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近親的内縁関係の場合、遺族厚生年金は支給されますか?

遺族厚生年金は、戸籍上の妻だけではなく、
内縁関係上の妻にも支給されると聞きました。

私には10年間共に生活する内縁関係にある伯父がいます。
「伯父:おじ」と「姪:めい」という近親関係なのですが、
その内縁関係にある伯父が亡くなった場合、
「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として
遺族厚生年金の支給を受けることはできますか?

内縁関係と遺族厚生年金

厚生年金保険法の第3条の2項には、「配偶者」の定義が規定されています。
『この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、
婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。』

そして、厚生年金保険法の第59条の第1項本文には、
『遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当事。以下この条において同じ。) その者によつて生計を維持したものとする。』
とあります。

以上により、
内縁関係の夫婦「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」であっても、
「被保険者又は被保険者であつた者によって生計を維持されていたもの」については、
遺族厚生年金は支給されます。
ただし、近親的内縁関係は事情が異なります。

民法で婚姻が禁止される近親者との内縁関係は、遺族厚生年金不支給

遺族厚生年金でいう「婚姻関係と同様の事情~」の『婚姻関係』は、
一般法の民法で定めるものが適用されると解されます。

ここで、「近親者間の婚姻」については民法第734条1項により、
『直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。~』
と定められておりますので、伯父と姪のような内縁関係は、そもそも婚姻届を受理されない関係であり、
民法上の婚姻の届出をした配偶者と準じた扱いを受けられる
「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」にはあたらないものと判断されます。
よって、原則として近親的内縁関係は遺族厚生年金は支給されません。

ただし、平成19年(2007年)3月8日最高裁判所第一小法廷において、
次のような判決も出ております。(あくまで例外中の例外と考えられます。)

近親的内縁関係による遺族厚生年金の支給を認めた最高裁の事例

この判決は、厚生年金の被保険者であった叔父(死亡者)と内縁関係の姪(遺族)が、厚生年金保険法に基づいて遺族厚生年金を請求したところ 、社会保険庁の決定では不支給となり、支給を求めて最高裁まで争い「遺族厚生年金の支給を受けることができる配偶者に当たる」との結論を得たものです。

遺族厚生年金不支給処分取消請求事件PDFファイル(裁判所ウェブサイト)

判決の中で個人的に重要と思うのは次の部分です。

『~我が国では、かつて、農業後継者の確保等の要請から親族間の結婚が少なからず行なわれていたことは公知の事実であり、前記事実関係によれば、上告人の周囲でも、 前記のような地域的特性から親族間の結婚が比較的多く行なわれるとともに、おじと姪との間の内縁も散見されたというのであって、そのような関係が地域社会や親族内において 抵抗感なく受け入れられている例も存在したことがうかがわれるのである。

このような社会的、時代的背景の下に形成された三親等の傍系血族間の内縁関係については、 それが形成されるに至った経緯、周囲や地域社会の受け止め方、共同生活期間の長短、子の有無、夫婦生活の安定性等に照らし、反倫理性、反公益性が婚姻法秩序維持等の 観点から問題とする必要がない程度に著しく低いと認められる場合には、上記近親者間における婚姻を禁止すべき公益的要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという 法の目的を優先させるべき特段の事情があるというべきである。

したがって、このような事情が認められる場合、その内縁関係が民法により婚姻が禁止される近親者間における ものであるという一事をもって遺族厚生年金の受給権を否定することは許されず、上記内縁関係の当事者は法3条2項にいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の 事情にある者」に該当すると解するのが相当である。』

つまり、三親等の傍系血族間の内縁関係についてのみ、

などに照らし反倫理性・反公益性が婚姻法秩序維持等の観点から問題とする必要がない程度に著しく低いと認められる場合には、 遺族厚生年金の受給できる「配偶者」とすることができるという判断です。

ただし、この事例について言えば、

というものであり、様々な事情を総合して「配偶者」と認められた、
例外中の例外の判断と見ることができると思います。

民法における婚姻禁止

第734条1項【近親者間の婚姻の禁止】

直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。
ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
(2項略)

第735条【直系姻族間の婚姻の禁止】

直系姻族の間では、婚姻をすることができない。
第728条又は第817条の9の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。

第736条【養親子等の間の婚姻の禁止】

養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、
第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

※直系血族間や二親等の傍系血族間(兄と妹、姉と弟、おじと姪、おばと甥)の内縁関係については、
それだけで「反倫理性・反公益性」が極めて大きいと判断されています。(判決の反対意見箇所より)

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