●1ヶ月の可処分所得額
平成12年(2000年)「220,719円」
→平成20年(2008年)「160,186円」(-59,533円)
●1ヶ月の消費支出額
平成12年(2000年)「256,487円」
→平成20年(2008年)「210,378円」(-46,109円)
この数字は、平成12年(2000年)と平成20年(2000年)の「世帯主が60歳以上の世帯(無職世帯)」(総務省統計局の家計調査「家計調査年報家計収支編」http://www.stat.go.jp/data/kakei/npsf.htm)のデータからピックアップしたものですが、「わずか8年の間にこれほど!?」と思えるほど、高齢者世帯の生活収支が悪化していることがわかります。
「社会保障給付」が約5万円減少
無職高齢者世帯の生活収支悪化の主因は「収入の減少」であるわけですが、とりわけ収入の大部分を占める「社会保障給付」の削減が大きく響いています。
●1ヶ月の社会保障給付額(世帯主が60歳以上の無職世帯)
平成12年(2000年)「217,672円」
→平成20年(2008年)「160,621円」(-49,383円)
平成12年のデータでは、社会保障給付「217,672円」のうち公的年金給付は「216,189円」ですので、ここ(家計調査の項目)での社会保障給付はほぼ公的年金給付のことであると言えます。
これ以上年金を減らされると、さらに貯蓄の取崩しが加速しそうですが、それでも公的年金全体のバランスを考えればより一層の削減は避けられません。(マクロ経済スライドによる調整など、給付削減はすでに仕組みとして組み入れられています。)
※かつて60歳からであった厚生年金の受給開始年齢が完全に65歳支給となる2024年(平成36年)に向け、すでに2001年(平成13年)から段階的に引き上げが実施されていることも、ここでの社会保障給付の減少に影響しているのかもしれません。
無職高齢者世帯の「可処分所得」「消費支出」「黒字率」の推移
次は、年ごとの家計調査結果(資料元は上記と同じ)から、高齢者世帯(4分類)の「可処分所得」「消費支出」「黒字率(※)」を取り出して、その推移を見てみることにします。
※黒字率=(可処分所得-消費支出)÷可処分所得
黒字率を貯蓄率として見ることもあります。
解説参考:貯蓄率(ウィキペディア)
年 | 世帯主60歳以上 世帯 (無職世帯) | 高齢者世帯 (無職世帯) | 高齢単身世帯 (無職世帯) | 高齢夫婦世帯 (無職世帯) |
1995 | 黒字率-11.5% | 黒字率-9.2% | / | 黒字率-9.3% |
1996 | 黒字率-10.8% | 黒字率-6.0% | / | 黒字率-5.8% |
1997 | 黒字率-9.9% | 黒字率-6.3% | / | 黒字率-5.1% |
1998 | 黒字率-11.3% | 黒字率-6.1% | / | 黒字率-5.4% |
1999 | 黒字率-14.6% | 黒字率-7.4% | / | 黒字率-6.0% |
2000 | 黒字率-16.2% 消費支出256,487円 可所得220,719円 (-35,768円) | 黒字率-5.2% 消費支出233,553円 可所得221,973円 (-11,580円) | / | 黒字率-4.0% 消費支出232,697円 可所得223,718円 (-8,979円) |
2001 | 黒字率-20.4% 消費支出252,493円 可所得209,647円 (-42,846円) | 黒字率-14.5% 消費支出242,885円 可所得212,127円 (-30,758円) | / | 黒字率-14.3% 消費支出240,952円 可所得210,891円 (-30,061円) |
2002 | 黒字率-26.0% 消費支出256,167円 可所得203,280円 (-52,887円) | 黒字率-19.6% 消費支出247,814円 可所得207,252円 (-40,562円) | / | 黒字率-18.3% 消費支出246,270円 可所得208,215円 (-38,055円) |
2003 | 黒字率-24.6% 消費支出253,409円 可所得203,455円 (-49,954円) | 黒字率-16.4% 消費支出240,161円 可所得206,398円 (-33,763円) | / | 黒字率-15.7% 消費支出239,143円 可所得206,769円 (-32,374円) |
2004 | 黒字率-29.2% 消費支出253,058円 可所得195,803円 (-57,255円) | 黒字率-22.0% 消費支出247,448円 可所得202,771円 (-44,677円) | / | 黒字率-21.4% 消費支出244,215円 可所得201,173円 (-43,042円) |
2005 | 黒字率-27.4% 消費支出212,137円 可所得166,553円 (-45,584円) | 黒字率-21.0% 消費支出195,012円 可所得161,120円 (-33,892円) | 黒字率-28.0% 消費支出144,518円 可所得112,915円 (-31,603円) | 黒字率-17.4% 消費支出239,416円 可所得203,961円 (-35,455円) |
2006 | 黒字率-26.8% 消費支出206,912円 可所得163,145円 (-43,767円) | 黒字率-21.8% 消費支出190,503円 可所得156,429円 (-34,074円) | 黒字率-20.0% 消費支出138,560円 可所得115,444円 (-23,116円) | 黒字率-23.0% 消費支出238,758円 可所得194,101円 (-44,657円) |
2007 | 黒字率-28.8% 消費支出207,952円 可所得161,411円 (-46,541円) | 黒字率-25.0% 消費支出192,139円 可所得153,713円 (-38,426円) | 黒字率-26.1% 消費支出142,042円 可所得112,613円 (-29,429円) | 黒字率-24.2% 消費支出237,475円 可所得191,254円 (-46,221円) |
2008 | 黒字率-31.3% 消費支出210,378円 可所得160,186円 (-50,192円) | 黒字率-24.4% 消費支出194,050円 可所得155,952円 (-38,098円) | 黒字率-22.4% 消費支出141,428円 可所得115,528円 (-25,900円) | 黒字率-25.5% 消費支出242,773円 可所得193,385円 (-49,388円) |
注1:1995年から1999年までは家計調査の詳細が不明であるため、 家計調査の黒字率のみの記載とし、その数値については、 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」Marct-2008 『家計の資金の流れ(チャールズ・ユウジ・ホリオカ)』 http://www.mof.go.jp/f-review/r88/r88_006_018.pdf(274.54KB) 14ページより転載しました。 注2:枠内の「可所得」は可処分所得です。 注3:枠内下部の数値は「可処分所得-消費支出」の計算結果です。 注4:2004年までの高齢単身世帯のデータはありません。 注5:「高齢者世帯」は65歳以上の単身世帯または男65歳以上、女60歳以上から成る世帯で、少なくとも1人65歳以上の者がいる世帯です。 注6:「高齢単身世帯」は65歳以上の単身世帯です。 注7:「高齢夫婦世帯」は夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦1組のみの世帯です。 |
データの少ない高齢単身世帯を除けば、無職の高齢者世帯は、貯蓄の取崩し具合が加速していることがわかります。
ただし、消費支出と可処分所得の傾向は一様ではなく、例えば消費支出については「高齢夫婦世帯」だけが増加しています。(2000年→2008年比較)
これは、消費支出の細目を「高齢夫婦世帯(無職)」と「世帯主60歳以上の世帯(無職)」とで比べてみると推測できるのですが、『外食』『交際費』『こづかい(使途不明)』などの項目で「高齢夫婦世帯(無職)」の方が上回っており、相対的に暮らしぶりに余裕があることが窺えます。(世帯人数は前者が2人、後者は2人以上であるにもかかわらず)
夫婦2人で、働かなくとも暮らしていけるということからすると、定期収入はそこそこでもストック(貯金などの資産)があるか、あるいは独立した子供などいざという時に頼るべき身内が存在する・・・といったことが考えられるのではないでしょうか。
勤労者世帯との比較
最後に、『世帯主が60歳以上の世帯(勤務世帯)』と『世帯主が60歳以上の世帯(無職世帯)』の2つをを比較してみます。
なお、表の項目については上記と同様で、枠内上から「黒字率」「消費支出」「可処分所得」「可処分所得と消費支出の差異」となります。
年 | 世帯主が60歳以上の世帯 【勤務世帯】 | 世帯主が60歳以上の世帯 【無職世帯】 |
2000年 | 黒字率+18.4% 消費支出316,143円 可処分所得387,317円 (+71,174円) | 黒字率-16.2% 消費支出256,487円 可処分所得220,719円 (-35,768円) |
2001年 | 黒字率+19.6% 消費支出309,662円 可処分所得385,001円 (+75,339円) | 黒字率-20.4% 消費支出252,493円 可処分所得209,647円 (-42,846円) |
2002年 | 黒字率+14.5% 消費支出306,909円 可処分所得358,996円 (+52,087円) | 黒字率-26.0% 消費支出256,167円 可処分所得203,280円 (-52,887円) |
2003年 | 黒字率+12.8% 消費支出304,978円 可処分所得349,576円 (+44,598円) | 黒字率-24.6% 消費支出253,409円 可処分所得203,455円 (-49,954円) |
2004年 | 黒字率+10.5% 消費支出303,783円 可処分所得339,367円 (+35,584円) | 黒字率-29.2% 消費支出253,058円 可処分所得195,803円 (-57,255円) |
2005年 | 黒字率+8.5% 消費支出296,801円 可処分所得324,294円 (+27,493円) | 黒字率-27.4% 消費支出212,137円 可処分所得166,553円 (-45,584円) |
2006年 | 黒字率+9.0% 消費支出305,495円 可処分所得278,141円 (+27,354円) | 黒字率-26.8% 消費支出206,912円 可処分所得163,145円 (-43,767円) |
2007年 | 黒字率+11.1% 消費支出285,999円 可処分所得321,683円 (+35,684円) | 黒字率-28.8% 消費支出207,952円 可処分所得161,411円 (-46,541円) |
2008年 | 黒字率+9.0% 消費支出281,039円 可処分所得308,746円 (+27,707円) | 黒字率-31.3% 消費支出210,378円 可処分所得160,186円 (-50,192円) |
勤務世帯については、世帯主本人の勤務先収入のほか配偶者や他の世帯員の勤務先収入、さらに社会保障給付等もありますので、さすがに黒字率はプラスをキープしています。
しかし、2000年の黒字率18.4%が2008年には9.0%と落ち込んでおり、厳しい雇用・賃金環境や消費税の増税、エネルギー価格変動リスクなど他のリスク要因等を考えると、黒字率がマイナスに転じる日もそう遠くはないように思われます。(家計調査の家計調査において、消費税は消費支出の各項目の金額に含まれ、その他税金や社会保険料は非消費支出の項目に含まれています。)
※参考1・・・2008年のケースで見てみると、『勤務世帯(表と同じ分類)』の勤務先収入合計275,411円のうち、世帯主の収入が237,939円、配偶者の収入が20,387円、他の世帯員の収入が17.085円となっています。(社会保障給付は77,552円)
※参考2・・・2008年のケースで見てみると、『無職世帯(表と同じ分類)』の勤務先収入合計11,567円のうち、世帯主の収入が0円、配偶者の収入が4,537円、他の世帯員の収入が7.030円となっています。(社会保障給付は160,621円)