第22号 年金、みんな怒っています!|過払い年金の返還 主婦年金が不要なら、他の年金の返還(年3万件)は?

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第22号 年金、みんな怒!|過払い年金の返還 主婦年金が不要なら、他の年金の返還(年3万件)は?

号数…第22号
発効日…【2011/11/8】
購読者数…139名
件名…過払い年金の返還 主婦年金が不要なら、他の年金の返還(年3万件)は?

┏━━ ●  年金、みんな怒っています!  ● 第22号

 ◎ 過払い年金の返還 主婦年金が不要なら、他の年金の返還(年3万件)は?
        
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          【 平成23年11月8日版  第22号 登録数 139名様 】



●すでに受け取った年金を条件付き返還する予定 → すべて返還不要に変更?

「3号」から「1号」への届出をせずに、本来ならば未納のところを「3号」扱い
となっていた主婦年金(※)の問題で、その解決策が再度年金の常識を逸脱した
ものとなっています。

(※今回の「主婦年金」は、不整合記録を持つ人の中で、すでに年金を受給して
いる人の過払い部分の年金を指しています。)

すでに新聞等で指摘されているので詳細は省きますが、要はもらい過ぎに
なっていた年金の過払い部分について、一部どころか全額について返還を求め
ないことにしたのです。

つい先月(2011年10月)、厚生労働省がまとめた案では、時効にかからない過去
5年分について過払い分の返還を求めることとし、その返還請求額は、最大でも
訂正前の年金の10%でした。

それですら、これまでの過払い年金の対応と比べると優遇措置であるにもかか
わらず、なぜ政府・民主党は「全額返還求めず」というさらなる不公平に
踏み込むのでしょうか。


●ここでいう主婦年金の概要

・不整合記録を有する年金受給者の対象者数 → 5.3万人
・当該一人当たりの不整合月数 → 6.8月(年金月額1000円相当)
・当該不整合記録が最も長い者の不整合月数 → 128月(10年8ヶ月)


●「高齢者の生活に配慮すべきだ」(10月28日民主党厚生労働部門会議)

返還を求められるのは年金を受給している高齢者だということを考えれば、その
生活には配慮しなければなりませんが、公的年金はルールに沿って運営されてお
り、恣意的な判断で操作できるのならば、これまでも救ってもらいたいと思える
事例は数多くありましたし、年金生活者への過払い金の返還は、現在進行形で
年間3万件も行われています。

そのどちらも「年金受給の高齢者」なのですから、その他の過払い年金返還が
免除されずに、主婦年金の過払い年金だけが返還を免れる理由はありません。

むしろ、他の過払い年金の代表的なものである加給年金などは、しくみが複雑で
手続きの失念しやすさは主婦年金以上であると思われます。

いずれにしろ、どちらも法律どおりの必要な手続きをしなかったことが過払いの
原因となっており、主婦年金に限った特別扱いは理解できません。


※以下、今回のテーマの関連外部リンクです。


社会保険庁HP「加給年金額の過払いについて」
http://www.sia.go.jp/infom/press/houdou/2003/p0627-1.htm
平成15年当時。加給年金過払い件数約7200人、過払総額約24億円


平成15年5月7日提出質問第91条 公的年金の支給業務に関する質問主意書
「衆議院議員中根康浩君提出公的年金の支給業務に関する質問に対する答弁書」
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b159091.htm
1999年6月から2003年6月の4ヶ月間にわたり発生したとされる厚生年金の
「加給年金」の支給ミスについて、別表1で示されたデータは次の通り

■加給年金の過払金額 → ■加給年金の過払件数
・20万円以下 → 1,875件
・20万円超40万円以下 → 1,877件
・40万円超60万円以下 → 1,247件
・60万円超80万円以下 → 763件
・80万円超100万円以下 → 377件
・100万円超120万円以下 → 110件
(合計6,249件)
・最低額 → 19,283円(該当件数は9件)
・最高額 → 1,193,816円(該当件数は1件)
・平均額 → 約386,000円

「加給年金の過払の返還については、その対象者ごとに年金額の変更を行って
おり、過払分については法律上の原因がないことから、過払の金額等をお知らせ
し、不当利得返還請求権に基づき返納を請求している」
(答弁書「一の(1)について」より)

そして、その具体的な返還方法や過払総額は、
「加給年金の過払の対象者全員に対して返還請求を行っており、対象者ごとに
現金による一括返納若しくは分割返納又は年金の減額調整のいずれかの方法に
より返納していただくこととしているところである。平成15年度末時点の返納
された額については現在調査中であるが、加給年金の過払い対象者のうち、
返納方法について申出を行った者の数は、本年4月30日現在で6,111人であり、
これらの者に係る過払総額は23億4719万6619円である。」


第4回社会保障審議会第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会資料
>第3回特別部会における委員の依頼資料(PDF:85KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001aro7-att/2r9852000001arsc.pdf
・年金の過払が発生した場合の返納事務処理について
(3枚目の左右両端下に表記してある1万5000件、合計3万件は毎年発生の数字)


平成23年5月20日
社会保障審議会第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会報告書(6枚目)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001csyv-att/2r9852000001ct2t.pdf
「現行の行政実務においては、裁定が誤っていることが判明した場合には、
原則としてこれを取り消した上で再裁定を行い、その結果、年金が減額となる場合
には、すでに支払った年金の過払い分は、不当利得として返還(時効にかからない
過去5年分)を求めている。」


おはようとくしま
不明の年金記録3~納得できないケース~
http://www.jrt.co.jp/tv/ohayo/2007/0621.htm
夫が生前に年金をもらいすぎたとして、現在遺族年金からの返還。
その返還額600万円・・・。


●2010年8月には、76歳男性への203万円の過払い年金返還要求がニュースに

(2010年8月19日読売新聞より)
『「旧社保庁が年金支給ミス」と200万返納要求

年金記録に漏れがあったとして、本来受け取るべき年金との差額分約327万円を
2年前に受け取った男性(76)=横浜市保土ヶ谷区=に対し、日本年金機構
(旧社会保険庁)が計算ミスによる過払いを理由に約203万円の返還を求めてい
ることが18日、分かった。

男性は「支給された金はすでに生活費に充当し、返せない」と困惑している。

男性は、旧社保庁による年金記録のずさんな取り扱いが問題になっていた
2008年2月、厚生年金保険料の納付記録が28か月分漏れていたのに気づいた。

記録の訂正が行われ、同庁の社会保険業務センター(東京都杉並区)が受給開始
までさかのぼって再計算し、男性には1994~02年に支給された年金と、再計算後
の差額約327万円が08年5月に支給された。

09年9月になって男性が、2か月分の納付記録漏れが新たに見つかったとして、
旧社保庁に再修正を求めたところ、同機構から今月、過払い分の返還を請求する
文書が届いた。

「お詫(わ)び」と書かれた8月3日付の文書は、ミスを謝罪する
とともに、過払い分は今後支給される年金から差し引くか、一括・分割での返納
を提案している。

同機構などによると、再計算した際、配偶者が年金を受給していない場合にのみ
加算される加給金について、男性の妻が年金を受けた期間まで加算するミスをし
た上に、「61万円」を「91万円」と誤入力したという。

男性は「旧社保庁のずさんな体質と変わっていない。このままでは生活できなく
なる」と怒っている。

日本年金機構は「あまりないケース」としたうえで、「あってはならない人為的
なミス。大変申し訳ない。過払い分は、今後支払う年金の原資となるので、
男性には返納をお願いするしかない」としている。』

これは民主党に政権が移ってからのニュースです。
76歳男性の困惑に手を打つことはなかったのですから、いまさら「高齢者の生活
に配慮すべき」などと言える道理があるのでしょうか。

その理由で救うのならば、当然どちらも救わなければならないはずです。
もっとも、そうすれば間違いだけではなく不正も頻発する可能性が高いと思われ
ますが。


●本当の目的は?

「高齢者の生活に配慮すべき」は、いささか説得力に欠けるということで、
「(主婦年金)過払い年金返還不要」の本当の目的を考えてみました。

救済対象者が5.3万人ということを考えると、狙いは直接の対象者ではなく、
高齢者全般に対するイメージ戦略ではないかと思われます。

ここのところの民主党は、年金支給年齢引上げや消費税のアップなどで野党時代
の時のような弱者の側に立って得点を挙げる機会がめっきりと減り、このままで
は首相延命に欠かせないアメリカが求めるTPP参加もおぼつかないと考え・・・。

10月14日の小宮山厚生労働省大臣の支給年齢引き上げ案提出先送りの発表といい
今回の厚生労働省案からの急展開といい、急いでいる感がアリアリですので、
とりあえず目の前にあるもので得点を取りにきたと考えるのが自然であるように
思われるのですが真相はいかに?


[注]
今回の内容は、平成23年11月8日現在の状況を元に記しています。
運用3号制度の廃止のように、しくみが変わる可能性がありますのでご注意
ください。


●おわりに

メルマガを発行されている他の方は、1回どれくらいの時間をかけているので
しょうか。
私は、テーマの決定から発行まで、延べ10時間程度は掛かっていると思います。

パソコンの前に座っている時間だけではなく、風呂やトイレ、寝る前などに
内容や表現の仕方について頭の中で考えを巡らせているのですが、
「これでいこう」という方向性が定まるまで、モンモンとしている時間が
長いのです。(他にも資料収集と知識の再確認の時間が長い)

また、一度寝て起きて再読すると、昨日の印象とはまったく別物になっている
こともよくある話で、そのため修正作業にも時間を取られます。

スラスラと文章を書ける人が本当にうらやましいです。

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