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年金生活に暗雲?独立行政法人改革の行方

国の財政が黄色信号(本当は赤信号?)の現在。遅かれ早かれ消費税がアップして私たち国民、特に年金生活者にとってはさらに厳しい生活となることは必至です。しかしながら国は国民ではなく官の方を向いているようで、増税もはじめ私たち国民の生活に関わる歳出削減については力強く事が運ぶ一方、「官僚の天下りの受け皿」「国家公務員よりも相対的に高い給料」「随意契約」等々批判が多く歳出削減の切り札とされる独立行政法人の改革には二の足を踏んでいます。国の借金は、年金・医療・介護といった年金生活に関わる問題にも影響を与える大きな問題・・・独立行政法人改革の行方がスローでは、老後がさらに不安になります。

独立行政法人と、その現状

独立行政法人は、現在102法人あり、職員数13万人。2007年度予算では、国からの補助金などによる財政支出は93法人に対して総額3兆5,231億円となっています。

前身は特殊法人で、特殊法人から独立行政法人に組織を変更したものの、結局のところ負の面の実態はほとんど変わりがなかったことから「第二特殊法人」などと呼ばれることもあります。

独立行政法人(総務省ホームページ)

独立行政法人の問題点は?

独立行政法人の問題点として、マスコミ等で指摘されている点を上げてみると、次のようになります。

  • 官僚の天下りの受け皿とされている。
  • 独立行政法人の方が、国家公務員よりも相対的に高い給料となっている。
  • 一部に世間離れした勤務実態もみられる
  • 随意契約を行なうことにより、身内や関係者に便宜を図るなどの不正な金の流れが見られる
  • 事業自体についても、「国民のための必要性(建前・大義名分)」よりも「天下り先を確保するため(ホンネ)」に行なっていると疑われる事業が存在する(赤字垂れ流し・非効率経営等が時に指摘されている)

表向き必要のない独立行政法人は1つもない

独立行政法人の中には必要のないものなどは1つもありません。 無駄だと思えるものでも、 たとえ民間に任せられることでも、 そこに「大儀」さえあれば人やハコモノ、事業に意味を持つことになるからです。

独立行政法人ではないのですが、わかりやすい例で社会保険庁を取り上げてみますと「年金加入者の福祉の一環・・・」として、かつてグリーンピアが各地に建てられました。

赤字が垂れ流しになったとしても「儲けるためにやっているのではなく福祉のためのものであるから赤字もやむなし」ということです。もっとも経費を削り、業務の効率化等の努力をしても、かえって予算や補助金を削減されてしまえば、インセンティブを働かせろと言う方が難しい話だと思います。

「年金大崩壊:岩瀬達哉氏著」 の125ページより、グリーンピア施設の実務をよく知る年金保養協会の関係者の話として次のような話が掲載されております。

『施設の運営において、下手に黒字を出したら、年福(年金福祉事業団)からの資金援助を打ち切られると言う空気が現場にはある。そのため、つねに少しばかりの赤字を出すよう決算処理をしているのが実情です。どの施設も、基本的に予算を使い切るのと同じ発想で運営されていますから、黒字を出すと言うことはまったく考えていない。黒字を出すなど、バカがやることだと平気で言う天下り官僚もいたほどでした。過去、大幅な黒字が出たときなど海外研修と称して、幹部社員ばかりか若手社員までヨーロッパ旅行にだしていた。そうやって、黒字を使い切っていたほどです。(引用)』

表向き必要とされる組織や事業で、本当に必要とされるものはどれだけあるのでしょうか。

独立行政法人改革スタート

独立行政法人改革は「独立行政法人の廃止・民営化」「財政支出の削減」を標榜して、2007年8月に安倍前総理のもとで閣議決定したのもです。(独立行政法人の整理統合化)

その考えは「本当に必要なもの以外については廃止・統合。民営化できるものは民営化」というもので、与党の議員はその点で一致。しかしながら2007年12月の渡辺行革大臣と各大臣との折衝では、自分の省所管の独立行政法人について、各大臣はゼロ回答続出。まるで官の代弁者となっていました。

なお、独立行政法人全体の見直しの方向性は、

  • 随意契約の見直し…契約は、原則的に一般入札にする
  • 保有資産の売却…土地や建物等の売却
  • 給与水準の適正化
  • 官民競争入札の導入…法人のサービス向上と経費削減を促す等
  • 内部統制の強化…内閣による法人トップの任命関与、役員登用における公募制度の活用、業績評価方法の改善等
  • 財政依存度の抑制…事業の見直し等

こんな独立行政法人までゼロ回答(当初)

財務省所管の「日本万国博覧会記念機構」

この独立行政法人の役割は、大阪万国会場の跡地を管理するというもので、草野球場やサッカー場等の施設管理を行なっています。単なる天下り先としか機能していないとも言われるこの日本万国博覧会記念機構に対する渡辺行革大臣からの要求は「廃止または地方移管」なのですがゼロ回答・・・

なお、施設を売れば数百億円からのお金が国に戻るとも言われています。(某テレビ番組では600億円とも)ちなみに、ゼロ回答とは保留も検討も無く「拒否」ということです。

40の独立行政法人

2007年12月3日から12月6日までに渡辺行革大臣と各省庁の大臣との間で、廃止・民営化(特殊会社化含む)の折衝をした独立行政法人は次の通りです。(※102法人のうち、改革の必要性の高いものが今回の折衝の対象となりました)

国土交通省

  • 都市再生機構
  • 住宅金融支援機構
  • 空港周辺整備機構
  • 海上災害防止センター
  • 国際観光振興機構
  • 土木研究所
  • 建築研究所
  • 交通安全環境研究所
  • 海上技術安全研究所
  • 港湾空港技術研究所
  • 電子航法研究所

厚生労働省

  • 国立健康・栄養研究所
  • 労働政策研究・研修機構
  • 雇用・能力開発機構
  • 労働者健康福祉機構

農林水産省

  • 農業・食品産業技術総合研究機構
  • 農業生物資源研究所
  • 農業環境技術研究所
  • 国際農林水産業研究センター
  • 森林総合研究所
  • 水産総合研究センター
  • 水産大学校
  • 水産総合研究センター
  • 農業・食品産業技術総合研究機構
  • 緑資源機構
  • 農林水産消費安全技術センター

経済産業省

  • 日本貿易保険
  • 日本貿易振興機構
  • 製品評価技術基盤機構
  • 経済産業研究所

文部科学省

  • メディア教育開発センター
  • 日本スポーツ振興センター
  • 日本学生支援機構
  • 国立青少年教育振興機構
  • 国立女性教育会館
  • 教員研修センター

財務省

  • 日本万国博覧会記念機構
  • 種類総合研究所
  • 国立印刷局
  • 造幣局

独立行政法人改革というと「廃止」と「民営化」をイメージしますが、似たような組織を統合することや、部門を別の組織に集約させること、地方等へ移管させることなども改革に含まれます。

また、12月6日現在で「国立健康・栄養研究所(厚生労働省)」「緑資源機構(農林水産省)・・・済み」「メディア教育開発センター(文部科学省)」のように、渡辺行革大臣の各種要求に対して受諾をしているものもあります。その他保留又は検討は12法人ですが、財務省は12日現在完全ゼロ回答となっています。

テレビから見える独立行政法人改革の抵抗

映像には活字には見えない人の内面が見えてくる・・・ということで、独立行政法人改革についてのテレビ放映の中で、とても印象的だった2つの関連事項を取り上げてみたいと思います。

国立印刷局(財務省)の所有不動産売却益282億円の行方

財務省が所管する独立行政法人「国立印刷局」には元々国有財産であった所有不動産がありますが、その中からすでに運用・売却して得た282億円からの収益について、国に返還されたのは半分の141億円とされ、残りの半分141億円については国立印刷局の金庫へ納められているとされています。

あるテレビ番組ではこの282億円を取り上げ、それはそもそも国有財産であるのだから全額国に戻すのがスジ・・・ということで財務大臣の囲みインタビューの際に次のようなやりとりがありました。

  • Q 今まで国立印刷局が売却した資産売却代金282億円はどうして国庫に戻らないのか
  • 財務大臣 「これは法律上、なんかね、あれは2分の1か。2分の1は国庫に入るのですが、(残りは)独法に残るんですよね。ただ土地を売却した(代金)を財政再建に使うというのは検討に値する考えではあります。」
  • Q そうすると既に売った282億円も国庫に戻すつもりがあるということですか?
  • 財務大臣 「それは法律上できません。」
  • Q いやだから、そういう法律を作ればよいのでは?
  • 財務大臣 「いやそれは、当然そうですよ。法律ができればそれはそれで・・・」
  • Q 財務大臣ですよねー
  • ここで言葉が鈍り、事務官僚が耳打ち・・・「法は内閣官房の法律です」
  • 財務大臣 「あそうか、今、あのう、事務局に聞いたら財務省の直接の法律ではなくて、内閣官房で通則法に基づいてやられている」
  • 放送ここまで

国立印刷局について行革大臣の要求は「非公務員化」ということで、その点については問題を残す印象です。しかしながら、財務大臣が官の盾のようになり改革に後ろ向きとも見えてしまうこのような姿勢・・・もどかしさを感じます。

永山団地(UR:都市再生機構)視察では同僚議員までも・・・

UR(Urban Renaissance Agency:都市再生機構・・・国土交通省が所管)の改革のために永山団地を視察した渡辺行革大臣。URは、行革大臣に民営化を要求されている独立行政法人ですが、民営化に対しては必ずしも賛成の声ばかりではなく、「弱者保護に反する」「弱者切捨てにつながる」などとして反対する声も聞かれます。

これについて行革大臣はテレビ番組で次のように述べています。

「公団のままでいくとしても、現在(URに)67万戸ある中から何万戸かはやめるということで、独立行政法人のままでも効率的な経営が求められる。だったら民営化したほうがもっと今住んでいる人の家賃が下がり、サービス競争が起きて、もっとよりよい住まいができるということありうる。今住んでいる人全員出て行ってなんてちっとも思っていない。もっとよいやり方があるだろうと言っているんです。その方が国民のお金も無駄使いせずに済むのではないですかということです。」

ここでも民営化については議論の必要性が多分にあるかと思いますが、ここで取り上げたいのは民営化の是か非かではなく、この渡辺行革大臣の視察において住民側代表として同行した自民党衆議院議員の不可思議な姿勢に疑問を持ったからです。

【住民による民営化反対の声】

渡辺行革大臣が視察のために団地に入ってまもなく、住民が行革大臣を取り囲み「民営化だけはしないで下さい。」「守って下さい、お願いします。」という民営化反対の大合唱。その模様には少し違和を覚えましたが、実はそれには裏があったのです。

その住民代表として立ち会った議員は、渡辺行革大臣が到着する前に公団の前で住民に対し「大臣がこれから出てくるけれども、民営化ということはこの団地が無くなることですからね」と言っていたのです。

つまり、「民営化反対」を煽ったとも取れる行為。官僚・大臣のみならず同じ党の衆議院議員までも・・・その議員はURを所管する国土交通省の前身である国土庁の元長官で、永山団地は選挙区にあります。

ちなみに、住民に対する行革大臣視察前の発言に対して、インタビュアーとのやり取りは次の通りです。

  • Q 団地の前で住民の皆さんに「大臣がこれから出てくるけれども、民営化ということはこの団地が無くなることですからね」とおっしゃっていましたよね。
  • 議員「はい・・・なくなる可能性はありますよね。」
  • Q 「なくなりますよ」とおっしゃっていましたよね?
  • 議員「なくなる可能性はあります。」
  • Q 「でも皆さんの前では可能性という言い方はしていませんでしたよね?」
  • 議員「うん、まあ、それ、それにしても・・・採算だけという数字の上で計算されていますから・・・」

渡辺行革大臣が視察を終えて団地を後にする時には、その議員は住民の前で行革大臣に対し「しっかり見てね。民営化だけはダメだよ。」と民営化反対の姿勢を見せる一方で、インタビュアーとの1対1のインタビューでは次のように話します。

「民営化できるところは民営化していいと思いますよ。だからおそらく渡辺大臣とは考え方、今の話し聞いてもほとんど変わらないです。改革大賛成ですから。」

独立行政法人にも巨額埋蔵金(118兆円)!?

独立行政法人の土地・建物資産と天下り役人数は次のようになっています。(日刊ゲンダイ2007年12月25日号から。カッコ内は天下り役職員数)

  • 1 都市再生機構…12兆705億円(9人)
  • 2 日本高速道路保有・債務返済機構…8兆2,728億円(3人)
  • 3 国立病院機構…8,347億円(3人)
  • 4 雇用・能力開発機構…6,958億円(25人)
  • 5 鉄道建設・運輸施設整備支援機構…5,339億円(8人)
  • 6 産業技術総合研究所…2,706億円(2人)
  • 7 日本原子力研究開発機構…2,594億円(5人)
  • 8 国立高等専門学校機構…2,591億円(11人)
  • 9 農業・生物系特定産業技術研究機構…2,410億円(1人)
  • 10 国立印刷局…2,356億円(3人)

※全独立行政法人の土地、建物の総計は26兆3,136億円、貸付金を含めた総資産は118兆円。天下り役人は611人。

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