年金は権利を満たしたからといって必ずもらえるわけではありません。遺族年金目当てに人を死亡させたり、定められた書類を適正に提出しなかったりすると、全部または一部の年金が、差し止めまたは一時的に支給停止されてしまいます。
全面的な給付制限
- 故意に障害又はその直接の原因となった事故を生じさせた者の、その障害については、これを支給事由とする障害基礎年金は支給されない。(国民年金法69条)
- 遺族基礎年金、寡婦年金、又は死亡一時金は、被保険者又は被保険者であった者を故意に死亡させた者には支給されない。また、被保険者又は被保険者であった者の死亡前に、その者の死亡によって遺族基礎年金又は死亡一時金の受給権者となるべき者を故意に死亡させたものについても同様に支給されない。(国民年金法71条の1項)
- 遺族基礎年金の受給権は、その受給権者が他の受給権者を故意に死亡させたときは、消滅する。(国民年金法71条の2項)
※解説・・・1は働くのがいやになって、自分で足を落とすことなど、2は「この人を死亡させて遺族年金をもらおう」というような不純なもの、またはいずれ受給権者となるであろうものを死亡させること、3はすでに遺族年金の受給権者を死亡させるもので、「この人がいなければ自分に遺族基礎年金の権利が舞い込むだろう」というような理由が成り立つケースです。
全部又は一部の給付制限
- 故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくはその原因となった事故を生じさせ、又は障害の程度を増進させたもののその障害については、これを支給事由とする障害基礎年金は、その全部又は一部の支給を行わないことができる。(国民年金法70条)
- 自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、死亡又はその原因となった事故を生じさせたものの死亡についてもその全部又は一部の支給を行わないことができる。
※解説・・・1は明らかに事故をすると分かるような状況、例えば猛スピードで故意に乱暴な運転をしたうえで事故をする、または度胸試しで3階から飛び降りて事故をするなどの状況が考えられます。また、療養の指示に対してそれに従わずに結果的に障害の程度を増進させた時も同様に、状況によって全部又は一部の支給を行わないとされています。2は1と同様の理由において、死亡の場合です。
協力義務に関する給付制限
次に該当する場合は年金給付の額の全部又は一部につき「支給を停止」することができます。
- 受給権者が、正当な理由がなくて、社会保険庁長官がした書類等の提出命令に従わず、又はその職員の質問に応じなかった時。(国民年金法第107条1項)
- 障害基礎年金の受給権者又は一定の障害の状態にあることにより加算の対象となっている子が、正当な理由がなくて、社会保険庁長官がした受信命令に従わず、又はその職員の診断を拒んだとき。(国民年金法第107条2項)
年金給付一時差し止め
給付事務の円滑化のため、受給権者に提出が義務付けられている150条3項の規定による届出や書類その他の物件を、正当な理由がなく提出しない時は、年金給付の支払いを一時差し止めることができる。(国民年金法73条)
※解説・・・届出をしたら、止めていた分まとめて出してもらえます。
まとめ
結局よからぬことを考えて年金をもらおうとしてもダメで、必要な決まりどおりの手続を踏んで、正々堂々と年金をもらいましょうということです。