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物価上昇率の推移

物価上昇率の推移・・・昭和27(1952)年~平成26(2014)年

年金で使用する物価上昇率(全国消費者物価指数※)は、昭和48年以降、物価スライドという形で年金額に反映されてきました。

(※生鮮食品を含む総合指数。定義・・・消費者物価指数は、全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列的に測定するもの。)

そして、平成16年の改正による物価スライド制の廃止以降も、物価上昇率は、年金額を変動させる「改定率」の計算の一要素となっており、物価上昇率が年金額を決める重要な要素であることに変わりありません。

このページでは、過去に物価上昇率(全国消費者物価指数)がどのような推移をたどってきたのかを見ていくとともに、5年に1度の財政検証(財政再計算)において、物価上昇率の見通しの決め方に恣意的な点があることを指摘します。

物価上昇率の推移(昭和)

昭和30年前半から昭和40年後半頃までの高度経済成長により、物価上昇率は、高い水準となっていましたが、昭和48年(1973年)10月に勃発した第4次中東戦争をきっかけとするオイルショックの時期以降、一転して物価上昇率は下降傾向となっています。

  • 昭和27年(1952年)=5.0%
  • 昭和28年(1953年)=6.5%
  • 昭和29年(1954年)=6.5%
  • 昭和30年(1955年)=-1.1%
  • 昭和31年(1956年)=0.3%
  • 昭和32年(1957年)=3.1%
  • 昭和33年(1958年)=-0.4%
  • 昭和34年(1959年)=1.0%
  • 昭和35年(1960年)=3.6%
  • 昭和36年(1961年)=5.3%
  • 昭和37年(1962年)=6.8%
  • 昭和38年(1963年)=7.6%
  • 昭和39年(1964年)=3.9%
  • 昭和40年(1965年)=6.6%
  • 昭和41年(1966年)=5.1%
  • 昭和42年(1967年)=4.0%
  • 昭和43年(1968年)=5.3%
  • 昭和44年(1969年)=5.2%
  • 昭和45年(1970年)=7.7%
  • 昭和46年(1971年)=6.3%
  • 昭和47年(1972年)=4.9%
  • 昭和48年(1973年)=11.7%
  • 昭和49年(1974年)=23.2%
  • 昭和50年(1975年)=11.7%
  • 昭和51年(1976年)=9.4%
  • 昭和52年(1977年)=8.1%
  • 昭和53年(1978年)=4.2%
  • 昭和54年(1979年)=3.7%
  • 昭和55年(1980年)=7.7%
  • 昭和56年(1981年)=4.9%
  • 昭和57年(1982年)=2.8%
  • 昭和58年(1983年)=1.9%
  • 昭和59年(1984年)=2.3%
  • 昭和60年(1985年)=2.0%
  • 昭和61年(1986年)=0.6%
  • 昭和62年(1987年)=0.1%
  • 昭和63年(1988年)=0.7%

物価上昇率の推移(平成)

昭和61年(1986年)12月から平成3年(1991年)2月までの「バブル景気」において、物価上昇率は、年間最大で3%程度上昇したものの、バブル崩壊後は、平成9年(1997年)4月に実施された消費税3%から5%への増税に伴う駆け込み需要の影響と思われる一時的な上昇を除けば再び下降傾向を示し、長期にわたるデフレが日本経済を苦しめる結果となりました。

  • 平成元年(1989年)=2.3%(消費税3%)
  • 平成2年(1990年)=3.1%
  • 平成3年(1991年)=3.3%
  • 平成4年(1992年)=1.6%
  • 平成5年(1993年)=1.3%
  • 平成6年(1994年)=0.7%
  • 平成7年(1995年)=-0.1%
  • 平成8年(1996年)=0.1%
  • 平成9年(1997年)=1.8%(消費税3%→5%)
  • 平成10年(1998年)=0.6%
  • 平成11年(1999年)=-0.3%
  • 平成12年(2000年)=-0.7%
  • 平成13年(2001年)=-0.7%
  • 平成14年(2002年)=-0.9%
  • 平成15年(2003年)=-0.3%
  • 平成16年(2004年)=0.0%
  • 平成17年(2005年)=-0.3%
  • 平成18年(2006年)=0.3%
  • 平成19年(2007年)=0.0%
  • 平成20年(2008年)=1.4%
  • 平成21年(2009年)=-1.4%
  • 平成22年(2010年)=-0.7%
  • 平成23年(2011年)=-0.3%
  • 平成24年(2012年)=0.0%
  • 平成25年(2013年)=0.4%
  • 平成26年(2014年)=2.7%(消費税5%→8%)

平成26年(2014年)の2.7%は、平成9年(1997年)の時と同様に、4月実施の消費税の5%から8%への増税に伴う駆け込み需要による影響が大きいものと考えられます。

厚生年金・国民年金の年金スライド率・改定率

昭和48(1973)年、物価変動率が5%を超えて発動した場合に、変動率を基準として年金額を改定する物価スライド制が導入され、平成元(1989)年には、5%枠を撤廃した完全自動物価スライド制が導入されました。

しかし、平成16(2004)年の法改正では、年金額は毎年「改定率」により改定されることになり、完全自動物価スライド制は廃止されることになりました。

また、「マクロ経済スライド」の仕組みにより、当分の間は、改定率にマクロ経済スライドの調整率を適用したものを、最終的な改定率として年金額が改定されます。

  • 昭和48(1973)年度
  • 昭和49(1974)年度=16.1%
  • 昭和50(1975)年度=21.8%
  • 昭和51(1976)年度=「財政再計算」
  • 昭和52(1977)年度=9.4%
  • 昭和53(1978)年度=6.7%
  • 昭和54(1979)年度=3.4%
  • 昭和55(1980)年度=「財政再計算」
  • 昭和56(1981)年度=7.8%
  • 昭和57(1982)年度=4.0%
  • 昭和58(1983)年度=0.0%
  • 昭和59(1984)年度=2.0%
  • 昭和60(1985)年度=3.4%
  • 昭和61(1986)年度=「財政再計算」
  • 昭和62(1987)年度=0.6%
  • 昭和63(1988)年度=0.1%
  • 平成元(1989)年度=「財政再計算」
  • 平成2(1990)年度=2.3%
  • 平成3(1991)年度=3.1%
  • 平成4(1992)年度=3.3%
  • 平成5(1993)年度=1.6%
  • 平成6(1994)年度=「財政再計算」
  • 平成7(1995)年度=0.7%
  • 平成8(1996)年度=0.0%
  • 平成9(1997)年度=0.0%
  • 平成10(1998)年度=1.8%
  • 平成11(1999)年度=(0.6%)「財政再計算」
  • 平成12(2000)年度=0.0%
  • 平成13(2001)年度=0.0%
  • 平成14(2002)年度=0.0%
  • 平成15(2003)年度=-0.9%
  • 平成16(2004)年度=(-0.3%)「財政再計算」
  • 平成17(2005)年度=0.0%
  • 平成18(2006)年度=-0.3%
  • 平成19(2007)年度=0.0%
  • 平成20(2008)年度=0.0%
  • 平成21(2009)年度=(0.0%)「財政再検証」
  • 平成22(2010)年度=0.0%
  • 平成23(2011)年度=-0.4%
  • 平成24(2012)年度=-0.3%
  • 平成25(2013)年度=0.0%
  • (平成25(2013)年10月=1.0%)
  • 平成26(2014)年度=(-0.7%)「財政検証」
  • 平成27(2015)年度=0.9%

平成8年度、平成12年度~平成14年度は、対前年比消費者物価指数がマイナスとなったものの、年金受給者への配慮(社会経済情勢等)による特例によって0%となっています。

そして、その特例水準は、平成8年の分は直後に解消されたものの、平成12年度~平成14年度の分については、その後の複雑な仕組みにより拡大した特例水準と本来水準との差2.5%を平成25年10月(-1%)、平成26年4月(-1%)、平成27年4月(-0.5%)の3段階において解消することとされました。

また、平成27(2015)年度は、平成11(1999)年度のプラス0.6%以来、16年ぶりのプラス改定となりました。

物価に関する情報源

総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」
Yahoo! ニュース「物価」・・・物価に関する最新ニュースや、All Aboutなど物価に関する詳しい解説があるサイトへの関連リンクが豊富にあります。

最後に・・・物価上昇率の見通しの決め方が恣意的

財政検証(財政再計算)における物価上昇率の見通しの決め方については、結論ありきのご都合主義的な面が見られます。

過去4回分の財政検証(財政再計算)の物価上昇率の設定に関し、「過去何年分」の部分についてのみ着目すると、それぞれがバラバラであることがわかります。

平成6年
財政再計算
(5年間)
平成11年
財政再計算
(10年間)
平成16年
財政再計算
(20年間)
平成26年
財政検証
(30年間)
昭和50年11.7%11.7%11.7%11.7%
昭和51年9.4%9.4%9.4%9.4%
昭和52年8.1%8.1%8.1%8.1%
昭和53年4.2%4.2%4.2%4.2%
昭和54年3.7%3.7%3.7%3.7%
昭和55年7.7%7.7%7.7%7.7%
昭和56年4.9%4.9%4.9%4.9%
昭和57年2.8%2.8%2.8%2.8%
昭和58年1.9%1.9%1.9%1.9%
昭和59年2.3%2.3%2.3%2.3%
昭和60年2.0%2.0%2.0%2.0%
昭和61年0.6%0.6%0.6%0.6%
昭和62年0.1%0.1%0.1%0.1%
昭和63年0.7%0.7%0.7%0.7%
平成元年2.3%2.3%2.3%2.3%
平成2年3.1%3.1%3.1%3.1%
平成3年3.3%3.3%3.3%3.3%
平成4年1.6%1.6%1.6%1.6%
平成5年1.3%1.3%1.3%1.3%
平成6年0.7%0.7%0.7%0.7%
平成7年-0.1%-0.1%-0.1%-0.1%
平成8年0.1%0.1%0.1%0.1%
平成9年1.8%1.8%1.8%1.8%
平成10年0.6%0.6%0.6%0.6%
平成11年-0.3%-0.3%-0.3%-0.3%
平成12年-0.7%-0.7%-0.7%-0.7%
平成13年-0.7%-0.7%-0.7%-0.7%
平成14年-0.9%-0.9%-0.9%-0.9%
平成15年-0.3%-0.3%-0.3%-0.3%
平成16年0.0%0.0%0.0%0.0%
平成17年-0.3%-0.3%-0.3%-0.3%
平成18年0.3%0.3%0.3%0.3%
平成19年0.0%0.0%0.0%0.0%
平成20年1.4%1.4%1.4%1.4%
平成21年-1.4%-1.4%-1.4%-1.4%
平成22年-0.7%-0.7%-0.7%-0.7%
平成23年-0.3%-0.3%-0.3%-0.3%
平成24年0.0%0.0%0.0%0.0%
平成25年0.4%0.4%0.4%0.4%
平成26年2.7%2.7%2.7%2.7%

【平成6年財政再計算】→ 5年間の実績の平均が2.2%

平成6年財政再計算における、消費者物価上昇率については昭和63年から平成4年までの5年間の実績の平均が2.2%であること、「生活大国5か年計画」における見通しが2%程度であることを勘案して設定したところである。

【平成11年財政再計算】→ 実績平均が過去10年間で1.5%

物価上昇率は、予測することが難しい性格のものであることから、ある程度の長さの過去の実績を踏まえることとし、実績平均が過去10年間で1.5%であることから、1.5%と設定している。

【平成16年財政再計算】→ 過去20年平均が1.0%

平成21(2009)年以降は、消費者物価上昇率の過去20年(昭和58(1983)から平成14年(2002)年)平均が1.0%であることや、内閣府の「改革と展望-2003年度改定 参考資料」において、平成16(2004)年度から平成20(2008)年度の平均消費者物価上昇率が1.0%であることから、1.0%と設定した。

【平成26年財政再計算】→ 過去30年間の実績値の平均0.6%

物価上昇率の設定について、これまでの財政検証では、日本銀行の見解、過去の実績の平均値、内閣府による試算などを参考にして設定されてきた。今般の物価を巡る動向をみると、日本銀行は「物価安定の目標」を新たに導入し、消費者物価の前年比上昇率で2%とすることとされている。また、内閣府試算では2020年前後の物価上昇率は経済再生ケースで2.0%、参考ケースで1.2%となっている。さらに、これらのみに捉われず下方に幅を設定するケースとして、過去30年間の実績値の平均0.6%も考慮することとした。


<資料元>

平成6年財政再計算・平成11年財政再計算・平成16年財政再計算

第14回社会保障審議会年金部会「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」(平成25年12月4日)資料1-2の29ページからの抜粋。

平成26年財政検証

「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方について」-検討結果の報告(平成26年3月12日)資料2の10ページよりの抜粋。

財政検証(財政再計算)の実施年がバラバラであるにも関わらず、いずれもバブル時代の物価上昇率がすっぽりと入っていることが特徴的です。

とりわけ平成16年財政再計算と平成26年財政検証では、直近の数値が低く、短期間の平均をとっても低い見通しとなってしまうことから、数字合わせのために20年、30年といった長期間を採用したものと推測できます。

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