定年再雇用(同日得喪)の場合、退職日は月の途中の方が在職老齢年金で有利?

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定年再雇用(同日得喪)の場合、退職日は月の途中の方が在職老齢年金で有利?

私は、もうすぐ60歳定年で、定年後は今の会社に再雇用されます。
退職金はほとんどなく、給与は60万円から20万円になりますので、年金に期待しています。
ところが、60歳からの5年間は在職老齢年金の支給停止基準が厳しく、年金が大幅カットされると聞きました。
知人のケースでは、60歳誕生日の翌月、給料がスズメの涙ほどなのに年金も全額支給停止に・・・

年金に詳しい人に聞いたところによると、
「定年再雇用(同日得喪)の場合、退職日は月の途中の方が在職老齢年金で有利になる」
とのことですが、どこが有利になるのでしょうか。
60歳からできるだけ損をしないで在職老齢年金を受け取るには?

※平成22年9月1日より、60歳~64歳の年金受給権を有する者の退職後継続再雇用ならば、
退職事由が「定年以外の事由」でも標準報酬月額が給与の下落に即対応するよう改められました。

60歳からの在職老齢年金で損をしないための3要素

「60歳定年→再雇用」という雇用継続制度を採用する企業も少なくありませんが、
慣習として、60歳以降、給料は大幅にダウンします。
そして、再雇用者は、

「低下した会社からの給与」
「厚生年金(特別支給の老齢厚生年金…在職老齢年金)」
「雇用保険からの給付(高年齢雇用継続給付)」

これらを総合して一定の手取りを確保することになるのですが、
在職老齢年金については、知らぬ間に損をしてしまう”落とし穴”があるために注意をしなければなりません。
ここでは、その回避策である次の3点をご紹介します。

3-1 定年退職再雇用における『同日得喪』

厚生年金の被保険者資格は、会社と従業員の使用関係が継続している限り中断しませんが、
定年時の再雇用に関しては、給料が大幅にダウンするなどの一般的な慣習を鑑みて、
たとえ1日の間もなく再雇用をしたとしても一旦使用関係を中断したものとみなすという特例が存在します。

具体的には、被保険者資格の喪失届と取得届をその他必要な書類と共に同時に提出し、
同じ日に資格の喪失・取得の処理を行ないます。俗に言う社会保険の『同日得喪(どうじつとくそう)』というものです。
(平成8年4月8日保文発第269号、庁文発1431号)

同日得喪ができる人は、
■特別支給の老齢厚生年金の受給権者である被保険者であること。(未請求含む)
■定年退職後に継続して同じ会社に再雇用されること。
この2つを満たす人です。(注:60歳に限った話ではありません。)

この『同日得喪』の扱いが無い場合には、再雇用により給料が大幅にダウンしたとしても、
従来の高かった給料に基づいた標準報酬月額をすぐに低下させることができず、
大幅な給料の変動があった時に行われる『随時改定』を待たなければならなくなります。
(随時改定…大幅な給料の変動後3ヶ月の平均をとって4ヶ月目に標準報酬月額が改定されるもの。)

すると、実際に受け取っている給料は低くなっているにもかかわらず、
しばらくの間、在職老齢年金の支給停止の計算は従来の高い標準報酬月額で行われてしまい、
在職老齢年金は支給停止、もしくは大幅に支給停止ということになってしまうのです。

なお、『同日得喪』の処理日は定年退職日の「翌日」です。

・11月20日が定年退職日ならば、『同日得喪』は定年退職日の翌日の11月21日
・月末の11月30日が定年退職日ならば、『同日得喪』は定年退職日の翌日の12月1日

3-2 定年退職日を月の途中の日にする

上の例で、この人は誕生日が11月10日であるとします。
(60歳になったとする。)

年金は、受給権が発生した月の翌月から支給されるので、
60歳からの特別支給の老齢厚生年金は、12月から支給されることになります。

ここで、年金をもらう在職老齢年金について、
いつの時点の標準報酬月額が用いられているのかといったことが問題になるのです。

このケースでは、12月に支給される在職老齢年金が、
「従前の標準報酬月額」あるいは「新しい標準報酬月額」
そのどちらで支給停止額が計算されているのか、
それは、退職日が月の途中か月末かによって違ってくるのです。

ポイントは「資格取得月の翌月に支給停止額が変更される」ということです。

【1.定年退職日が月の途中の場合→資格取得月は11月→支給停止額の変更は12月から】

定年退職日が月の途中の場合には、資格取得月も同月であるため、
その翌月には在職老齢年金の支給停止額が変更されます。
例のケースでは、60歳到達後の最初にもらう12月の年金から変更後の支給停止額となります。

【2.定年退職日が月末の場合→資格取得月は12月→支給停止額の変更は翌年1月から】

定年退職日が月末の場合には、資格取得月は翌月となり、
在職老齢年金の支給停止額が変更になるのは、さらにその翌月となります。
例のケースでは、12月は従来の高い給料で計算された支給停止額が採用され、
支給停止額が変更されるのは、翌年の1月からとなってしまいます。
12月は「給料は下がり」「年金はもらえない」という踏んだり蹴ったりの月に・・・。
定年前に高給で、定年後に給料が大幅ダウンする人ほど要注意です。

3-3 59歳~1年間の賞与に留意する

これまで、月給をベースに話を進めてきましたが、
在職老齢年金の支給停止額の計算では、過去1年間の賞与もその対象に含まれています。
そのため、60歳から支給される在職老齢年金の支給停止額を低く抑えるためには、
59歳の時の賞与にも注意を払う必要があります。

【在職老齢年金の支給停止額の計算式(60歳代前半)】
{(標準報酬月額+過去1年分の賞与÷12)+年金月額-28万円}×(2分の1)

※年収を12で割り、それと年金(月額)の和が28万円を超えたら、
超えた分の(2分の1)を年金カットするということです。
在職老齢年金早見表

場合によっては、60歳になる直前に多額の賞与を支払ったせいで、
その後月給が大幅にダウンしたにもかかわらず、
60歳からの1年間年金が全く出ないなどということも・・・

そうならないためにも、先の例で言えば
59歳になる11月の誕生月に賞与を払い終える、
59歳に昇給させる形で賞与分を月給に組み入れる、
59歳の賞与分は退職金の加算金としてで支払う
といった工夫が求められます。

将来的には法律改正される可能性も

以上、定年再雇用の同日得喪に関するポイントを述べてきましたが、こうしたことは、
知らずに損をする人にとっては理不尽な問題ですので、将来的には変更になる可能性もあります。
現に、平成22年4月9日(金曜日)の第174回国会、厚生労働委員会にて次のようなやり取りが行われています。

・内山委員…民主党衆議院議員、社会保険労務士
・長妻国務大臣…民主党衆議院議員、厚生労働大臣
以下、議事録より引用(ただし、見易さの観点から漢数字のみ数字に訂正)

第174回国会 厚生労働委員会 第16号(平成22年4月9日(金曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009717420100409016.htm

○内山委員

ちょっと実務的なお話をしたいと思うんですけれども、今すぐ廃止というのは無理だとしても、見直しという部分で対応できないかという点を2点ほど指摘したいと思うんです。

在職老齢年金の支給停止の計算する基準が、月収28万円という数字がありますけれども、これをもう少し緩和すれば、支給停止にならない方がどっとふえてくるわけであります。

昭和36年4月2日以降生まれの男性、年金の支給開始年齢が65歳からです。これから11年たちますと、そういう方が60になります。60から65までの間は年金が出ないんですよね。では、思うように65まで定年延長ができるか、60から65までの報酬で生計が立てられるかというのは、やはり大変大きな問題だと思います。見直しですぐにでも対応できるこういう部分、月収の28万円をもっと緩和すれば救済される方が出てくる。

さらには、非常に実務的なことで恐縮なんですけれども、60歳以降の定年で会社をやめた、そうすると、同日得喪というのがあるんですね。きょうやめました、そして新しく標準報酬、給与を改定した部分でとりました。給料がうんと下がったにもかかわらず、在職老齢年金は前年度の賞与の部分もカウントして総報酬で計算しますから、59のときの賞与が高かったら、60以降の給料を下げても、年金が減額のまま入ってこないというケースが多いんですよ。

やはりこういう事務手続上の、60歳時に同日得喪した場合、それ以降の標準報酬月額と標準賞与で在職老齢年金を計算するという方向にこれは見直してもらえないだろうか。賞与は、同日得喪の場合には前年度分はもうカウントしない、これからの賞与の分をカウントする、こういう本当に実務的な問題なんですけれども、御検討をぜひいただけると、大変、このことによって、1年間年金が全くもらえない、在老の仕組みでもらえないという人たちがたくさんおりますので、御検討をいただきたいということです。御検討だけで結構ですが、何か一言お願いします。

○長妻国務大臣

まず、今の28万円の緩和というのは、かねてから、厚生労働省の中の年金部会というのがありますけれども、そこでも議論がなされていて、一定程度緩和する必要があるんじゃないかという意見も出されております。今、我々としても、御質問いただきましたので、その部分と、あとは賞与のカウントの仕方についても検討していきたいと思います。

ただ、一点だけその中で配慮しなければいけないのは、今、基本的に日本国の年金は賦課方式でありますので、そういう意味では現役の方が仕送りをしているということで、現役の方の中でも将来大変苦しい状況になる低賃金の方もおられるということでありますので、抜本改革の中で基本的には見直すわけでありますけれども、今おっしゃられた論点については、その抜本改革の中の前に、できるのかできないのかも含めて検討していきたいと思います。

「もらう」だけでなく「払う」にも影響する同日得喪

ここまで、同日得喪に関連して在職老齢年金の支給停止の問題、すなわち「もらう」側の話でしたが、
同日得喪は、厚生年金の保険料、「払う」ことについても影響を及ぼします。
60歳定年後再雇用。給与半減でも厚生年金保険料は高いまま?
→『同日得喪』で標準報酬月額はすぐに改定。


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