厚生年金・国民年金増額対策室 > 年金、みんな怒っています!(バックナンバー) > 第20号 法律違反が一番お得? 平成23年1月『運用3号適用』制度が施行
┏━━ ● 年金、みんな怒っています! ● 第20号 ◎ 法律違反が一番お得? 平成23年1月『運用3号適用』制度が施行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 平成23年2月5日版 第20号 購読者数 131名様 】 今回は、平成23年1月1日施行の『運用3号適用』がテーマです。 悪意はないとしても、結果的には「届出義務」を守らなかった人が最も得をして しまうという不思議な年金救済制度。 「正直者が馬鹿を見るだけ。」 「保険料を払う人への背信行為だろう。」 「保険料を納めるのがバカらしくなった。」 早くも、このような声が拡大しているようです。 ● 『運用3号適用』とは この制度は、第3号被保険者だった人が、その後第1号被保険者になったにもかか わらず手続きを怠り、年金記録が第3号被保険者のままになっている場合におい て、本来ならば遡って1号に訂正するために「1号未納」が発生してしまうところ 、特別に3号のままの扱いにしてくれるというものです。 (ただし、62歳以下の場合、最大過去2年分は従来通り1号となり、この特例の 適用には、当該最大2年分の保険料納付が必要となります。) なお、誤って3号になっていた年金記録は「不整合記録」と言います。 ● 今までとこれからの不整合記録の訂正方法の違い 【今まで(平成22年12月まで)】 第1号被保険者と訂正する。 ・2年を越える部分 → 1号未納(年金に結びつかない) ・直近2年間の部分 → 1号 【これから(平成23年1月以降)】 直近2年間は第1号被保険者と訂正する。 ・直近2年間の部分 → 1号 (納付することで2年超部分の特例が適用) 2年を越える部分 ・3号のままとする(名称は「運用3号」とするが、実質同じ) → 保険料・・・負担しない → 年金給付・・・該当期間分は満額もらえる ● 不公平感を抱くであろう人たち ★ 保険料負担感の強い第1号被保険者からすれば・・・ 第1号被保険者といえば「自営業者等」ですが、実際には「臨時・パート」 「無職」で半数以上を超え、本人年間所得も「所得なし」が36.5%、 年収200万円未満で8割を占める状況となっています。 (平成20年国民年金被保険者実態調査より) 自営業者も多くは零細事業者ですので、第1号被保険者の年金保険料の 負担感は相当重く感じられていると思われますが、そのような中で法律通り手続 きをしていない本来1号である人たちだけが、罰則どころか逆に年金保険料も 払わずに、しかも低所得等で認められた国民年金免除者よりも多い満額の年金を もらえるというのは理不尽でしかありません。 (満額…不整合期間である「運用3号」とする期間についての話) ★ 元3号その1・・・法律通りに手続きをしてきた人からすれば 3号から1号になった時に、法律通りすぐに年金種別を変更してきた人は、 不整合記録も発生せずに、1号として保険料を納付した分だけ年金がもらえま す。(当たり前の話) 元3号だからといって、何の優遇もありません。 この人たちは、決して損をしたわけではないのですが、法律通りに手続きをし ないで、さらに保険料を負担することなく自分と同じ年金がもらえることに ついて、同じ元3号としては不公平感を感じるのではないでしょうか。 ★ 元3号その2・・・平成22年12月までに訂正した人からすれば (過去に不整合記録があった人たち) 3号から1号への変更手続きが遅れ不整合記録が発生した場合、 平成22年12月までの訂正方法としては、不整合記録の過去2年を超えた部分 を「1号未納」として取り扱ってきましたが、 平成23年1月1日以降の訂正であれば、誤った3号期間が「運用3号」とし て実質3号として扱われることになりました。 つまり、同じ期間の不整合記録であっても、訂正したのが「いつ」なのかに よって天と地ほどの違いが生まれ、その分岐点が平成23年1月1日なのです。 例えば、平成10年から15年まで5年間の不整合記録があったとすれば、 平成22年12月までの訂正ならば5年間の「(1号)未納」となり、 平成23年1月からの訂正ならば5年間の「(3号)納付済」となるのです。 結果的に、不整合記録保持者としては、年金記録の放置が正解だったわけで、 平成23年1月1日以降も不整合記録をそのままにしていた方が得する期間が延びる という、これまたおかしなことになっています。 (ただし、本人自ら不整合記録に気がつくことは考えにくいので、 悪意の入り込む余地はないと思われます。) ★ 「消えた年金」被害者からすれば・・・ 「消えた年金」被害者とすれば、 ・保険料 → 納付した ・年金 → もらえない という不条理を味わい、民主党政権ならば短期決戦で解決してくれると思いき や、平成22年度の時の予算の段階から早くもトーンダウンしてしまう始末。 ※関連:22年度「年金記録問題予算」昨比アップも要求比半減 http://www.office-onoduka.com/nenkinblog/2010/02/22.html (古い話ですが、党の姿勢を知るには十分な出来事でした。) 今や、年金記録問題の解決までには10年掛かるとも言われており、 まだ「消えた年金」が解決していない人の怒り心痛は察するに余りあります。 一方、今回『運用3号適用』で救われる人は、 ・保険料 → 納付しない(負担する人もほんの一部だけで済む) ・年金 → もらえる というのですから、「消えた年金」被害者からすれば無茶苦茶な話です。 特に「消えた年金」のせいで無年金になってしまっている人は悲惨です。 本来ならば、申告する「消えた年金」の期間が不合理でない限り特例で 即刻受給資格期間(合算対象期間)とみなすなどの措置があってしかるべき なのですが、そうした動きもありません。 「運用3号適用」の制度の対象となる人は100万人とも言われていますが、 この制度によって年金への信頼を無くす人の数はいかほどに・・・。 ●関連:「消えた年金」という言葉が消えたワケ ところで、最近「消えた年金」という言葉をすっかり聞かなくなったと思って いたのですが、週刊ポストの2011年2月4日号にその答えがありました。 ------------------------------ ↓ここから引用 【厚労省の圧力で「消えた年金」と書くのを止めた大手メディア】 消えた年金問題はいまだ収束することがないが、大マスコミは、最初から年金 問題を追及する気などないのである。それを物語るのが「宙に浮いた年金」と いう新聞用語。旧社会保険庁の元幹部が語る。 「5000万件の記録が統合されていないことが発覚したのは2006年ですが、当時 はすべてのマスコミが『消えた年金』と書いた。ところが、しばらく経つと厚 労省側が“記録は誰のものか分からないだけ。だから、消えたという表現は使 うな”とクラブ記者たちに求め、以降、新聞・テレビは『宙に浮いた年金』と 報じるようになった」 国民からしてみれば自分の年金が消えたことに変わりはない。この時から大 メディアは国民ではなく、役所の代弁者に成り下がったのである。 ↑ここまで ------------------------------ また、同号の 「消えた年金問題 年金役人たちは「不始末の隠蔽」に才覚発揮」 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110125-00000020-pseven-pol (Yahoo!ニュースへのリンク) では、「役人の筋書き通りの記事」を報じる大新聞の姿について言及。 今回のテーマの「運用3号適用」制度については触れられていませんが、 好意的な新聞と、否定的な新聞と、ほとんど無視している新聞とに分かれる のは、厚生省への遠慮の違いでもあるのでしょうか。 Y新聞などは、ひっそり?夕刊で解説しており、朝刊しか購読していない人 はどうやって詳細情報を知ればよいのでしょう。 そろそろ「政治とカネ」報道のエネルギーを、国民のためになるものに 分散させて欲しいものです。 ●最後に 今回の新制度。財源面はどうなっているのでしょうか。 マニュフェストで「最低保障年金」を提唱しつつ、いまだに必要な 財源の規模の詳細を明らかにしていないところをみると、このしくみについて も、財源の規模や手当ての仕方について考えられているとは思えません。 いまや財政危機で消費税を上げようとしている時であり、年金に絞ってみても 平成23年度予算案では、基礎年金の国庫負担分の財源が不足。 「鉄道建設・運輸施設支援機構」という何やら分けのわからないところから 利益剰余金1兆2000億円を充当するという、場当たり的な対処をする始末です。 それも裏取引のようなことをしつつ・・・。 関連:ダイヤモンドオンライン 岸博幸のクリエイティブ国富論 「第120回 鉄建機構1.2兆円国庫返納の実態は 国交省と族議員の勝利だ ~基礎年金財源問題に見る政治と行政のモラル崩壊 (2010.12.24) 」 http://diamond.jp/articles/-/10572 『運用3号適用』は、対象者が100万人ということで、必要な財源の規模自体は 限定的なものかもしれませんが、財源に余裕がない中、元々は権利のなかった 年金の財源ということで、その手当ての仕方は気になるところです。 ※『運用3号適用』については下記URLにてまとめております。 『特定の主婦だけ年金優遇 平成23年「運用3号適用」施行』 http://www.office-onoduka.com/nenkinblog/2011/01/_233.html (図にして説明。厚生省資料URLなども掲載。)
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