厚生労働省は2007年10月16日、「2006年度全国の母子世帯等調査結果」を発表しました。このニュースそのものは年金ニュースではありませんが、ここで出てきた実態データは、第3号被保険者問題を考える上ではとても貴重な資料です。
母子世帯年収等調査結果
「2006年度全国の母子世帯等調査結果」によると、全国の母子世帯における児童扶養手当などを含めた平均年収は213万円で、全世帯の平均年収564万円の4割未満であることがわかりました。
調査は2006年11月、無作為に抽出した1517の母子世帯、199の父子世帯を対象に実施。その他データは次の通りです。
- 母子世帯の母親の就労率=84.5%
- 雇用形態が常用雇用=42.5%
- 雇用形態が臨時・パート=43.6%
- 平均年間就労収入(常用雇用者)=257万円
- 平均年間就労収入(臨時・パート)=113万円
- 母子世帯になった理由「離婚」=89.6%
- 母子家庭になった時の母親の平均年齢=31.8歳
年金保険料を払えない第1号被保険者が多い?
母子世帯(以後母親と子供の世帯に限定)の実態を見ると、半数近くが年金でいう第1号被保険者であることが推測できます。
収入のすべて、または大半が生活費と子供の教育費で消えてしまうと思われる中、第1号被保険者として将来の年金のために年収の5%、10%に相当する年金保険料を払える人はどれだけいるでしょうか?
免除申請をして認められたとしても、将来もらえる年金(免除期間分)は通常の3分の1の国民年金だけ。年金は母子家庭にとってやさしいものであるとは言えません。
第3号被保険者問題~優遇される専業主婦との比較~
会社員(厚生年金加入)の妻は第3号被保険者として、年金保険料を払わずに将来国民年金を受け取ることができます。「専業主婦は保険料の負担能力が無いから」等、第3号被保険者を優遇する理由は様々ありますが、果たして今の時代に即しているのでしょうか?
確かに第3号被保険者の中には、扶養から外れないように就労調整をしながら働いている人で、夫の年収が低く楽ではない人もいるでしょう。しかし、妻が働く必要が無いほど高給の夫でも、妻は第3号被保険者として保険料は無料になります。また、同じように世帯収入が高い人で、無料になっている国民年金保険料の分を、払ったつもりで個人年金に加入している人も中にいるでしょう。
対して母子家庭は先述のとおり、保護すべき人たちが大勢いるものと推測されます。第3号被保険者である専業主婦と自営業の妻、および母子家庭の妻との間で不公平を感じるような第3号被保険者の仕組みというのは、早いうちに見直してもらいたいと思います。
第3号被保険者に関する3つの改善案
- 第3号被保険者制度を廃止して第1号被保険者へ移行する
- 妻(第3号被保険者)がいる夫の保険料を値上げする
- 妻(第3号被保険者)がいる『一定以上の収入のある夫』の保険料を値上げする
- 第3号被保険者は産休や育児休業期間などに限定する
第3号被保険者制度は今現在第3号被保険者である人たちにとっては「既得権」であり、これに手をつけることは大変なことです。
ちなみに、ハート労働者による厚生年金の適用拡大については、その裏に事実上第3号被保険者を減らそうとする意図があったと言われています。
※厚生年金の適用拡大・・・「週所定労働時間が20時間以上」「賃金が月額98,000円以上」「勤務時間が1年以上であること」等の要件を満たすパート労働者に厚生年金の適用を拡大しようとするもの。