厚生年金・国民年金増額対策室 > 年金、みんな怒!(バック) > 第28号 実質6割が未納者…「免除」頼みの国民年金保険料『納付率』回復のウラ側
┏━━ ● 年金、みんな怒っています! ● 第28号 ◎ 実質6割が未納者…「免除」頼みの国民年金保険料『納付率』回復のウラ側 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 平成26年9月29日版 第28号 】 今回は、国民年金保険料の『納付率』がテーマです。 「平成25年度 国民年金納付率(60.9%)4年ぶり60%台回復」 実際は・・・ 納付率が60%なのではなく、実質未納者が60%であり、 実質未納者は、これからも増加していきます。 ●公表の『納付率』の計算では見えない全額免除者の増加 『納付率』を上下させる要因はいくつかあるのですが、 公表の納付率の計算から除外されている「全額免除者」の数を含めて計算して みると、近年の実際の納付率は40%程度しかありません。 また、公表の納付率が60%付近で踏みとどまっているのとは対照的に、40%程度 である実際の納付率は、平成25年度の微増を除き下降の一途を辿っています。 これは、全額免除者の数が近年増え続けているためです。 「未納者→全額免除者」…納付率が向上 となるのです。 ★ 近年の「実際の納付率」(公表の納付率)【全額免除者の人数】の推移 平成19(2007)年度=「47.6%」(63.9%)【517万人】 平成20(2008)年度=「45.7%」(62.1%)【521万人】 平成21(2009)年度=「43.7%」(60.0%)【535万人】 平成22(2010)年度=「42.4%」(59.3%)【551万人】 平成23(2011)年度=「41.1%」(58.6%)【568万人】 平成24(2012)年度=「40.3%」(59.0%)【587万人】 平成25(2013)年度=「40.5%」(60.9%)【606万人】 ------------------------ ・注1…ここでの「全額免除」は、納付猶予も含んでいる。 ・注2…公表の納付率は、国民年金保険料の納付率で、現年度分納付率のこと。 ・注3…実際の納付率は、後述のような形で、個人的に限られた公表資料の 中で恣意的に計算したものであり、公式なものではない。 これについては、自民党の河野太郎議員が厚生労働省に計算させたというものが 公開されているのて、ここに抜粋しておく。(平成19~24年度分) ○外部リンク こんなに低い保険料納付率(2014年05月28日)より抜粋 http://www.taro.org/2014/05/post-1481.php 「分母に免除・猶予を加えて、同じ期間の実際の納付率」 平成19(2007)年度=47.3% 平成20(2008)年度=45.6% 平成21(2009)年度=43.4% 平成22(2010)年度=42.1% 平成23(2011)年度=40.8% 平成24(2012)年度=39.9% ------------------------ 平成25年度については、一時的な景気回復による単純な納付者の増加のほか、 無職・非正規雇用等の1号未納者が第2号へ移ったということ等のプラス要因 が納付率向上に大きく寄与したものと推測されます。 ●「実際の納付率」の計算(平成25年度・恣意的な計算) 全額免除者の数を含めた実際の納付率の計算をしてみます。 使用するのは、 ・平成25年度の全額免除者の人数(月数に変換する) ・平成25年度の現年度分の納付対象月数 ・平成25年度の現年度分の納付月数 資料は、下記1ページ目と3ページ目の数字を使います。 ・平成25年度の国民年金の加入・保険料納付状況(PDF) http://www.mhlw.go.jp/ file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/0000048722.pdf まず、平成25年度の全額免除者の人数を月数に直す必要がありますが、これは、 単純に月数である12を掛けます。 本来ならば、現年度分の全額免除ですので、最大で12月となるところですが、 前年度以前からの全額免除については、年度初めから引き続いて免除であり続け ることが想定されるため、平成25年度の増加分も含めて「掛ける12」で計算して も大勢には影響しません。 → 606(万人)×12(月)=7272(万月) 計算式は、 納付月数 ÷ (納付対象月数+全額免除者の対象月数) 単位は(万月) → 8817 ÷ (14481+7272) =8817 ÷ 21753 =0.4053(≒40.5%) これが、平成25年度の実際の納付率です。 公表と実際の納付率の差は、 公表の納付率「60.9%」-実際の納付率「40.5%」=20.4% ●「4年ぶり」の検証 「4年ぶりに60%台回復」 ここでは、「4年ぶり」の変化に全額免除者の増加数を含めて計算したらどう なるのかをみてみます。 平成21年度の公表の納付率「60.0%」 全額免除者の数は、平成21年度「535万人」から平成25年度「606万人」となり ましたので、全額免除者の増加数は「+71万人」 まず、確認として、平成25年度の公表の納付率「60.9%」の計算から始めます。 納付月数=8817万月 納付対象月数=14481万月 → 8817 ÷ 14481=0.608(≒60.9%) ここの計算に、全額免除者数の増加分を入れ込みます。 全額免除者の増加分を月数に置き換えるため、 これに12を掛けます。 71(万人)×12(万月)=852万月 この852(万月)を計算に入れます。 → 8817 ÷ (14481+852) =8817 ÷ 15333 =0.575(≒57.6%) よって、平成25年度の公表の納付率は、全額免除者の数の増加分を入れると 57.6%となります。 確かに、平成21年度「60.0%」~50%台~平成25年度「60.9%」という経緯 によって60%台を回復したことは事実ですが、 全額免除者数の増加分を含めて計算すると、 公表の納付率は、4年ぶりに回復どころか「3%」程度下がるため、 4年前よりも2%の下落という結果になるのです。 ●委託民間事業者に課された全額免除者数の達成目標 現状では、公表の納付率の維持向上のためには、全額免除者の数の増加が 欠かせません。 だからなのか、意識的に全額免除者を増やしていると思えるフシが見られる のです。 それは、日本年金機構の資料から読み取れます。 日本年金機構が国民年金保険料の収納事業を委託している民間事業者に対して課 している達成目標は、未納保険料分の保険料納付のみならず、全額免除者数に ついても獲得目標が設定されています。 契約(事業対象)期間が平成26年10月1日から平成29年9月30日までの 「国民年金保険料の収納事業に係る民間競争入札実施要項」の別紙2の達成目標 一覧という資料の40ページ目から、その達成目標を抜粋します。 ○外部リンク http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/0000019347Tnag23EtRM.pdf 26年度免除等=25年度免除等率(見込)+1.2% 27年度免除等=25年度免除等率(見込)+2.4% 28年度免除等=25年度免除等率(見込)+3.6% 29年度免除等=25年度免除等率(見込)+4.8% 30年度免除等=25年度免除等率(見込)+6.0% 同45ページによると、「1.2%」というのは免除等達成目標加算率といい、 平成22年度から平成24年度における免除承認率の伸び率の平均となっています。 「1.2%」がどのような計算による結果なのかは不明なのですが、 平成22年度から平成24年度の全額免除者の数の増加を見れば、大体どの程度を 獲得目標としているのかという想像はできます。 平成22年度=前年度比「+16万人」 平成23年度=前年度比「+17万人」 平成24年度=前年度比「+19万人」 すなわち、全額免除者の獲得により、全体数としてはこの程度の純増となるべく 達成目標が設定されているのだと思われます。 なお、第1号被保険者と全額免除者の人数の推移は下記の通りです。 平成19(2007)年度=第1号被保険者 2001万人:全額免除者 517万人 平成20(2008)年度=第1号被保険者 1966万人:全額免除者 521万人 平成21(2009)年度=第1号被保険者 1951万人:全額免除者 535万人 平成22(2010)年度=第1号被保険者 1904万人:全額免除者 551万人 平成23(2011)年度=第1号被保険者 1872万人:全額免除者 568万人 平成24(2012)年度=第1号被保険者 1834万人:全額免除者 587万人 平成25(2013)年度=第1号被保険者 1779万人:全額免除者 606万人 今後、人口ボリュームがあり納付率も高い高齢層が次々と60歳を迎えて第1号を 抜けていくことを考えると、ますます実際の納付率は低下していくことに なります。 ●全額免除者数ばかりが目標を達成(平成25年度実績) 委託民間事業者の、達成目標に対する実績を見てみると、保険料を払ってもらう 方の実績が散々であるのに対し、全額免除者の目標達成実績は、非常に優秀な ものとなっています。 ○外部リンク 平成25年度の国民年金保険料の納付状況と今後の取組等について (平成25年度の取組実績) http://www.mhlw.go.jp/file/ 04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/0000048922.pdf 7ページ目の「達成目標の達成状況」(平成25年度) (1)事業所別の達成目標の達成状況(市場化テスト事業)より、 平成24年10月から平成25年9月分のデータを抜粋すると、 【免除等】 ○ 達成=297事業所 × 未達成=15事業所 【現年度保険料】 ○ 達成=14事業所 × 未達成=298事業所 まるで真逆の結果です。 目標の設定水準は、全額免除の場合でも見たように、近年の実績をもとにして いますので、決して現実離れしたものではありません。 それにもかかわらず、これだけ実績に差が生じるということは、 全額免除の獲得にばかり力が注がれていると思わざるをえません。 ●納付猶予の対象を30歳未満から50歳未満になり、全額免除者がさらに増加 (平成26年10月から施行) 平成26年4月に納付猶予の対象者を拡大する法改正があり、これにより、 全部が全部ではありませんが、30歳台~40歳台の低所得の非正規労働者等の 第1号未納年金は納付猶予となり、全額免除者の人数はさらに増加することに なります。 結果的に、法律面でも、納付率の向上を後押ししているわけです。 ●おわりに あくまで推測ですが、厚労省が『納付率』にこだわっていると思われる理由は、 厚労省の省益問題です。 厚労省は、基礎年金は現状のままの社会保険方式で運営していくことを望んで おり、これがもし「基礎年金の税方式化(消費税)」へと移行してしまうと、 年金保険料収入はなくなり、その財源は財務省へと移されることになります。 つまり、年金特別会計による既得権益の縮小です。 そのため、寝た子を起こすなではありませんが、税方式化の議論を呼び起こす ことになる『納付率』は、現状以上をキープしておきたいのでしょう。 なお、そもそも「未納は問題ない」とする専門家の主張もありますが、年金財政 という限られた範囲では正しくても、生活保護の増加による国家財政への悪影響 を招く元ですので、免除も含めて、未納の増加に対する軽視は禁物です。 いずれにしても、今の納付率の計算では、全額免除者の実態が見えにくくなって いますし、あらゆる取組により公表の納付率の維持が図られている間は、その 変化にも気が付かぬまま事態が悪化していくことになります。 いつの日か、納付率を公表する時には、全額免除者を含んだ実際の納付率との 2本立てで公表されるようになることを期待します。
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