第4種被保険者は、昭和61年に廃止になった厚生年金の任意加入制度です。厚生年金の加入記録に「第4種被保険者」があって、「これは何だったかな?」となってしまった方のために取り上げてみました。
厚生年金第4種被保険者の概要
今の厚生年金の任意加入制度は任意単独被保険者、高齢任意加入被保険者の2つですが、共に事業所で働いている人が対象です。しかし、昭和61年に廃止になった第4種被保険者は、会社等を辞めた後も厚生年金の被保険者となり続けられる制度です。
旧厚生年金保険法では、厚生年金の老齢年金の受給資格期間は原則として「厚生年金保険の被保険者期間が20年以上」でした。当時はまだ厚生年金は厚生年金として、国民年金は国民年金として別々の制度であった時代の話です。ですから、10年以上厚生年金の被保険者期間を有するものは、退職等で被保険者でなくなったときに、老齢年金の受給資格を満たすまでの間、第4種被保険者として任意で厚生年金に加入できたのです。
要件は、退職等で厚生年金の被保険者でなくなった場合に、被保険者の資格を喪失してから6月以内に社会保険庁長官に申出ることです。期間は厚生年金保険の被保険者期間が20年になるまでですが、中高齢の特例により、生年月日により男子40歳以降、女子35歳以降に15年~19年の被保険者期間を満たした場合にはそれまでの期間第4種被保険者となることができます。
昭和61年の年金改正で、国民年金も厚生年金も共済年金もすべて基礎部分が合体したために、必要なくなった制度ですが、ある程度年齢が上の人や、この第4種被保険者に期待を掛けていた人たちに対して、いきなり廃止というと支障がありますので、昭和61年以降もある一定の要件に会う人だけはこの第4種被保険者になり続けることができることとしました。
特に加給年金は、厚生年金に20年間加入しているか、中高齢の特例の厚生年金加入期間を満たすかをすれば支給されますから、期待権の保護とでもいうべき経過措置ということができるでしょう。
第4種被保険者の資格取得要件
昭和61年当時、経過措置としてどういう人たちが厚生年金の第4種被保険者の資格を取得することができたのでしょうか。次に該当するもので、厚生年金の被保険者期間が10年以上20年未満であるものが厚生年金の被保険者でなくなった場合、または、厚生年金の被保険者でなくなった後に、引き続いて共済年金に加入したときは、共済組合の加入者の資格を喪失した場合に、厚生年金の被保険者期間が20年に達するまでの間第4種被保険者となり、厚生年金の被保険者となることができます。
- 昭和61年3月31日に、現に第4種被保険者であったもの
- 昭和16年4月1日以前に生まれたものであって、昭和61年4月1日において厚生年金の被保険者であったもの
- 昭和61年3月31日に65歳以上であるため、被保険者の資格を喪失したもの
- 昭和61年3月31日において、第4号被保険者の資格取得の申出をすることができたものであって、その申し出をしていなかったものが昭和61年4月1日において厚生年金保険の被保険者及び共済組合の組合員でなかったとき
1は、あすからいきなり「第4種被保険者なしね」と言われたらかわいそうだから、2は、施行日で45歳以上だし、このくらいの年ならば長年厚生年金に入っていただろうし、第4種被保険者への期待も大きいだろうということ、3は、厚生年金の適用が65歳までなので第4種被保険者で被保険者期間を稼ぐしかないということ、4は、昭和61年4月1日前、第4種被保険者になろうと思えばまさに今第4種被保険者になれたという人。
なお、この経過措置の話は昭和61年4月1日前に厚生年金であった人たちを救う話なので、昭和61年4月1日以降に厚生年金の被保険者になった人が第4種被保険者になるという話ではありません。
第4種被保険者の資格取得の申出
厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日、または共済組合の組合員もしくは私学教職員共済制度の加入者の資格を喪失した日から起算して6月以内に社会保険庁長官に申し出なければなりません。
第4種被保険者の資格取得の時期
資格取得の申出が受理された時は、次のいずれかのうち、資格取得希望者の選択した日に第4種被保険者の資格を取得します。
- 申出にかかる厚生年金の被保険者資格または、共済組合の組合員、もしくは私学教職員共済制度の加入者の資格を喪失した日
- 申出が受理された日
お金がある人は1で、そうでない人は2でいくことも可能です。なお、第4種被保険者は任意継続被保険者なのですが、ここでは断続もありうるということです。
第4種被保険者の資格喪失の申出
厚生年金第4種被保険者は、いつでも社会保険庁長官に申し出て、厚生年金の被保険者の資格を喪失することができます。
第4種被保険者の資格喪失の時期
厚生年金第4種被保険者は、次のいずれかに該当するときは、その日の翌日に、5,6に該当するときはその日に被保険者の資格を喪失します。
- 死亡した時
- 被保険者期間が20年に達した時、または老齢基礎年金の特例受給に必要な被保険者期間を満たしたとき(いわゆる中高齢の特例のことで、生年月日に応じて男子40歳以降、女子35歳以降に15年~19年)
- 資格喪失の申出が社会保険庁長官に受理された時
- 保険料を滞納し、督促状の指定期限までにその保険料を納付しないとき(初めて納付すべき保険料を除く)
- 当然被保険者または任意単独被保険者となったとき
- 共済組合の組合員、または私学教職員共済制度の加入者となったとき
2は、目的達成。また、中高齢の特例により厚生年金の受給資格ができた旧厚生年金のしくみを引き継いでいます。5の当然被保険者は、厚生年金の適用事業に使用される被保険者。つまり、第4種被保険者として任意で入っている意味はもうないということ。
第4種被保険者と当然被保険者等の違い
厚生年金の第4種被保険者と、当然被保険者、任意単独被保険者との違いは次のようなものです。
- 第4種被保険者となって初めて納付する保険料を納付しなかったときは、初めから第4種被保険者とならなかったものとみなされます。これは厚生年金の高齢任意加入被保険者(事業主の同意がない方)と同じです。
- 標準報酬は、第4種被保険者資格取得前の最後の標準報酬によるものとします。
- 保険料は、全額本人負担、納付義務を負います。(頼る事業主が居ませんので)
- 毎月の保険料は、その月の10日までに納付しなければなりません。(健康保険の任意継続と同様)
- 保険料の前納が認められています。(最後の標準報酬というように固定ですので改定はありません)
- 育児休業期間でも、保険料の免除はありません。
- 第4種被保険者は、高齢任意加入被保険者となることはできません。(高齢任意加入被保険者の加入目的は年金の受給権確保、第4種被保険者は、老齢基礎年金の25年を満たしていても出て行けとはなりません。あくまで厚生年金の被保険者期間が20年が目的です。一致しているのは中高齢の特例の話だけです。)