厚生年金・国民年金増額対策室 > 年金、みんな怒っています!(バックナンバー) > 第21号 65歳未満の人・自営業らの『消えた年金記録』紙調査取止めへ
┏━━ ● 年金、みんな怒っています! ● 第21号 ◎ 65歳未満の人・専業主婦・自営業らの『消えた年金記録』紙調査取止めへ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 平成23年6月1日版 第21号 購読者数 142名様 】 ・65歳未満の人 ・ずっと自営業者や専業主婦だった人(※)で国民年金しかない65歳以上の人 (※)一部でも会社員・OL時代の厚生年金期間があるような人は含みません。 国は『消えた年金記録の全件照合』を目指し、2010年10月から(※)全国29箇所、 人数にして18,000人もの人海戦術により古い紙台帳の照合作業を行ってきま した。 (※)以前からあった紙台帳の照合作業ではなく、2013年までの全件照合を目標と した本格的な照合作業のこと。 ところが、ここにきてコスト(全体では年間170億円で多くは人件費)に対して 回復額の少ないケースがあるということで、費用対効果を考慮して、そうした 属性の人たちの紙台帳照合調査(※)を止めにしようということになったのです。 (※)調査依頼への対応ではなく国が主体的に行っている紙台帳照合調査。 国の責任対応のはずが、いつの間にかコスト問題にされたわけですが、 今回報じられたニュースにもその一端が垣間見られます。 5月25日に断念の検討入り→26日に毎日新聞に掲載という流れですが、その内容 といい、事実上の公表のタイミングといい、違和感が残るものでした。 毎日新聞5月26日2時34分配信 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110526-00000012-mai-pol ------------------------------ ↓ここから引用 【<年金記録漏れ>全件照合、断念へ…厚労省検討】 厚生労働省は25日、年金記録漏れ問題をめぐり、コンピューター上の記録と 7億2000万件の紙台帳の全件照合を断念する方向で検討に入った。 費用対効果を踏まえた判断で、65歳以上の厚生年金受給者分のみ照合を続ける 意向を民主党側に伝えた。 しかし、全件照合は同党マニフェスト(政権公約)の柱で、党内から反発も 出ており、調整が難航する可能性もある。 日本年金機構は昨年10月、持ち主が判明している6億件(約8700万人分)の 紙台帳から照合を始め、今年3月末で約220万人分の作業を終えた。 11年度予算は736億円。 13年度までに全件を終える目標だが、総額で3000億円程度かかるとされる。 しかし、同機構の抽出調査によると、65歳未満や国民年金のみの加入者の場合、 照合して記録訂正をしても、死亡までの平均の年金増加額が500~3000円にとど まり、1人分の照合費用約3400円を下回った。 一方、65歳以上の厚生年金受給者は、平均で生涯2万2000~7万円増加する。 このため、厚労省は65歳以上の厚生年金受給者分(2000万人)に限り、 照合を続ける意向だ。【山田夢留】 ↑ここまで ------------------------------ ●ドサクサ紛れのタイミング 今回のニュースは、記事の通りに決定すれば政権与党民主党の金看板 『(消えた年金)全件照合』を下ろすことになりますので、検討を開始する 段階においても国民に周知・説明してもらいたい話です。 それにもかかわらず、5月26日から2日間の日程で行われたフランスG8サミット の期間中、まるでドサクサ紛れのように断念決定の検討開始~事実上の公表が 行われました。 当然報道の扱いは小さく、中には報じない新聞もありましたので、おそらく多く の方がこの事実を知らないのではないかと思われます。 仮に、運用3号、いわゆる主婦年金のように対応を迫られるような状況になった としても海外に居る首相はその応対を避けることができ、少なくとも 菅首相にとっては好都合この上ないタイミングだったと言えるでしょう。 (菅首相は24日午後出発~29日午前帰国) ちなみに、26日には民主党「社会保障と税の抜本改革を目指す作業チーム」が、 年金制度の抜本改革を事実上先送りするとの方針を公表しました。 (いまだに党内意見を集約できていないところを見るとこの先も・・・。) すなわち、2つの年金問題「年金記録問題」「年金制度問題」ともに政権与党 として不都合な重大ニュースを公表したわけですが、いずれもドサクサ紛れ であったわけで、とても偶然だとは思えません。 ●数字を使った印象操作? 上記の新聞記事は、おそらく厚生労働省のレクチャーに沿ったものであると 思われますが、これには印象操作を匂わせる点があります。 それは次の箇所です。 『しかし、同機構の抽出調査によると、65歳未満や国民年金のみの加入者の場合、 照合して記録訂正をしても、死亡までの平均の年金増加額が500~3000円にとど まり、1人分の照合費用約3400円を下回った。 一方、65歳以上の厚生年金受給者は、平均で生涯2万2000~7万円増加する。』 消えた年金記録の照合作業は、コスト(照合費用)をかけて年金負担を増やす ことになる負の作業です。 しかし、1人当たりの照合費用3400円を物差しとして、それを上回るか下回るかと 言われてしまえば、まるで収益構造のように、上回れば「黒字」下回れば「赤字」 (止めた方が良さそう)というような印象を抱いてしまう恐れがあります。 高齢者1人3400円掛けて生涯7万円の年金が増えれば、その人に掛かるコスト・ 負担は総額7万3400円であり、若い人1人3400円掛けて生涯3000円の年金が増え れば、その人に掛かるコスト・負担は総額6400円です。 安心を得るための責任対応作業のコストパフォーマンスとしては、 むしろ、65歳未満や国民年金だけの人の方が少額で済み効率がよいのです。 にもかかわらず、年金増加額だけを取り上げて回復される金額が少ない (効果が乏しい)ということで65歳未満の人等の照合調査を止めてしまうと いうことは、年金の安心・信頼をないがしろにしていると言わざるを得ません。 調査コストは間接的に全員負担。 ところが調査は厚生年金受給者のみ。 ただでさえ世代間格差、制度間格差がある65歳未満の人や国民年金だけの人に とっては、わずかな額とはいえ、不公平感をさらに増す結果ともなりかねま せん。 年金について政権交代に込めた思いは、組織を一新し、年金記録も一度全部を 洗いなおし、時代に合わない年金制度も持続可能な新しいものに刷新して再出発を はかるというものでした。 とりあえず、年金記録については責任をとって「調べる」ことに意義があるの ですから、仮に掛かる期間を延長したとしも、少なくともそれぞれの人が 老齢年金をもらい始めるまでには年金記録の紙台帳照合を終えておいて欲しい と思います。 ●幅を持たせた平均値 最高額の記載なし 平均値の表し方についても同様に誤解を与えかねない表現になっています。 ・65歳以上=2万2000~7万円 ・65歳未満・国民年金だけの人=500~3000円 このように私たちが通常見慣れている上限・下限と誤解されるような書き方をし ているので、1人当たりコスト「3400円」、65歳未満の人等「300~3000円」と 続けて読めば、まるで65歳未満の人たちすべてが1人当たりのコストを 下回る=ムダという印象を持ちかねません。 また、この種のサンプル調査の時には、たいてい金額の最も多い人、 最も少ない人の両端の記載があるものですが、そのいずれもが無いのも不自然 です。 ●おわり 確かに、コストの点で言えば、掛かる金額はバカバカしいほど多額です。 財政難の折、掛けられるコストには限りがあり、どこかで線引きしなければ ならないことは否定しません。 しかし、初期投資の紙台帳検索システム400億円など取り返しの付かないコスト とは違い、単年度ベースで掛かる年間170億円のランニングコストの大半は 人件費なのですから、 ・全件照合作業は国民的合意がある ・民間の雇用環境は大震災後さらに悪化し生活保護者も200万人を突破 という中では、照合作業は臨時的国家事業として、仮に数万人規模だと しても貴重な雇用の受け皿になりえる事業です。 とりわけ、大震災で職を失った方や、食品・観光業など震災・原発の直接・ 間接的影響で失業した方など次への繋ぎが必要な方にとっては、臨時的ながら も決められた期間確実に働けるこの仕事は非常に有意義であるはずです。 年金記録の全件照合作業は人海戦術で行われており、作業する人が多いほど 早く年金記録が正常化されますので、民主党は、次々に約束を破りマニュフェ スト詐欺などといわれている中で、これほどわかりやすく大義のあるものくら いは前倒しで約束を達成してもらいたいものです。
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