社会保険庁は2007年9月3日、領収証など証拠資料があるために年金記録として認められたものが、新たに180人分判明したと公表しました。今回の判明分はすべて国民年金の納付記録に関わるもので、国にあるべき該当者の国民年金保険料の納付記録はどこにもありませんでした。
まさしく消えた年金記録
「年金記録が実際に消えているわけではない」
何度も聞いたフレーズですが、この180人分の年金記録については、社会保険庁のコンピュータにも、マイクロフィルムにも、市町村が保管する名簿にもまったく残されておりませんでした。
今回の納付記録の紛失の件は、社会保険庁が2006年8月から実施した特別年金相談の中から、2007年1月から3月末まで受付した115万件の中から調査・判明したもので、社保庁が総務省の「年金記録問題検証委員会」に提出した資料から明らかになりました。
判明した証拠資料
「消えていた」年金記録の訂正をなした証拠資料は、次の通り(重複あり)
- 年金手帳75件
- 領収書130件
- 領収済証明書7件
国民年金保険料納付記録紛失の原因
かつて社保庁は、1970年、1974年、1978年の合計3回実施した国民年金保険料の未納保険料のまとめ払いである「特例納付」について、「市町村で納付することは制度上はありえない」としていましたが、社保庁が3日にまとめたものによると、市町村の窓口で特例納付の保険料を納められた市町村は259あることが明らかになりました。
また、同日明らかにしたことによると、市町村で49件、2億77万円もの保険料の着服・横領があり、社保庁の不正とあわせると判明したものだけでも合計71件2億3400万円にものぼるとのこと。
あくまで判明しているものだけでこれらの数字ですので、その背後に判明していないものがどれだけあるのかは想像すらできません。
今まで、悪意のない事務処理ミスや怠慢による事務処理ミスにより年金記録が消えてしまうことが「消えた年金記録」の原因の大きな要素として取り上げられてきましたが、悪意のある着服・横領により年金記録が消えてしまっている事例も、相当多い件数に上るのではないでしょうか。
なにしろ不正が発覚した都道府県は23都道府県にまたがっているということで、局所的な、かつ例外的な事件ではないことだけは確かだと思います。
着服職員調査から「消えた年金」を探す発想
今まで発覚していない年金着服職員を見つけ出すことは難しいでしょう。そこで、このような手段はどうでいしょうか。
まず、「自分の年金記録が正しくない」「この期間は年金に加入していたはずだ」というような訴えのある声については、信憑性の有無は関係なく、訴えている期間をすべてデータベース化します。
そして、領収証などの証拠書類があり、その後に年金記録が訂正した場合にはその部分はデータベースから削除します。すると訴えがある部分だけが残ります。
それから、社保庁および市町村の過去人事記録とそのデータを照合し、同一職員が在籍していた社保庁ないしは市町村において、2件以上訴えが重なっているものについては詳しく取り調べる。
こうすることで、状況証拠が形成されますし、そのような訴えが重なっている社会保険事務所や市町村については、不正が生じていた事実が濃厚となり、最悪不正職員を断定できなくても、そのデータを第三者委員会で活用することにより、消えた年金で苦しむ人たちを一人でも多く救済することができるはずです。