厚生年金・国民年金増額対策室 > 年金、みんな怒っています!(バックナンバー) > 第15号 年金不信を増幅させた『平成21年財政検証』
┏━━ ● 年金、みんな怒っています! ● 第15号 ◎年金不信を増幅させた『平成21年財政検証』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 平成21年2月27日版 第15号 購読者数 121名様 】 「賃金上昇率」2.1%→2.5%? 「運用利回り」3.2%→4.1%? 2009年(平成21年)2月23日、 厚生労働省により国民年金と厚生年金の財政見通し『平成21年財政検証』が 公表されました。 関連:5年に1度の財政再計算は平成16年で最後なのですか?→今後は財政検証です。 http://www.office-onoduka.com/siru_seido/ss0802.html 前回2004年の「財政再計算」から5年。 足元の経済状況はかなり危うくなっている中、 計算に用いる各種「前提条件」を見ると、出生率を除く全てが好転。 今回の検証結果には、各紙新聞も揃って批判しています。 ■ 『2004年財政再計算』と『2009年財政検証』の前提条件等の比較 ★名目賃金上昇率 2.1%(2009年度以降)『2004年財政再計算』 →2.5%(2016年度以降)『2009年財政検証』 ★名目運用利回り 3.2%(2009年度以降)『2004年財政再計算』 →4.1%(2016年度以降)『2009年財政検証』 ★物価上昇率 1.0%(2009年度以降)『2004年財政再計算』 →1.0%(2016年度以降)『2009年財政検証』 関連:物価上昇率の推移 http://www.office-onoduka.com/nenkinblog/2008/04/post_138.html ★実質経済成長率 0.6%(2008年度-2032年度平均)『2004年財政再計算』 →0.8%(2015年度-2039年度平均)『2009年財政検証』 ★出生率 1.39(2050年)『2004年財政再計算』 →1.26(2055年)『2009年財政検証』 ★厚生年金積立金(2008年度末) 156兆円『2004年財政再計算』 →145兆円『2009年財政検証』 ★給付抑制期間(マクロ経済スライド) 17年間(2007年度-2023年度)『2004年財政再計算』 →27年間(2012年度-2038年度)『2009年財政検証』 「団塊の世代」の年金は、おおむね90歳まで給付抑制が続くことになりました。 ★給付水準(所得代替率)の下限 50.2%(2023年度以降) →50.1%(2038年度以降) ★2030年時点の雇用状況 従来の予測より 高齢者の就労→240万人増加 現役世代の就労→360万人増加 (読売新聞2009年2月25日より) ★国民年金保険料の納付率 80%まで戻る見込み (読売新聞2009年2月25日より) 関連:国民年金保険料の年齢階層別「納付率」の推移 http://www.office-onoduka.com/nenkinblog/2009/02/post_161.html ■つぎはぎ 今回の財政検証については、 年金の「50%の給付水準確保」が背景にあるわけですが、、 その前提とする各種数値に関して、日経新聞では 『頭は内閣府、体は日銀、尾は厚労省の関連機関。 「権威」をつぎはぎし、ギリシャ神話の怪物キメラのように描かれる 高金利の日本経済の姿。』 (2009年2月3日『ザ厚労省』より) と表現しています。 その詳細は、 『▲十五年度までは内閣府の「経済財政の中長期方針と十年展望が前提」 ▲物価上昇率は日銀の「中長期的な物価安定の理解」の一%が前提 ▲労働投入量は国立社会保障・人口問題研究所などの推計を前提』(同) そして、100年の経済見通しを固めた2008年11月の社会保障審議会年金部会 の委員の一人は 『経済前提は予測ではなく、現時点で得られるデータの将来の年金財政 へのプロジェクション(投影)。正直なところ、百年の数字には経済学的な意味 や信頼性にかなり無理な点があります。』(早大教授) と答えたといいます。 財政検証の参考資料「財政検証の位置づけ」の項(23ページ) にも、次のように記されています。 『財政検証の結果はその前提に大きく依存するが、それらの前提については、 その検証を行う時点において使用可能なデータを用い、最善の努力を払って 長期的に妥当なものとして設定する必要がある。 このために、少なくとも5年ごとに最新のデータを用いて諸前提を設定し直した 上で、現実の軌道を出発点として新たな財政検証を行うこととされている。 この意味で、今回の財政検証結果は、人口や経済を含めた将来の予測(forecast) というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータの将来の年金財政 への投影(projection)という性格のものであることに留意が必要。』 ちなみに「見通し」の意味をYahoo辞書(大辞泉)で調べてみると、 1.初めから終わりまで見つづけること。 2.さえぎるものがなく遠くまで見えること。また、その場所。 3.人の心や目に見えない内面の物事を見抜くこと。洞察。 4.物事のなりゆきや、将来のことを予測すること。 ■名目運用利回り「4.1%」? 年金の「給付水準50%維持」を計算上満たすことができた要因の一つが 名目運用利回り3.2%(2004年財政再計算)→4.1%(2009年財政検証)の引き上げ だったわけですが、確かに高い利回りを前提にすれば、計算上いくらでも 高い給付水準を確保することが可能です。 しかし、実際の利回りとの乖離があるほど後の世代にツケが回ることになり、 甘すぎる想定は、かえって年金不信を増幅させることになります。 利回りについて日経新聞(2008年11月11日)より 『実際の長期金利は1%台半ばで、現在の国内債券中心の運用では 3.2%の実現さえも難しいとの指摘がある』 では、過去の運用利回りはどうだったのでしょうか。 厚生労働省年金局の年金積立金の運用結果 http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/tsumitate/kekka/index.html を見ると、平成14年(2002年)2月~平成19年(2007年)10月までの69ヶ月の 長期間の好景気(いざなみ景気)を含んでいる 平成13年度~平成19年度の7年間の平均でも『2.26%』 であったということを考えると、『4.1%(2016年度以降)』というのは いかにも現実離れしていると考えざるを得ません。 ※参考・・・各年度の名目運用利回り 平成13年度=1.94% 平成14年度=0.17% 平成15年度=4.90% 平成16年度=2.73% 平成17年度=6.83% 平成18年度=3.10% 平成19年度=-3.53% ■名目賃金上昇率「2.5%」? 名目賃金上昇率についても同様に「厚生労働省年金局の年金積立金の運用結果」 によるデータを見てみると、 平成13年度~平成19年度の7年間の平均で『-0.30%』 ※参考・・・各年度の名目賃金上昇率 平成13年度=-0.27% 平成14年度=-1.15% 平成15年度=-0.27% 平成16年度=-0.20% 平成17年度=-0.17% 平成18年度=0.01% 平成19年度=-0.07% このように、かなり厳しい状況となっています。 「平成20年度 年次経済財政報告」(内閣府) http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je08/08p00000.html でも、「伸び悩む賃金」(P66~84)の箇所に賃金の状況に関する厳しい記述 があり、83ページの「(3)今後の賃金の動向について」では次のように まとめています。 『このように、賃金の伸び悩みには様々な要因が作用しているが、 技術革新やグローバルな競争などの影響は、短期的には変化しないとみられる。 したがって、当面の先行きは、内外の需要動向と原油・原材料価格の動向と その波及が鍵を握っている。また、非正規雇用者の正規化に向けた政策的取組が 賃金の下支えに役立つことも期待される。 2008年に入り、所定内給与は前年比で増加している。 一方で、2008年の春闘の回答・妥結状況によれば、賃金の引上げ率はおおむね 前年並みにとどまった。また、2008年1~3月期においても、非正規雇用比率は 引き続いき上昇している。こうしたことから、さらに、生産や企業収益の 状況から、所定外給与やボーナスの増加が期待しにくいことにも留意する 必要がある。』 ※年次経済財政報告について 前回の財政再計算においては、平成21年度以降の「賃金上昇率」や「運用利回り」 は、社会保障審議会年金資金運用分科会報告をもとに設定されました。 そして、その報告の基となっているのが「平成13年度 年次経済財政報告」でした。 需要が先細りする中、供給過剰感は増してきており、 賃金低下、非正規拡大はもとより倒産等で雇用の場自体が減少。 (再就職→従来賃金よりも低下) 平成13年度~平成19年度の7年間の平均『-0.30%』を考えると、 名目賃金上昇率2.5%は、これも非現実的だと考えざるをえません。 ■タイミングが悪かった今回の財政検証 平成21年(2009年)に財政検証を行うことは法に定められている ことで仕方がないことなのですが、5年に1度で今回のような時期になるというのは あまりにも不運でした。 『高い利回りの設定について、厚労省は「長期に見通しを立てる際は、 経済が順調に回復するとの前提に立つのは自然なことだ」と説明する。』 (2009年2月25日中国新聞社説より) という厚労省の姿勢も疑問ですが・・・ なお、今回の財政検証の時期については、 1年延期しては?と唱える声もありました。 2009年2月11日日経新聞「経済教室」 小峰隆夫氏(法政大学教授)より 『~日本経済は短期的な危機であると同時に、長期的な課題も抱えている。 財政の健全化、年金の建て直しなどがそれである。しかし長期的課題に取り組む には、ある程度の確からしさを持った経済展望がいる。財政の健全化目標を設定 するには税収の見通しが不可欠であり、そのためには成長率の想定が必要である。 また、0九年度は五年に一度の年金財政検証の年に当たっており、これにも経済条件 が必要となる。 だが前述のように政府の見通しは既に足元から破綻している。五十年に一度の規模 で経済の足元が大きく揺らいでいる中で次の見通しを作るのは、地震で家が崩壊 しそうな時に、自宅の建て直しを相談しているようなものだ。こんな時期に無理に 長期プランを作っても、かえって国民の不安を増進するだけではないか。財政再建 目標の設定は棚上げし、年金財政の検証も一年延期してはどうだろう。』 なるほど・・・ または、一定の場合、翌年に補正をするというのも良いかもしれません。 ■年金給付水準50%維持の政治公約 約5年前の2003年12月2日、 自民党と公明党は平成16年度(2004年度)の年金改革において、 厚生年金の給付水準(受給モデル世帯…夫40年厚生年金・妻専業主婦)について 「少なくとも現役世代の平均的収入の50%以上を確保する」ことで合意しました。 そしてその後、50%保証を100年守るということをうたっているわけですが、 今回の財政検証を見ると、その「50.1%」という結果に安心するよりも 50%が事実上努力目標にすぎないであろうことが明確となりました。 できもしない50%維持に固執するよりも、 現実に即した議論・改革を期待したいところです。 何しろ「モデル世帯」自体が今や標準とは言えませんので。 関連:国の言う「モデル年金」の問題点を検証 - [年金を受け取る]All About http://allabout.co.jp/finance/nenkinreceive/closeup/CU20060220E/
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