厚生年金・国民年金増額対策室 > 年金、みんな怒っています!(バックナンバー) > 第17号想定外「所得代替率上昇」の不気味
┏━━ ● 年金、みんな怒っています! ● 第17号 ◎想定外「所得代替率上昇」の不気味 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 平成21年11月12日版 第17号 購読者数 116名様 】 年金の将来見通しの話の中で出てくる『所得代替率(年金給付水準)』 年金給付額(65歳時点・夫婦2人) ※所得代替率 = -------------------------------------- 現役男性会社員平均手取り賃金 報道等で注目されたのは将来の「50%」の数字ですが、 直近の所得代替率についてはほとんど注目を集めませんでした。 今回のテーマは、不気味な傾向を示している直近の所得代替率についてです。 まずは2004年財政再計算における所得代替率の推移から。 -------------------------------- 【2004年財政再計算 所得代替率推移イメージ】 モデル世帯(専業主婦世帯)の所得代替率 2004年度 ■■■■■■■■■■■■■■■ [59.3%] 2009年度 ■■■■■■■■■■■■■ [57.5%] 2014年度 ■■■■■■■■■ [54.0%] 2025年度 ■■■■ [50.2%] ↓ 以降『50.2%』を維持 -------------------------------- 年金財政を維持させるためには、基本的に 「年金保険料アップ」「国庫負担アップ」「年金給付水準ダウン」 の3つの方法があるのですが、 「年金給付水準ダウン」についてはマクロ経済スライドという仕組みにより、 徐々に給付水準を低下させていく予定でした。 それにより、2004年度59.3%の所得代替率を徐々に逓減。 最終的には2025年度50.2%の水準まで給付水準を低下させ、、 その後はその給付水準を維持する・・・そんなプランだったのです。 しかし、2004年からの5年間物価は低迷し、 結局マクロ経済スライドは発動されぬまま・・・ 同時期の現役世代の賃金も低下したため、 現役賃金、年金額、所得代替率の関係は次のようになりました。 -------------------------------- [2004年度] [2009年度] 夫婦2人の年金額 23.3万円 22.3万円(-1.0万円) 現役男性会社員平均手取賃金 39.3万円 35.8万円(-3.5万円) 所得代替率 59.3% 62.3% (+3%) ※年金額は、1人当たりの賃金(可処分所得)の伸びや物価の伸びに応じて 改定。マクロ経済スライドの調整は、そのうち所定の要件に該当した 場合に行われる。 -------------------------------- これにより、所得代替率は 2004年度=59.3% 2009年度=62.3%(+3.0%) となりました。 プラン通りならば、2009年度は57.5%(-1.8%)だったのですが・・・ 当初予定とは4.8%のギャップです。 一見、所得代替率の上昇は喜ばしい要素のようですが、 年金生活者の生活水準は維持される一方で現役世代の生活水準が落ち込み、 その結果としての所得代替率の上昇ですので喜べるものではありません。 次に、2009年財政検証における所得代替率はの推移を見てみます。 -------------------------------- 【2009年財政検証 所得代替率推移イメージ】 モデル世帯(専業主婦世帯)の所得代替率 2009年度 □□□□□□□□□□□□□□□□□ [62.3%] 2025年度 □□□□□□□□□□[55.2%] 2038年度 □□□□ [50.1%] ↓ 以降『50.1%』を維持 -------------------------------- 比較のため、2004年財政再計算と2009年財政検証のイメージを重ねると… -------------------------------- 2004年度 ■■■■■■■■■■■■■■■ [59.3%] 2009年度 ■■■■■■■■■■■■■ [57.5%] 2009年度 □□□□□□□□□□□□□□□□□ [62.3%] 2014年度 ■■■■■■■■■ [54.0%] 2014年度 □□□□□□□□□□□□□□ 2025年度 ■■■■ [50.2%]・・・・・・・・★給付水準調整期間終了予定 2025年度 □□□□□□□□□□[55.2%] 2038年度 ■■■■ [50.2%] 2038年度 □□□□ [50.1%]・・・・・・・・★給付水準調整期間終了予定 2050年度 ■■■■ [50.2%] 2050年度 □□□□ [50.1%] -------------------------------- わずか5年間の結果(4.8%のギャップ)により マクロ経済スライドによる給付水準の調整期間が 13年(2025年→2038年)も延びてしまいました。 ●次の5年間も物価低迷・賃金デフレが続けば・・・ 日銀の「経済・物価情勢の展望(2009年10月)」(展望リポート) http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf によると、デフレ基調の長期化が予想され、 「わが国経済は、先行きにかけて、労働や設備の稼働状況は回復していくと 見込まれるものの、そのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。 こうした環境のもとで、企業や家計が持続的な物価下落を予想するような事態が 生じた場合には、実際の物価も、賃金とともに下落幅を拡大するリスクがある。 」(8ページ) というような記述もあり、2014年度の所得代替率は 2004年(59.3%)→2009年(62.3%)の延長線上の65%前後になる可能性も 十分にあると思われます。 所得代替率の推移の発射台だけを並べてみると・・・ -------------------------------- 2004年度 ■■■■■■■■■■■■■■■ [59.3%] 2009年度 □□□□□□□□□□□□□□□□□ [62.3%] 2014年度 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ [65%前後?]※ ※2004年財政再計算では、2014年度所得代替率は[54.0%] -------------------------------- マクロ経済スライドによる給付水準削減ができなかった間も 取る方(年金保険料)は着実にアップしています。 ●厚生年金保険料 2004年~9月 13.58% 2009年9月~ 15.704% 2014年9月~ 17.474% ●国民年金保険料 2004年度 13,300円 2009年度 14,700円 2014年度 16,100円 ちなみに、基礎年金国庫負担は、2004年度前に「1/3」だったものが、 2009年度からは「1/2」に引き上げ済み。 年金給付水準の削減が進まなかった2004年→2009年は、 甘いと指摘する向きも多い各種経済前提の見通しとも相まって、 調整期間終了期間を2023年度→2038年度にするだけで済みましたが、 次回2014年の財政検証では恐らく経済前提も厳しくなりますので、 より調整期間が長くなるか、その他の改革が求められるか・・・ 消費税を大幅に引き上げる? 着地点「50%」を下回らせる? 受給開始年齢を諸外国並みの67歳からにする? もちろん、年金給付の削減は望ましくないことですが、 今の状況は「直近の年金生活者」と「現役=将来の年金生活者」とで 痛みを分かち合うという姿勢からはズレています。 計画通りでも、将来の年金生活者の年金は現在の年金生活者よりも トホホですので、これ以上のツケは先送りさせないよう、 早急に手を打ってもらいたいものです。
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