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22年度「年金記録問題予算」昨比アップも要求比半減

284億円(21年度の年金記録問題解決対策予算)
→1779億円(22年度の年金記録問題解決対策予算『概算要求』)
→910億円(22年度の年金記録問題解決対策予算)

これがなければ民主党への政権交代が起きなかったのでは?と思えるほど大きな問題である「年金記録問題」ですが、民主党初の本予算となる平成22年度予算では、どの程度年金記録問題解決に向けた予算が組まれたのでしょうか?

平成22年度予算案の主要事項(厚生労働省)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226490983016

PDF24ページ目「第2 信頼できる年金制度に向けて」より転載します。

※金額は平成22年度予算(カッコ内は21年度)

1 年金記録問題の解決910億円(284億円)
(1)紙台帳とコンピュータ記録との突合せ427億円(106億円)
被保険者名簿等の紙台帳等について、年金記録統合管理・照合システム(電子画像データ検索システム)を活用して個人単位でのコンピュータ記録との突合せを開始する。その際、予算を効率的・効果的に活用するため、受給に結び付く可能性の高い台帳等から優先的に照合する。初年度については、全体の約10%の突合せを行う。
(2)常に年金記録が確認できる仕組み(新規)40億円
年金加入者などの方が、パソコンを使いインターネットで即時に自身の保険料納付状況などの年金記録を閲覧、印刷できる仕組みを充実し、新たにID・パスワードもインターネットで取得できるようにする。また、自宅にパソコンのない方なども、市区町村や郵便局等で、職員等のサポートにより、年金記録を閲覧、印刷ができるようにする。
(3)年金受給者への標準報酬月額等のお知らせ122億円(111億円)
厚生年金受給者に対し、標準報酬月額の情報を含む年金記録をご本人に確認いただくため、お知らせを送付する。
(4)「今後解明を進める記録」の解明・統合等320億円(67億円)
サンプル調査など各種の解明作業による基礎年金番号に統合されていない記録の統合の促進、再裁定等の事務処理の促進などの対策を強化する。また、年金制度の本来の役割を確保するため、厚生年金の未適用事業所対策や徴収対策の強化を図るとともに、国民年金の適用・収納対策への効果的な取組みを実施する。

「年金記録問題」の解決に向けた予算は昨年度に比べて3.2倍(284億円→910億円)ものアップとなりましたが、かつての紙台帳照合についての発言『一年以内の作業終了には、莫大な人・モノ・カネが必要となるでしょう。全省庁から余剰人員を集めても不足する人員は、守秘義務を課したうえで、信頼できる民間に委託をして、国家プロジェクトとして取り組む覚悟が必要です。』(長妻昭著『消えた年金」を追って』リヨン社・初版発行2007年10月31日128ページより引用)、あるいは『そんなもの全部一年二年でやってくださいよ、人、物、金を集中投下して。』(厚生労働省:平成21年5月11日 171回国会 衆議院予算委員会http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/171/0018/17105110018026a.html引用)といった発言を思い返すと、ややトーンダウンした予算編成という印象です。

概算要求段階から半減した22年度「年金記録問題予算」

平成22年度予算の概算要求段階では、年金記録問題対策予算は「1,
779億円」で、年金保険料や年金受給額がわかる「年金通帳」についても予算が組まれていました。

下記表は、概算要求と平成22年度予算の金額との差額です。
(金額は平成22年度予算。カッコ内は概算要求との差額。)

1 年金記録問題の解決910億円(▲869億円)
(1)紙台帳とコンピュータ記録との突合せ427億円(▲362億円)
(2)常に年金記録が確認できる仕組み(新規)40億円(▲469億円)
概算要求では「年金通帳の導入」に509億円でした。「常に年金記録が確認できる仕組み」はその代替案でもあるため、509億円-40億円=▲469億円
(3)年金受給者への標準報酬月額等のお知らせ122億円(▲14億円)
(4)「今後解明を進める記録」の解明・統合等320億円(▲25億円)

当初2010年度(平成22年度)・2011年度(平成23年度)の集中対応期間2年間の中で、全体の7割(約6億件)の照合を完成させる予定でしたが、2010年度(平成22年度)は全体の約10%の照合、2011年度以降の計画は『明確な計画は立っていない』ということになりました。(『』2010年1月23日日経新聞5面記事より引用)

概算要求から大幅減の原因は「子ども手当」など他の予算措置のために予算確保が困難であったこと、調査の結果突合せする紙台帳の件数が少なかったこと、さらに費用対効果などが報じられているところです。

確かに、初年度見送りとなった「年金通帳」などは、あれば便利かもしれませんが、すでにねんきん定期便もありますし、深刻な税収減の中で509億円もの多額のコストを掛けて喫緊で作成する必要は薄く、現実に即した見直しかと思われます。

しかし、「国家プロジェクトとして、2年間集中的に取り組む」というスローガン(2009年衆議院選挙の政権公約)に触れる部分については、

【2009年12月13日読売新聞より】
『・・・4年間での全件照合は事実上不可能な情勢だ。年金記録の全件照合については、自公政権が10年かかると見積もっていたことに対し、野党時代の長妻氏は2年間での全件照合完了を強く要求した経緯がある。』(引用)

2年間や4年間の本当のところは、

『私もマニフェストを常に胸ポケットに入れておりますけれども、正確に言いますと、私どもが二年と申し上げておりますのは、二年間、記録問題への集中対応期間というふうに考えておりまして、集中的に二年の間に人、物、金を投下していくということでございます。そして一期四年の中で一定程度の年金の信頼を回復していく、こういうことをかねてより申し上げているところであります。』(平成21年11月18日 第173回国会 厚生労働委員会http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009717320091118002.htm長妻厚生労働大臣発言より引用)

4年後、具体的にどの程度の照合が完了しているのでしょうか・・・

関連:年金不信で高まる貯蓄率…経済への悪影響も?

平成21年度経済財政白書 第3章「雇用・社会保障と家計行動」の『社会保障制度への信頼醸成が個人消費下支えに寄与』によると、

『一般に、年金に対する信頼感が低い国ほど、高齢化要因を調整した貯蓄率が高い傾向がある。一方、我が国のデータからは、老後の生活不安や年金に対する不安が、老後の必要貯蓄額を引上げるという関係が確認できる。』(276ページ引用)

と指摘しています。

日本の家計貯蓄率は、昔に比べると低い水準になっているのですが、それは高齢化の影響が大きく影響しているためであり、高齢化要因を除けば先進国の中でも比較的高い水準であるとしています。

※高齢者、とりわけ無職高齢者は資産を取り崩して生活をしているために貯蓄率は低いものとなりますが、日本は急速な高齢化の中にあるために、全体として貯蓄率を見た場合には、高齢化によって自然と貯蓄率は低下してしまいます。(関連:加速する「無職高齢者世帯」の貯蓄取崩し

高齢化要因を除いた日本の家計貯蓄率水準

この図は、平成21年度経済財政白書 第3-3-7図「高齢化要因調整済みのSNSベースの貯蓄率」(http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je09/09f33070.html)の転載で、1962年の家計貯蓄率を100とした場合の貯蓄率の水準の変化を示しています。

これを見ると、1962年当時に比べ、2007年の家計貯蓄率(黒)は15.9という水準になりますが、高齢化要因を除く貯蓄率(ピンク)は103.5。すなわち、意外にも、日本人の貯蓄に対する姿勢は50年前と同じということです。(2009年8月6日読売新聞「危機と克服」参照)

過剰貯蓄の背景の1つに年金不信(NIRAレポートより)

少子高齢化や年金、景気などの研究・提言を行うシンクタンク、総合研究開発機構(NIRA)の研究報告書『家計に眠る「過剰貯蓄」-国民生活の質の向上には「貯蓄から消費へ」という発想が不可欠 2008年11月』(http://www.nira.or.jp/pdf/0804report.pdf)によると、日本の家計はかなりの額の過剰貯蓄があり、所得水準の低さにより貯蓄ができない過少貯蓄を除くと、フローで見た「貯蓄性向」が高すぎる可能性があると指摘。

貯蓄動機として「病気や不時の災害への備え」「老後の生活資金」等、そして過剰貯蓄の背景としては、公的年金制度に対する不信の高まりや公的年金制度への知識不足が上げられています。(P46)

今回の「予算削減(概算→予算)」が人々の年金不信を高める方向に作用したとすると、苦渋の削減も「見えない損失」の発生により事実上相殺されてしまうことに・・・?

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