厚生年金・国民年金増額対策室 > 消えた年金記録とは? > 「消えた年金」第三者委員会 支給判断基準と4事例
平成19年(2007年)7月10日。消えた年金対策に取組む第三者委員会が、消えた年金認定における判断基準を公表しました。 事例は「記録不備年金の支給判断事例集」として4事例を取り上げていますが、そこから「消えた年金」認定の考えや方向性を読み取ることができます。
30年以上、国民年金保険料を納付してきたが、自分の年金記録を確認したところ、自分の分が途中3カ月間だけ未納となっていた。ずっと夫婦の分を一緒に納付していた のだから、夫の分が納付済みとされていながら、自分の分だけ未納となっているわけはなく、支払ったことに間違いない。
社会保険庁に、申立人および配偶者の国民年金保険料の納付状況および厚生年金の加入状況を確認する。
申し立て期間を除けば、長期間継続して納付しているにもかかわらず、一回かつ短期間の未納期間が存在すること自体が不自然で、納付があった可能性が高いもの と考えられる上、同居している夫には、妻の未納期間も含めて未納期間が全く存在しないことを考慮すれば、特段の事情のない限り、申し立て通り、納付があったものと認め ることができるのではないか。
この事例から読み取れること
この事例から読み取れることは、「不合理ではなく」「確からしい」判断の決め手とはいえない事情で認定する場合、その材料が多ければ多いほど認定されやすく、 単独ないしは少数しか材料がない場合には認定されにくいということです。
同じような例で、配偶者がいない場合や、未納であった期間が飛びとびで存在する場合、または未納期間自体が長い場合にはどうなのか。 こういう場合には、ともすれば厳しい判断になるものと思います。
【朝日新聞2007年7月10日2面より当事例の関連記事引用】
「(元社会保険事務所職員の話)夫婦の一方が保険料を納め、もう1人は納めていないことは十分あり得る。かつて国民年金は、妻が年金を納めていないと、 夫が亡くなったときの『母子年金』が出なかった。未納世帯の徴収に行き、せめて奥さんだけでも納めた方がいいと説得した」と話す。 86年度以降は、逆に夫が未納だと遺族基礎年金がでなくなったため、夫だけが保険料を納めている場合もありうる。
30年以上国民年金保険料を納付してきたが、途中一年間が未納となっていた。未納となっていた期間は、自治会の役員が集金に来てくれていたので、 支払ったことに間違いない。
申立人に対し、当時の保険料徴収に関する自治会関係者の証言がないか、その他参考資料がないか確認する。
申し立て期間以外には、30年以上未納が存しないこと、申立人が保険料を納付していた旨の自治会役員の証言があり、 当該自治会役員が、当時保険料徴収事務を委託されていたことは資料により裏付けられていることを考慮すれば、特段の事情のない限り、申し立て期間全体について、 納付があったものと認めることができるのではないか。
この事例から読み取れること
この事例も決め手となる証明材料はないものの、複数の状況を合わせると認定できるというものです。国民年金の保険料徴収を委託されていた自治会役員の証言や実態資料など客観的かつ 比較的有力な材料があり・・・という実際にはなかなかないと思われるケース。
注目は1年という数字を出してきていること。これだけ材料が揃って1年という数字を出してきたことを考えると、他に有力な材料がない場合で1年間未納の場合はどうなのか。 この事例から、基本方針の一つである「未納期間が短期間」というその具体的な年数は、極めて短い期間を意味しているのではないかと思われます。
1979年2月に、市役所職員から、さかのぼって保険料を支払うことができると聞き、それまで未納だった期間全部の保険料31万2千円を支払ったことを覚えており、 未納であるはずがない。
申立人に対し、納付に関する出金状況を記載した預金通帳や家計簿等がないか等を確認する。
申し立てに係る特例納付以外には、継続して保険料を納付している上、保険料支払いに関する家計簿の記載が、 特例納付ができる時期、金額と合致しており、それを裏付ける預金通帳も存在することから、特段の事情のない限り、納付があったものと認めてよいのではないか。
この事例から読み取れること
特例納付の場合、まとまった期間の未納期間となるために、その線引きはかなり厳しいのではないかと思われます。 今回の事例においても、そもそも古すぎて存在すらしていないことが多いと思われる「家計簿」「預金通帳」の2点共に判断材料としている上に、 申立て期間以外に未納がないといったような、ハードルの高さ。特例納付で「消えた年金」となってしまった人は、よほど心してかからないと認定は難しいのではないでしょうか。
1979年5月1日にA事業所の資格喪失、同月の加入記録がないとのことであるが、同一企業内の転勤であり、 一度も退職したことがないことから、被保険者期間に空白が発生するはずがない。
同一企業内の転勤であり、給与明細から保険料控除があったことが明らかである上、雇用保険の記録が申し立て内容と合致し、 さらに、同事業所から同時期に転勤したほかの従業員5人について同様の被保険者期間の欠落のケースが確認されないことから、 特段の事情がない限り、事業主から正しい届け出があったものと考えて記録訂正を求めてよいのではないか。
この事例から読み取れること
厚生年金については客観的な記録が残っている可能性があり、国民年金よりも比較的年金記録が回復する可能性が高いものと考えられますが、 事例においては複数の材料によって認定される形となっています。古い会社の場合存在していないことも多く、会社名すら覚えていないということもありますが、 認定されるためには自ら資料を揃えなければ土俵に立てないということでしょうか。
第三者委員会が発表した年金記録の申立てに対する判断の基準の大枠は次の3点です。
消えた年金に対する第三者委員会の判断基準は次の通りです。 これらはプラスの判断基準(積極的事情)ということで、該当する項目が多ければ多いほど 「消えた年金」が年金記録として認定される可能性が高まります。
なお、「下記関連資料及び周辺事情は、例示であり、個別事案に応じて、考慮すべきほかの関連資料及び周辺事情が加わることがあり得る。」と注意書きがしてありますので、 今後どのような変更・追加があるのかは注目していかなければなりません。
※短期間とは、数ヶ月から、場合によっては1年を超える期間もありうるという期間です。 (2007年7月14日朝、TBS朝ズバにおいて、第三者委員会委員長の話。)
当該事業所は適用事業所であるが、当該申立人の在籍期間中の年金記録が社会保険庁に全く残されていないケース。
【 申立人が、申し立て期間(この欄においては、未加入とされている期間をいう)において、適用事業所の被保険者に該当していたか(保険料納付が推定されるか) 】
当該申立人が申し立てる標準報酬月額等が社会保険庁の年金記録と異なっているケース。
【 申立人が、申し立て期間(この欄においては、標準報酬月額等が異なるとされている加入期間をいう)において、適用事業所の被保険者に該当していたか(申し立てに係る標準報酬月額等に基づく保険料納付が推定されるか) 】
【 事業主が、申し立て期間において、適切な標準報酬月額等に係る届け出をしていたか。 】
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