年金の受給権者が死亡した時に出てくるのが「未支給年金」の話です。本来、死亡した人に支払われるはずだった年金は、一定の遺族が自分の名前で請求することができます。未支給年金を受給できるのは、次の人たちです。
未支給年金を請求できる遺族
たとえば老齢年金の受給権者の人が4月に亡くなった場合、4月まで老齢年金をもらう権利を持ちつつも、死亡してしまったためにその分の年金を受け取ることができません。そこで、死亡した受給権者に変わって、次の遺族が本来死亡者に支払われるはずであった未支給年金を、自分の名前で請求することができるのです。
- 配偶者
- 子供
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
未支給年金と生計の同一
全員に共通する条件は、受給権者の死亡の当時、その者と生計を同じくしていたという事実が必要です。請求者と死亡者の世帯が異なるときは、未支給年金を請求する遺族が死亡者と生計を同じくしていたという証明を町内会長、事業主、家主などの第三者からとり、生計同一申立書を提出します。
同一順位の遺族が2人以上の場合
未支給年金を受給できる遺族の順位は数字の順番で、同順位者が2人以上の時は、同順位者のうち1人がした未支給年金の請求は、同順位者全員のため、全額を請求したものとみなされます。つまり、「内輪もめはそっちでやってね」ということです。
未支給年金の届出に必要なもの
- 未支給年金請求者の印鑑
- 亡くなった方の年金証書
- 預貯金通帳(請求者名義のもの)
- 戸籍謄本(死亡者と請求者との関係が解るもの)
- 家族全員の住民票の写し
- 生計同一申立書(死亡者と請求者の住所が異なる場合)
※届出に必要なものは、請求者によって異なります。 社会保険事務所または市区町村へお問い合わせください。
裁定請求されていない未支給年金
死亡した受給権者が、死亡前に年金給付の裁定請求をしていない場合でも、未支給年金を受給できる遺族は、自分の名前でその年金を請求できます。たとえば老齢年金を受給できる受給権者が、裁定請求しないまま1年後死亡した場合、その1年分の年金は、受給権者の名前ではなく自分の名前で請求できます。
継子ももらえる未支給年金
前妻との子供(小学生)のいる夫と結婚し、親子3人として同じ屋根の下で暮らしていたとします。この場合、子供は妻の子供ではないために、養子縁組をしなければ妻と夫の継子の間は法定親子ではありません。
そして、養子縁組をしないまま暮らしていたとして、夫が亡くなったとします。すると、妻には遺族基礎年金が支給されます。遺族基礎年金の支給要件は、「子のある妻」であって、法定の子供である必要はないからです。子供は夫の子供ですし、妻は夫の妻、そして子供とは生計を同じくしている、これで要件は満たします。
子供も妻も遺族基礎年金の受給権者で、妻が遺族基礎年金をもらうので、子供は支給停止です。
さてこの状態で、妻が遺族基礎年金を請求せずに死亡した場合、未支給の遺族年金はどうなるでしょうか。本来ならば、この子は法定の子供ではないので、未支給年金を受給できる子ではありません。しかし、実子でも養子でもない夫の継子に対しても、遺族基礎年金の場合に限っては未支給年金を受け取れるということになっているのです。
最後に条文をみてみます。
「遺族基礎年金の受給権者が死亡した場合で、その者の死亡の当時、当該遺族基礎年金の支給の要件となり、またはその額の加算の対象となっていた被保険者または被保険者であった者の子は、未支給年金の支給を請求し得る子とみなされる。」