会社は厚生年金の適用ではないけれど、自分だけ厚生年金に入りたいという時に使える制度です。ただし、事業主の保険料負担が増えますし、現実的にはなかなか使えそうにありません。
厚生年金の任意単独被保険者?
国民年金にも年金制度に任意で加入する任意加入被保険者という制度があります。しかし、国民年金とは違い、厚生年金の場合には事業主の同意がなければ任意単独被保険者にはなれません。
何らかの事情で会社が厚生年金に入っていないわけですので、もともと会社が従業員を雇っても厚生年金に加入させる必要はありません。当然、厚生年金保険料の会社負担はありません。
しかし、厚生年金に任意加入させるとなると、厚生年金に加入させる人の分の保険料の半額が会社負担となりますので、任意加入には会社(事業主)の同意が条件となっています。
任意単独被保険者になる条件は、厚生年金の適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者で、事業主の同意プラス社会保険庁長官の認可です。会社自体の厚生年金適用というわけではないので、任意加入するのは単独。だから「任意単独被保険者」です。
任意単独被保険者の資格の取得時期
任意単独被保険者は、社会保険庁長官の認可のあった日に、厚生年金の被保険者の資格を取得します。
任意単独被保険者の資格喪失時期
厚生年金の任意単独被保険者は、次の1~4のいずれかに該当したときに、その日の翌日に厚生年金の被保険者の資格を喪失します。ただし、その事実のあった日に、さらに被保険者の資格を取得した時、もしくは共済組合等の加入者となったとき、または70歳に達した時は、その日に被保険者の資格を喪失します。
- 死亡した時
- その事業所(船舶も含む)に使用されなくなったとき
- 資格喪失の申請に対し、社会保険庁長官の認可があったとき
- 適用除外の規定に該当するに至った時
- 70歳に達した時
2は、あくまで事業所に在籍(使用される)しているのが前提の話だからです。3は、任意加入なので、今まで通りに働いていても資格喪失ができるためです。5は、通常の厚生年金被保険者と同様です。
また、任意単独被保険者をやめるときには事業主の同意は必要ありません。厚生年金の保険料負担・納付義務という事業主負担が減るだけです。
実際は考えにくい任意単独被保険者制度
ここでいう任意単独被保険者は、法律的に厚生年金の適用ではない5人未満の従業員の個人事業か、適用除外業種の個人事業を想定しています。
しかし、法人(会社)にも関わらず厚生年金に加入していない場合は、本来は、法人というだけで厚生年金に加入していなければならないはずで、事業主としては任意単独被保険者どころではない話なのです。これをきっかけに法律どおり、会社自体が社会保険の適用になるかもしれませんので。
そもそも、任意単独被保険者となることを認めること自体に会社にとっての負担が増えることになりますので、これを認めようとする太っ腹な事業主はどれだけいるのでしょう。
もし使うケースがあるとしたら、厚生年金に法律的に強制加入ではない個人経営の事業主と親しい関係の初老の従業員が、あと数ヶ月あれば60代前半の厚生年金の受給資格を得られる場合などに、厚生年金の任意加入を認めてあげて従業員の年金のために協力してあげるなど、そんなところでしょうか。(※60代前半の厚生年金は、1年以上の厚生年金の加入期間が必要です。)