厚生年金の保険料を納めない場合の知識として、条文を追って督促、滞納処分、延滞金の流れを追っていきます。普通の人には、あまり関係のないところです。
督促(厚生年金法86条より)
厚生年金保険料その他徴収金を滞納するものがあるときは、社会保険庁長官は、期限を指定して、これを督促しなければならないとされています。
- 督促をしようとするときは、社会保険庁長官は、納付義務者に対して、督促状を発する。
- 督促状は、納付義務者が、健康保険法第11条の規定によって督促を受けるものであるときは、同法同条の規定による督促状に併記して、発することができる。
- 督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日でなければならない。ただし、保険料の繰上徴収事由のいずれかに該当する場合は、この限りではない。
1は、社会保険庁長官の名前で督促するということです。3の繰上徴収とは、次の事由に該当したときは、国が納期前であっても保険料を徴収できるというものです。
- 納付義務者が1.国税・地方税その他の公課の滞納によって、滞納処分を受けるとき。2.強制執行を受けるとき。3.破産の宣告を受けたとき。4.企業担保権の実行手続の開始があったとき。5.競売の開始があったとき。
- 法人たる納付義務者が、解散をした場合。
- 被保険者の使用される事業所が、廃止された場合。
- 被保険者の使用される船舶について船舶所有者の変更があった場合、またはその船舶が滅失し、沈没し、若しくはまったく運航に耐えなくなるに至った場合。
つまりは、厚生年金保険料の取りっぱぐれが起きそうな事由ばかりですね。
滞納処分(厚生年金86条より)
社会保険庁長官は、納付義務者が次のいずれかに該当する場合においては、国税滞納処分の例によってこれを処分し、または納付義務者の居住者若しくはその者の財産所有地の市町村にたいして、その処分を請求することができる。
- 督促状により督促を受けた者が、その指定の期限までに、厚生年金の保険料その他この法律の規定する徴収金を納付しないとき。
- 保険料の繰上徴収事由に該当したことにより納期を繰り上げて保険料納入の告知を受けた者が、その指定の期限までに保険料を納付しないとき。
市町村は、上記による処分の請求を受けたときは、市町村税の例によってこれを処分することができる。この場合においては、厚生労働大臣は、徴収金の100分の4に相当する額を、その市町村に交付しなければならない。
※たとえば東京本社の会社に滞納処分をするときに、軽井沢の保養所のある市町村に対して処分をお願いするということです。そして、処分にたいしては徴収金の100分の4の額が市町村に交付されますので、いわばこの交付金は手数料のようなものです。
延滞金
督促状によって督促をしたときは、社会保険庁長官は、厚生年金の保険料額につき年14.6%の割合で、納期限の翌日から、保険料完納、または財産差押の日の前日までの日数によって計算した延滞金を徴収します。
例えば、6月30日が納期限である保険料を滞納して、7月20日を指定期限とする督促を受けたが、7月30日に完納した場合は、7月1日から7月29日までの日数によって計算された延滞金が徴収されることになります。
ただし、次のいずれかに該当する場合または、延滞につきやむをえない事情があると認められる場合は、延滞金は徴収されません。
- 厚生年金保険料額が1,000円未満であるとき。
- 納期を繰り上げて徴収するとき。
- 納付義務者の住所若しくは居所が国内にないため、または、その住所及び居所がともに明らかでないため、公示送達の方法によって督促した時。
さらに、延滞金には次のような様々な決まりがあります。
- 厚生年金の保険料額の一部につき納付があったときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となる保険料は、その納付のあった保険料額を控除した金額による。
- 延滞金を計算するにあたり、保険料額に1,000円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる。
- 督促状に指定した期限までに保険料を完納した時、または計算した延滞金の金額が100円未満である時は、延滞金は徴収しない。
- 延滞金の金額に100円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる。
- 事業主は、正当な理由がなく督促状に指定する期限までに保険料を納付しないときは、6月以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられる。