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「太り過ぎ」は「やせ」よりも長生きする?

「太っている人」と「やせている人」
長生きするのはどちらでしょう??

「太り過ぎ」と「やせ」のイメージ

答えは「太っている人」です。
(やや太目の人が最も長生き)

データは2009年に公表された東北大学研究グループと厚生労働省研究班の2つ(詳細後述)で、両者とも40歳時点の肥満度(BMIによる)を4グループに分け、それぞれ寿命がどのようになったのかを調査しました。

BMI(体格指数)東北大学研究G厚生省研究班日本肥満学会基準(参考)
BMI30以上肥満肥満肥満4度(BMI40以上)
肥満3度(BMI35以上40未満)
肥満2度(BMI30以上35未満)
BMI25以上30未満太りすぎ太り気味肥満1度
BMI18.5以上25未満普通普通正常
BMI18.5未満やせやせ低体重

東北大学研究グループは肥満度の低いグループから4段階「やせ」「普通」「太りすぎ」「肥満」、厚生労働省研究班は「やせ」「普通」「太り気味」「肥満」に分類。(BMI25以上30未満のグループだけは「太りすぎ」「太り気味」と表記が異なるので注意。)

BMI(ボディー・マス・インデックス)は人の肥満度を表す指数で、
次のような計算式で求められます。

BMIの計算式
体重(キロ) ÷ [身長(メートル)×身長(メートル)]
【計算例】…170cm(1.7メートル)、50キロの人の場合
50(キロ) ÷ [1.7(メートル)×1.7(メートル)]
=50(キロ) ÷2.89=17.3(BMI)
※この場合、BMIは18.5未満なので「やせ」の分類に入ります。

そして、調査の結果、40歳平均余命は・・・

長生き順BMI(体格指数)東北大学研究グループ厚生省研究班
1BMI25以上30未満【太りすぎ】
男性40.5歳、女性47.0歳
(「やせ」との差)
男性6.7歳、女性5.9歳
【太り気味】
男性41.64歳、女性48.05歳
(「やせ」との差)
男性7.1歳、女性6.26歳
2BMI18.5以上25.0未満【普通】
男性38.7歳、女性46.3歳
【普通】
男性39.94歳、女性47.97歳
3BMI30以上【肥満】
男性37.9歳、女性44.9歳
【肥満】
男性39.41歳、女性46.02歳
4BMI18.5未満【やせ】
男性33.8歳、女性41.1歳
【やせ】
男性34.54歳、女性41.79歳

「スリム=長生き」というイメージがあったのですが、
男性も女性も「やせ」より太目のグループの方が長生きでした。
いったいどうしてこのような結果になったのでしょうか?

体格と長生きを示す調査記事の詳細

東北大学研究グループと厚生労働省研究班の調査報告を、新聞記事を中心に見ていきます。

東北大学研究グループの調査結果記事

まずは2009年10月11日の日経新聞『「やせ」太りすぎより短命-東北大研究グループまとめ』の引用です。太目の人=長生きであることの要因を説明した箇所については赤文字にしました。

【「やせ」太りすぎより短命-東北大研究グループまとめ】

40歳の人の平均余命は、肥満度別にみると「やせ」の人が最も短く、最も長い「太りすぎ」の人より 6年程度短命との研究結果を、東北大公衆衛生学の研究グループが10日までにまとめた。

肥満度は体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)。研究グループは世界保健機関(WTO)の基準に基づき、18.5未満を「やせ」、18.5以上25.0未満を「普通」、25.0以上30.0未満を「太りすぎ」、30.0以上を「肥満」と分類。宮城県内の40~79歳の男女約4万4千人を1995年から2006年まで追跡調査し、分析した。

40歳の人の肥満度ごとの平均余命は、男女とも順序は同じで、「太りすぎ」が最長(男性40.5年、女性47.0年)。以下は「普通」(男性38.7年、女性46.3年)、「肥満」(男性37.9年、女性44.9年)、「やせ」(男性33.8年、女性41.1年)の順。

分析した大学院生の永井雅人さんは「やせすぎると細胞の機能低下などで血管の壁が破れやすくなるなどして、循環器疾患による死亡リスクが上昇するとの報告があるし、栄養不足が体の抵抗力を減少させるため、やせでは肺炎などにかかるリスクが高まるとの研究もある。今回の結果は、そうした影響によるのではないか」と話している。

※日経新聞2009年10月11日号より引用

厚生労働省研究班の調査結果記事

続いて厚生労働省研究班の調査結果です。
2009年6月10日読売新聞夕刊『ポッチャリは長生き 40歳時点平均余命やせ形より7年-厚生省5万人調査』より引用します。(赤文字部分上記に同じ)

【ポッチャリは長生き 40歳時点平均余命やせ形より7年-厚生省5万人調査】

40歳時点の体格によってその後の余命に大きな差があり、太り気味の人が最も長命であることが、厚生労働省の研究班(研究代表者=辻一郎東北大教授)の大規模調査で分かった。

最も短命なのはやせた人で、太り気味の人より6~7歳早く死ぬという、衝撃的な結果になった。「メタボ」対策が世の中を席巻する中、行きすぎたダイエットにも警鐘を鳴らすものといえそうだ。

研究では、宮城県内の40歳以上の住民約5万人を対象に12年間、健康状態などを調査した。過去の体格も調べ、体の太さの指標となるBMI(ボディー・マス・インデックス)ごとに40歳時点の平均余命を分析した結果、普通体重(BMIが18.5以上25未満)が男性39.94年、女性49.97年なのに対し、太り気味(同25以上30未満)は男性が41.64年、女性が48.05年と長命だった。しかし、さらに太って「肥満」(同30以上)に分類された人は男性が39.41年、女性が46.02年だった。

一方、やせた人(同18.5未満)は男性34.54年、女性41.79年にとどまった。病気でやせている例などを統計から排除しても傾向は変わらなかった。やせた人に喫煙者が多いほか、やせていると感染症にかかりやすいという説もあり、様々な原因が考えられるという。

同じ研究で、医療費の負担は太っているほど重くなることも分かった。肥満の人が40歳以降にかかる医療費の総額は男性が平均1521万円、女性が同1860万円。どちらもやせた人の1.3倍かかっていたという。太っていると、生活習慣病などで治療が長期にわたる例が多く、高額な医療費がかかる脳卒中などを発症する頻度も高い可能性があるという。

※読売新聞夕刊2009年6月10日号より引用

厚生労働省研究班の調査の方は、下記URLにてPDFファイルが公開されています。

【生活習慣・健診結果が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究】
厚生労働科学研究費補助金 (政策科学総合研究事業 (政策科学推進研究事業))
総括研究報告書
http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/report_sub/H20s_seisaku_seikatu.pdf

寿命の長短だけではなく、医療費の高低と関連させた調査となっているところが非常に興味深いところです。平均余命が短いのに生涯医療費は高いというグループも・・・

【1ページ目より引用】

研究要旨

体格に関しては、40歳の平均余命は男女とも過体重(25.0 < BMI < 30.0)で最も長く、普通体重(18.5 < BMI < 25.0)、肥満(BMI > 30.0)、やせ(BMI < 18.5)の順であった。過体重とやせの間で、平均余命の差は男性7.10年、女性6.26年であった。

40歳男性の生涯医療費はBMIと直線的な関係を示し、肥満(1,521.3万円)とやせ(1,199.1万円)との間で1.27倍の差があった。

40歳女性の生涯医療費は肥満で最も高く、過体重、やせ、普通体重の順であった。肥満(1,860.3万円)と普通体重(1,480.4万円)との間で1.26倍の差があった。

【5ページ目より引用】

研究結果

2)体格が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究

40 歳男性の平均余命は過体重(41.64 年)で最も長く、普通体重(39.94 年)、肥満(39.41年)、やせ(34.54年)の順であった。過体重とやせの間で、平均余命の差は7.10 年であった。

40 歳男性の生涯医療費はBMI と直線的な関係を示した。すなわち、肥満(1,521.3 万円)で最も高く、過体重(1,510.5 万円)、普通体重(1,313.2 万円)、やせ(1,199.1 万円)の順に低くなっていった。肥満とやせの差は322.2 万円であった。肥満と普通体重を比較すると、平均余命は前者が短いのに、生涯医療費は前者の方が多いことが分かった。

40 歳女性の平均余命は過体重(48.05 年)で最も長く、普通体重(47.97 年)、肥満(46.02年)、やせ(41.79 年)の順であった。過体重とやせの間で、平均余命の差は6.26 年であった。

40 歳女性の生涯医療費は肥満(1,860.3 万円)で最も高く、過体重(1,613.7 万円)、やせ(1,484.7 万円)、普通体重(1,480.4 万円)の順であった。肥満と普通体重の差は379.9万円であった。普通体重では、平均余命が過体重に次いで長いのに生涯医療費は最も少なかった。

「成人後の5キロ以上の体重減少」で「死亡率」は1.4倍

以上、2つの資料から、太目の人は「やせ」より長生きするというデータを見てきましたが、今度は「成人後の5キロ以上の体重減少」と「死亡率」の関係を示す記事を見てみます。(2009年4月23日の読売新聞『成人後5キロ以上やせると死亡率1.4倍-肥満より危険?』より引用)

【やせると肥満より危険、5キロ以上減死亡率1.4倍-厚労省調査】

成人後に5キロ・グラム以上体重が減った中高年は男女とも、死亡する危険が1.3-1.4倍高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の大規模調査でわかった。体重が増えても死亡率増加との関係は認められなかった。肥満になると死亡率が上がるとする従来の研究とは反対の結果で、肥満の健康影響を重視する国の健診体制に一石を投じそうだ。

研究班は、全国の40-69歳の男女約8万8000人を平均約13年間追跡調査。がんや循環器疾患など主な病気、ダイエットによる激やせなどによる影響を除いた上で、20歳時からの体重変化と死亡率との関係を年齢別に調べた。その結果、調査期間中に6494人が死亡した。このうち、5キロ・グラム以上体重が減少した人は、変化が小さかった人に比べ、男性で1.44倍、女性で1.33倍死亡率が高いことがわかった。

一方、20歳時から5キロ・グラム以上体重が増加した男性は、死亡率が0.89倍に下がった。女性では変化が見られなかった。体重が10キロ・グラム以上増加した人で見ても、男女とも死亡率に大きな変化はなかった。これまでの複数の研究によると、極端な肥満は死亡率を上げる。しかし、日本人は外国人とは異なり、極端な肥満がもともと少なく、肥満が死亡率に与える影響が調査結果には反映しなかったとみられる。

やせると死亡率が上がる原因は今回の調査からはわからなかったが、体重低下で免疫力が落ち、感染症などにかかりやすくなることが考えられる。分析した斉藤功・愛媛大准教授(公衆衛生学)は「成人後に5-10キロ・グラム程度太るのは自然な現象。肥満の危険性が強調されることが多いが、体重減少も重視しないといけない」と指摘している。

※読売新聞2009年4月23日号より引用

注目は赤文字にした部分で、そもそも人は加齢と共に基礎代謝が減少する(若い時と比べて運動量も少なくなる)一方で食習慣はあまり変化しませんので、体重が増えることはむしろ現時点での健康の証です。

ところが「ダイエットによる激やせなどによる影響を除いた上」で成人後5キロ以上も体重が減っているということは、本来増えるべき5~10キロを考慮すると、10キロ以上も体重が減っていると捉えることもできます。

「がんや循環器疾患など主な病気」の影響による体重減少を取り除いていますので、おそらく他の病気やストレスなどが体重減少の原因だと思われるのですが、いずれにしろ-10キロは大きい数字ですし死亡率が高く出るのも納得です。

願わくば、職業や収入など「どのような人が成人後5キロ以上の体重減少になっているのか」がわかればなお良かったのですが・・・。

BMI24前後が長生き

これまでの話から、長生きするのはやや太目(東北大学研究グループ分類でいう「太り過ぎ」、厚労省研究班分類でいう「太り気味」の人であることがわかりました。

では、BMIで言えばいくらくらいの数値が最も長生きするのでしょうか?
2010年1月17日の日本経済新聞 SUNDAY NIKKEI 「ほどほど健康術」によると、これまで日本で理想的とされていたBMI22ではなく、BMIが24前後の人が最も死亡率が低く長生きであることがわかったと紹介しています。

【BMI 24前後が長生き】

(略)問題はこれらの指標が本当に健康状態を表すのに適しているかどうかだ。体脂肪率は誰にとっても分かりやすく広く知られてもいるが、その割に健康との関係を示すエビデンス(科学的根拠)がほとんどない。体脂肪率が高くとも、必ずしも健康に悪いとはいえないようだ。

一方、米国で行われた調査から興味深いことが分かってきた。4万人もの人々を対象に10年という歳月をかけた追跡調査で、BMIと腹囲をあらかじめ全員に測ってもらい、10年間の死亡率を比較するというものだ。その結果、BMIが24前後の人がもっとも死亡率が低く、長生きしていることが分かった。身長160センチメートルの人でいえば体重は約61.5キロ、身長170センチメートルで体重約69.4キロになる

日本ではBMI22が理想的とされてきたが、エビデンスに乏しかった。これよりも少し太っている方がむしろ健康にはいいことになる。最近、国内でも米調査をまねた調査が実施され、ほぼ同じようなデータが得られた。

米調査で分かったことがもう一つある。腹囲が将来の死亡率とあまり関係がなかったということだ。総合するとBMIがもっとも大切な指標といえる。BMIが22~26に該当する人は、血圧や血糖値などの検査データに異常がない限り、無理してやせなくてもいい。ダイエットも「ほどほど」に。(新潟大学教授 岡田正彦)

※日経新聞2010年1月17日号より引用

本文中「BMIが22~26に該当する人は、血圧や血糖値などの検査データに異常がない限り、無理してやせなくてもいい」と指摘していますので、日本肥満学会基準で言えばBMI18.5以上25.0未満(普通)とBMI25以上30未満(肥満1度)にまたがることになります。先の東北大学研究グループ、厚生労働省研究班の調査結果同様に、少し太目くらいが最も長生きであるということです。

長生きして1ヶ月でも長い年金生活を送り、
年金受給総額をアップさせたいところです。

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