5月1日に、東京都の男性が、国による年金の記録ミスが原因で、本来もらえるはずであった年金がもらえなくなったのは国に責任があるとして東京地裁に裁判を起こしました。
要約すればこういうことです。年金がもらえる年齢になったときに、本来入っていた厚生年金の被保険者期間が113ヶ月にもかかわらず、18ヶ月とされていた。(1989年当時)そして、それはおかしいと調査を依頼したが、国の解答は「間違いなし」
しかし、2005年に年金手帳に不審な点が見つかったことから国に再調査を依頼したところ、やはり113ヶ月の厚生年金被保険者期間だということがわかり、さかのぼった分の年金を一時金として受け取ろうとしたが、時効(5年)があるために、受け取れる一時金には限度があったということです。(493万円分もらえず)
そこで男性は、国のミスなのに時効を盾に年金を全額支給しないというのはおかしいとして裁判を起こしたわけです。
明らかな国のミスで、どうなる?
普通よく起こりえる年金支給漏れの問題は、国が年金の法律に従った運用で、法律に則った手続に対し、起こるものです。年金自体、非常に分かりにくかったり、国側が非常に不親切だと感じることもあるにせよ、一応は法律に従っている以上、不満の声が上がっても改善すればよい話です。
法律に「請求しないと年金はあげないよ」と書かれている以上、いくらこちら側に知識がなくても、いくら分かりにくかったとしても、最終的にはこちら側が涙を飲むしかありませんでした。(もちろんそれではいけないのですが)
しかし、今回の件はどうでしょうか。男性は社会保険庁に対して過去に調査の依頼をしているわかですから、その答えに対しては受身にならざるをえません。男性がズカズカと乗り込んで、自分で書類をひっくり返すわけにはいかないですので。
詳しい経緯はわかりませんが、1回国から「ありません」との答えをもらったら、普通はもはやそれ以上手の打ちようがないですし、それをもってきて「もっと調査を依頼するなり訴えるなりできたはずだ」などという結果には、まさかならないと思いますがどうでしょうか。
もし年金手帳がなかったら?
今回、救いだったのは年金手帳が存在していたこと。引越しで年金手帳を紛失していたり、昔の厚生年金被保険者証を無くしたりという人も多いと思いますが、このように国の方の年金記録がおかしなことになっている時は、こちら側で何らかの証明がなければ年金をもらえなくなってしまいます。
同じような事例で、証明書類がないばかりに悔しい思いをしている人はどれだけいるのでしょうか。年金手帳、本当に大切です。
(記事元は5月1日:日経新聞)