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国民年金保険料の年齢階層別「納付率」の推移

年金不信に景気悪化が加わり、ますます深刻になりつつある年金の空洞化ですが、近年、国民年金の第1号被保険者が納める国民年金保険料の納付率の推移はどのようになっているのでしょうか。

※下記表は、国民年金保険料の納付率の推移を見るために、社会保険庁の社会保険統計情報『国民年金の加入・納付状況』の各年度の年齢階層別の納付率を一つの表にまとめたものです。

※2つ目の表の赤字の「実質」の箇所は、免除や納付猶予等の対象者も納付率計算の分母に含め、実質的に国民年金の保険料を納めた人の割合を示しています。(当該実質部分の数値は社会保険庁公表データで新聞で報道されたもの。)

1.平成13~15年度の年齢階層別国民年金保険料納付率の推移

年齢階層平成13年度平成14年度平成15年度
20歳~24歳54.0%47.4%48.6%
25歳~29歳56.8%49.4%50.2%
30歳~34歳61.0%52.9%54.1%
35歳~39歳67.4%56.9%57.2%
40歳~44歳76.0%65.1%65.0%
45歳~49歳77.9%68.4%69.0%
50歳~54歳80.0%72.2%72.6%
55歳~59歳85.5%79.4%79.8%
全体70.9%62.8%63.4%

平成13年度から平成15年度までの納付率の推移を見てみると、平成13年度から平成14年度にかけて大幅に数値が減少しているのがわかります。

これは、申請全額免除の基準を厳格化させたため、平成13年度の申請全額免除者数277万人が平成14年度末には144万人となり133万人も減少・・・一方で新たに半額免除が認められた人数がわずか34万人となったことで、合計100万人が免除から納付義務者となったことが納付率悪化の大きな要因となりました。 (保険料収納事務を地方(市町村)から国へ移管させたことも影響)

2.平成16~19年度の年齢階層別国民年金保険料納付率の推移

年齢階層平成16年度平成17年度平成18年度(実質平成19年度(実質
20歳~24歳49.6%57.8%56.2%(26.9%53.2%(25.4%
25歳~29歳50.2%55.5%54.2%(40.4%51.5%(38.3%
30歳~34歳55.2%57.9%57.6%(46.2%55.8%(45.0%
35歳~39歳57.5%60.1%60.1%(47.4%58.9%(46.6%
40歳~44歳64.0%65.2%63.6%(49.7%61.1%
45歳~49歳68.8%70.4%69.2%(54.7%66.7%
50歳~54歳72.0%73.6%72.5%(57.8%70.1%
55歳~59歳79.2%80.5%79.3%(64.9%76.9%
全体63.6%67.1%66.3%(49.0%63.9%(47.3%

平成16年度から平成19年度までの納付率の推移を見てみると、平成16年度から平成17年度にかけて数値が大きく上昇しているのがわかります。

これは、「国民年金保険料の免除に関する不適正処理」と「免除・納付猶予等に関する法改正」の2つが大きな要因となっています。

前者は、社会保険庁のサイト「国民年金保険料の免除等に係る事務処理に関する調査結果等について」でも公表しているように、平成17(2005)年度に全国各地の社会保険事務所において本人確認のない国民年金保険料の免除手続きを行うなどの不適正処理が行われ、それにより納付率の計算の分母の数を減らしたものです。

(未納者を免除者にすることで、同じ保険料を納めない人でも、納付率の計算においては分母から除かれる・・・それにより納付者の数(分子)が変わらなくても『納付率』は向上する。)

また、後者については『若年者納付猶予制度の導入』と、『申請免除及び学生納付特例の承認期間の遡及』が納付率向上に寄与しました。

いずれにしても、国民年金保険料の納付者をいかに増やすかという「分子対策」ではなく、免除・納付猶予者を増やす「分母対策」並びに免除等の法律改正が納付率を向上させたわけです。

免除等も未納とみなした実質納付率

上記表の赤字の数字は、保険料の免除・納付猶予・学生納付特例といった、保険料を納めていない人も「未納」とみなした場合の納付率(以降「実質納付率」という)です。

※こちらのサイト「20代前半で納付率26%/国民年金 制度の空洞化進む(共産党しんぶん赤旗)」では、2006年度(平成18年度)の国民年金の年齢別納付率と実質納付率のグラフがあります。

20歳~24歳までは学生納付特例を受けている人もいるために数値が極端に低いのですが、社会人である20代後半でも40.4%(平成18年度)しかない点は問題です。30代も2人に1人は保険料を納めていないという状況です。

関連データ:非正規雇用者(比率)の推移

国民年金の第1号被保険者のうち、男性19.3%、女性30.1%が『臨時・パート』です。(平成17年国民年金被保険者実態調査より。『無職』は男性25.3%、女性36.7%)

非正規雇用者の増大が将来の無年金・低年金につながり、しいては老後世帯の生活保護受給の増大にもつながりかねない(関連:高齢者生活保護世帯数の推移)問題を秘めているのですが、下記表の通り、近年では非正規雇用が拡大傾向を示しています。

内閣府2008年版「青少年白書」の『正規の職員・従業員を除いた雇用者の比率の推移』より。(会社などの役員を除く雇用者のうち、正規の職員・従業員を除いた雇用者の割合)

年齢階層昭和57年昭和62年平成4年平成9年平成14年平成19年
20歳~24歳11%15%17%25%41%43%
25歳~29歳10%11%12%15%23%28%
30歳~34歳13%13%14%16%22%26%
35歳~39歳17%19%19%20%25%28%
40歳~44歳20%22%23%24%28%31%
45歳~49歳19%22%23%25%30%32%
50歳~54歳17%20%22%23%30%32%
55歳~59歳24%24%24%24%30%34%

この表からは、

  • 昭和57年と平成19年との比較では、全年齢階層で非正規雇用者の割合いが増加している。
  • 学生を含む20歳~24歳を除くと、平成14年までは若年層ほど非正規雇用者の割合が少なかったが、平成19年になると若年層と中高齢層の非正規雇用割合がほぼ等しくなっててきている。

ということが読み取れます。

日本は新規一括採用で正社員を採る傾向があるために、従来は「正社員スタート」が自然な流れで、そのため年齢階層が上がるごとに非正規雇用者割合が増えていたのだと思われます。(女性ならば結婚してパートに転身する等で正規雇用者減。リストラも。)

ところが近年では新卒でも正規雇用にありつけない人が増え、また、たとえ正規雇用にありつけたとしても若いうちから結果を求められる・・・採用の手控えにより従来の若手の何倍も働かされる・・・年功で給料が上がらない・・・上司も忙しく教育訓練の機会が少ない・・・そもそも希望する職の枠がない・・・といった厳しい労働環境から早期に退職する若手が増加。

かといって、一度正規の道を降りてしまうと再び正規の道に戻ることは困難で、仕方なく非正規で食いつなぐものの、その非正規でのキャリアは「経験」とはみなされず、年齢とともにますます正規の道が遠のくことに・・・。

なお、総務省統計局「労働力調査詳細集計平成19年平均結果」によると、非正規雇用者のうち77%が年収200万円未満となっています。(年収200万円は、ワーキングプアの基準とされている。)

同一世代の10年後を見ると

上記表の昭和57年、昭和62年、平成4年、平成9年の4つの時点でそれぞれ25歳から29歳だった人を基準に4つの色で識別し、10年後に非正規雇用者割合がどうなっているのかをみてみると、いずれも「2倍」程度の増加割合でした。

  • 昭和57年組=10%→19%(10年後)
  • 昭和62年組=11%→20%(10年後)
  • 平成4年組=12%→25%(10年後)
  • 平成9年組=15%→28%(10年後)

これは、ある世代の若年層の頃の非正規雇用割合は、その後も引きずるということを示していると思われます。

この流れで見ていくと、平成19年の25歳~29歳の非正規割合28%は、10年後にその世代が35歳~39歳となった頃には50%??

2007年(平成19年)10月から日本経済は下り坂となっており、2008年(平成20年)9月にはリーマン破綻。企業倒産件数も歴史的水準・・・

今後、免除基準に該当する人に対しては職権により免除を行おうとする動きもあるようですが、未納にろ免除にしろ、しばらくの間『実質納付率』が下がり続けることは間違いなさそうです。

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