年金の支給漏れについて、時効を適用せずに全額補償する動きは、本来なら当然ながらも大きな前進です。しかし、領収書なしで救済するということについては問題が多く、どういう認定基準が出てくるのか、非常に興味深いところです。
支給漏れ年金問題、どこまで前進?
5,000万件にも上る宙に浮いた年金記録の問題と「消えた年金記録」の問題。共に根が深い問題なのですが、特に深刻なのが「消えた年金記録」の問題です。
「消えた年金記録」は、読んで字のごとく、年金記録が書かれた書類データ自体が破棄・紛失したものであって、探そうにも探せない年金記録です。
そのため、「消えた年金記録」については、年金受給者自らが証明するしか手段がなく、ここが非常に厄介なのです。
宙に浮いた年金は、かなり減少する
宙に浮いた年金のほうは、多いと思われるのが基礎年金番号に統一されていない厚生年金の年金記録です。こちらは国に記録自体は存在しますので、名前と生年月日が一致するかどうか、または本人の会社名の記憶から検索することで、本人の年金記録となる可能性は高いのです。
これら調査は、今までは本人が「おかしい」と気が付いたときなど、一定の場合にしか行ってきませんでした。そのため、年金の請求をする時に、間違いに気が付かずに少ない年金をもらう人がたくさん存在したのです。
ただ、「間違い」というと、年金受給者側に過失があるようですが、年金は制度が複雑で、年金のプロでない一般の人たちが間違っているかどうかを正確に判断することなどは土台無理な話。本来ならば専門家である社会保険事務所なり国が、「こういう年金記録がありますが、あなたの履歴で覚えはないですか?」というように伝えるというのが筋なのです。
ようやく国のほうからそのような年金記録の可能性の有無について個別に通知するということですので、迅速・正確にそれが実現すれば、支給漏れのかなりの部分が解消されると思われます。
消えた年金記録はなにが変わるのか?
「消えた年金記録」について、領収書がなくても、客観的な証明書類等があれば年金記録を認めるという話がありますが、国民年金の話で言えば、すでに領収証の通帳でも年金記録を認めることになっています。
また、1件だけ家計簿で国民年金の記録を認めた事例もあるそうです。(5月27日TBSの昼のテレビ番組。長妻議員の話の中で)
厚生年金ならば、履歴書、給与明細、同僚による証明、その他候補が出ていますが、国民年金の場合は新たに何を証明書類とするのか、まったく見当がつきません。「領収書以外でも客観的に証明できればいい」という話は、前進には違いないのですが・・・今後に期待します。