すべき不整合記録について、現実には訂正されないまま、結果として本来の年金受給額より多い年金をもらっている人が『たくさん』居るというものです。

つまり、「運用3号」というしくみを立ち上げたことでで不公平・理不尽な点が問題となりましたが、そのようなことはもうすでに存在していたわけであり、「運用3号」について課長通知で行おうとするなど民主党の不手際は責められるものの、事実上の「運用3号」を見過ごしていた歴代厚生労働大臣、旧政権にも責任があるということになります。

それにしても、これまでどれくらいの割合で不整合記録の訂正が行われなかったのでしょうか。また、その対象者数はどれくらいなのか、実際の年金額よりも多く払っている金額は全体でどれくらいなのか等、公表を待ちたいと思います。(妻自身の年収が130万円を超えたことにより3号を外れた場合の記録は調査困難かもしれませんが、夫が2号から1号になった場合の対象者は容易に調べられるはずです。)

【平成23年4月12日追記】

厚生労働省は、11日に行われた「第2回社会保障審議会第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会」において、第3号被保険者の不整合記録にかかる推計結果とともに関連資料を公表しました。
第3号被保険者不整合記録問題対策の対象者の整理について(PDF:106KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018mel-att/2r98520000018mj4.pdf

第1回特別部会における委員の依頼資料(PDF:336KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018mel-att/2r98520000018mjd.pdf

第3号被保険者の不整合記録の状況について(PDF:37KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018mel-att/2r98520000018mjm.pdf

第3号被保険者不整合記録問題対策に関する主な論点(PDF:154KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018mel-att/2r98520000018mjv.pdf

論点に関する参考資料(PDF:318KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018mel-att/2r98520000018mk4.pdf

3号不整合記録問題に関連するこれまでの行政実務、判例等の考え方(PDF:574KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018mel-att/2r98520000018mkd.pdf

公表資料の過去の判例や論点整理を見ていると、単なる不公平論では片付かないこの問題の複雑さを改めて実感させられます。自民党が、運用3号について国会での追及では、議論の分かれる『不公平論』ではなく『手続き論』に重きを置いていた理由もよくわかります。

最終的には、過払い分は返還を求めないという、不公平が残る決着となりました。

平成23年1月1日から施行された『運用3号適用』

平成23年(2011年)1月1日から、『運用3号適用』という新たな年金の制度が始まりました。

これは、例えば会社員の夫をもつ年金種別「第3号被保険者」の妻が、その後夫が脱サラしたことにより夫婦共に「第1号被保険者」となるべきところ、手続き忘れにより妻の年金種別が「第3号被保険者」のままになっているようなケースを想定しているものです。

夫が会社員から自営業へ脱サラ(2号から1号へ)

図のように、夫が会社員から自営業に脱サラした場合、専業主婦をしている妻の年金種別は3号から1号へ変わります。

妻の実態に即したあるべき年金記録(3号から1号へ)

同じ専業主婦でも、2号(厚生年金)の夫をもつ妻は、年金保険料を納めなくてもよい3号でいられますが、夫が1号(国民年金)になれば、妻の年金種別も法律上1号となり、夫とともに年金保険料を払う立場に変わります。

しかし、中には年金種別の変更手続きを忘れ、もしくはわからないまま届けをしない人もおり、年金種別が誤って3号になったままになっていることもあるのです。(下記図)

妻の誤っている年金記録(本来1号のところを3号のままにしている)

その場合、記録上3号になっている間は保険料を請求されることはありませんが、事後的に第1号被保険者であることが判明した場合には、さかのぼって年金記録を第1号被保険者に訂正することになるため、過去2年分の保険料を後払いできた部分を除き1号未納となります。

これにより、今までは老齢基礎年金の額が減らされたり、年金加入期間が足りなくなることにより無年金になるという事態も発生していました。

もちろん、まだ60歳になっていない人については、「1号」に訂正後の国民年金の保険料は自己負担ですし、払えなかった月にかかる将来の年金は減らされてしまいます。

ここまでが、平成22年12月までの話です。

少しかわいそうな気もしますが、きちんと届出義務を果たして、まじめに保険料を納めている「元3号」である「1号」の主婦のことを考えれば、法律通りの妥当な措置であると思われます。

ところが、今回新たに出来た制度では、不整合記録(本当は「1号」なのに「3号」となっていた記録)の「3号」を「1号」に訂正する今までのやり方を変更し、誤りである「3号」になっていた年金記録を「運用3号」とすることで、事実上「3号」と変わらぬ扱いにするようにしたのです。(下記図)

※注1-厳密には62歳以下であれば、最大で過去2年分は「1号」となりますが、その点については図示しておりません。(最大というのは、例えば60際の人ならば過去2年は1号として2年分の保険料を求められますが、訂正する人が61歳ならば、法的に59歳から60歳までの1年分しか1号になり得ません。また、62歳を超える人については過去2年のうちに1号となりうる期間がないので結果的に保険料を求められることはないということです。)

※注2-平成23年3月4日まで、当ページにおいては「この特例の適用には当該過去2年分の保険料納付が必要」であると記載しておりましたが、正しくは、当該過去2年分の保険料納付を「求められる」ものの、手続き時点で納付の意思を示せば、最終的に納付を拒否したとしても2年より前の期間については「運用3号」が適用されるということです。(平成23年3月4日衆議院予算委員会の答弁により判明。)

なお、この点については、平成22年12月14日第19回年金記録回復委員会において「一方で真面目に納めた方への背信行為との指摘があることもごもっとも(略)不公平感を考慮し時効が成立していない期間については公平性の観点から直近2年は払ってもらうことで整理した。」と語られていることと反しており、新たな疑念(過去2年分の保険料納付を「求める」と言う表現で、あたかも過去2年分は納付実績が必須条件であるかのような印象操作をおこなってきた?)が生じたところです。

妻の訂正後の年金記録(本来1号の部分を特別に3号として扱う)

対象となる年金記録は、昭和61年(1986年)4月以降の不整合記録ですので、平成23年(2011年)1月以降に訂正する人の中には、制度上、長ければ25年を超える年金記録が、「実態1号=未納(誤って3号になっていた年金記録)」→「納付済み扱い」になるわけです。

保険料を払ってきた正真正銘「1号」の主婦からすれば、実態は同じ「1号」にもかかわらず、手続きミスをした方が結果的に得をするという、なんとも理解しがたい不公平な優遇措置となっているのです。

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